卒業後、歯科衛生士人生を楽しめるのはどんな人?|歯科衛生士学生 学校生活の極意【社会人学生編#5】
これまでたくさんの学生を指導してきた太陽歯科衛生士専門学校の山田美穂先生が、歯科衛生士学生の皆さんが感じている悩みや不安にお答えします。
歯科衛生士学生 学校生活の極意|社会人学生編
第1回 壁に突き当たったときどう乗り越える?
第2回 周りの人、特に現在の職場には誠意をもって対応しよう
第3回 社会人学生のあなただからこそ持っている良いところを活かそう
第4回 あなただけじゃない!頑張る社会人学生アレコレ
第5回 卒業後、歯科衛生士人生を楽しめるのはどんな人?(こちらの記事)
★【臨床実習編】はこちら
5回目の今回は、卒業後をイメージしてみたいと思います。
学校を卒業し、晴れて国家試験に合格したみなさんはどのような【歯科衛生士人生】を歩み始めますか?
目次
歯科衛生士人生を楽しむために必要なのは『学力』だけではない!
これまで、「セカンドキャリア」として歯科衛生士を選び頑張っている社会人学生の皆さんへ、いろいろなお話をさせていただきました。
それぞれの生活背景がありつつ、モチベーションを維持しながら『国家資格』を目指し頑張る皆さんへ、学校生活において考えてみて欲しいことをテーマにしてきました。とはいえ、やはりいちばん気になるのは【国家試験に合格できるか】にはなりますよね。そのために睡眠時間を削りながら勉強することもあるでしょう。「もぉ〜! 時間ないよ!!」とイラつくこともあるでしょう。学校の課題をこなしながら、臨床実習で現場を学びながら、国家試験対策をしていく…大変です。
しかしながら、そんな毎日も3月の第1日曜日を終えたら一旦終了です。月末の合格発表まではソワソワしたままかもしれませんが、合格が決まれば【歯科衛生士としての人生】が始まります。
さぁ、どんな毎日が始まりますか? イメージできるでしょうか?
そこから始まる【歯科衛生士人生】をあなたは楽しめそうですか?
歯科衛生士が楽しい!ってどういうこと?
3年〜4年の長い時間を必死に勉強して、やっと手に入れた歯科衛生士という資格を、どう使っていくかはもちろん皆さん次第です。でも、どうせ更なる長い年月を歯科衛生士として生きていくのであれば楽しみたくありませんか?
以前にも問いかけたかもしれませんが、「あなたはなぜ、歯科衛生士になりたいのですか?」この問いに対してどのようにお答えになったでしょうか?
- 安定した仕事に就きたいから
- 今より収入を上げたいから
- 長く歯科助手をしてきて、もっと患者さんに関わりたいと思ったから
さまざまな理由があったと思います。
でも、もう歯科衛生士になれることがわかったら! “次のイメージ”を持ってみませんか?
歯科衛生士が働く現場(共に働くスタッフや雇い主の院長先生、そして患者さん)は一体どんな人材を求めているでしょうか? あなただったら、どんな歯科衛生士さんと働きたいと思いますか? どんな歯科衛生士さんに診てもらいたいと思いますか?
ちょっと話を歯科から離してみましょう。
- 皆さんはどのくらいの頻度でヘアサロンに行きますか?
- 決まった美容室がありますか?
- 担当の美容師さんは決まっていますか?
いかがでしょうか? いつも同じ美容師さんに髪を切ってもらっている方は、なぜその美容師さんなのでしょうか?
