迷った先輩も多数! 歯科衛生士と看護師を比べてみました!
「歯科衛生士」という職業を選んだ理由で多く挙がるのが、「医療系の仕事につきたかった」「国家資格を取りたかった」という2点。
実はこの2つは、「看護師」とも共通しています。
実際に、「歯科衛生士」と「看護師」どちらの道を選ぶか、迷う人も多くいるようです。
そこで今回は、この2つの職業の「似ている点」「違う点」を解説します。
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目次
歯科衛生士と看護師の共通点
まずは、2つの職業がどのように似ているのかを見ていきましょう。
国家資格が必要な医療職
前提となる大きな共通点は、医療に関係する仕事だということです。
人の健康や生活の役に立てたり、ときには命を救えたりすることが、医療職の大きな魅力。
「お金を払ってもらう立場なのに“ありがとう”と言ってもらえるのは、医療職ならでは」、という話もよく耳にします。
また、家族に医療関係の人がいたり、自分自身が大きな病気などで医療機関のお世話になったりした経験から、医療職を目指す人も多いようです。
医療職にもさまざまなものがありますが、実は、