「たまたま行ったらその人で、なんとなく担当」「初めは決まっていなかったけど、ある時担当してくれた美容師さんがとても良くて、それ依頼指名」「別に誰でも良い」「とにかく技術がすごい!」「有名なヘアスタイリスト」理由はさまざまありそうですね…。
よく美容師あるあるにあげられる「話しかけなくても良いのに、ずっとどうでも良い話を投げかけてくるのが嫌」なんて話も…ありますよね。
ちなみに私は20年くらい同じ美容師さんに切ってもらっています。もはやどうでも良い話しかしていませんが(笑)カットとパーマをかける約3時間くらいの間、ゲラゲラ笑いながら過ごしています。また、歯科と美容業界には共通することも多く、真面目な話をしてお互いに学びになったりもします。そう、私はこの美容師さんと話すことも目的になっているのです。
という話を踏まえると、患者さんは一体どんなことをきっかけに何を理由に、同じ歯科衛生士のもとに継続来院してくださるようになるのでしょうか。
新人歯科衛生士が確実な歯周治療をできるか
卒業したてで、すぐに担当患者さんを持ちSRPを行うようなことも医院によっては起こりうる事例かと思います。「治せる」「治せない」で考えれば、「治せない」とは思います。しかし、患者さんを定着させることは十分可能なんですよね。どういうことかわかりますか?
患者さんは自身の口腔内の状態を、きちんとした検査を受け、きちんとした説明を受けることで初めて知ることが多いです。その後、歯周基本治療に入った時、施術の評価は「治せている」か「治せていない」かではなく「痛い」か「痛くない」か、担当の歯科衛生士が「良い感じ」か「嫌な感じ」か、おそらくこのあたりで評価していることが多いのではないでしょうか。
もちろん「極力痛みを与えず、確実な歯周治療をする」ことが理想ではあります。でも経験が浅ければそれはかなり難しいことです。であれば、「痛いし嫌な感じの人」ではなく「痛くなく(気遣ってくれる)感じの良い人」という印象を持ってもらい、とにかく継続して来院していただくことができればと思うのです。
継続して通ってくれていれば、日々の研鑽の先に、きちんと治してあげられる日がいつかやってくるというわけです。
慢性歯周炎の場合、継続的に細菌のコントロールさえできていれば急激な悪化は起こりにくいでしょうし、新人だった担当歯科衛生士が年々頼もしくなっていく様子を喜んでくださる患者さんもたくさんいます。(私の患者さんにもたくさんいらっしゃいました)
人との関わりを楽しみ、そこから学べる人になろう!
さぁ、いかがでしょうか。みなさんはどんなスタートを切れそうですか?
正直なところ、学校で習ってきた『技術』は決して十分なものではありません。『知識』だって…どうかなぁ、国家試験が終わった瞬間、驚くほどのスピードで減っていきます(笑)。だからこそ、現場に出てからさらに学ぶこと、それを継続すること、常に自分のスキルアップを楽しみ、学び続けることが必要です。実際に患者さんと関わり始めると「なんで?」「どうしたら良い?」とさまざまな疑問が湧いてきて、それを知ることが楽しくなると思います。できるようになっていくと自信もついてきます。
さまざまなタイプの患者さんと、さまざまな性格のスタッフの方達と関わることで、歯科衛生士としての技術や知識だけでなく、【人間力】を培うこともできるはずです。社会人経験のあるみなさんであれば、自分自身の経験もその糧となるでしょう。
歯科衛生士は人と関わってなんぼの仕事です。
「歯医者さん怖かったんだけど、あなたが診てくれるなら頑張って通う!」
そんなふうに言われたら…頑張っちゃいますよね!
ではもう一度、歯科衛生士が働く現場は一体どんな人材を求めているでしょうか?
- 新卒とは思えないSRPの技術を持った人?
- 国家試験も余裕で合格できる豊富な知識を持った人?
もちろんあるに越したことはありませんが、本質はそこじゃない。
人として応援したくなる、人として安心できる、そんな人材を求めているのです。
あなたの成長を見守り、応援してくれる環境であれば、自分も自身の成長を楽しみながら頑張れるのではないでしょうか。それはそれはあなた次第でつくれる環境です。そんな歯科衛生士人生をスタートさせませんか?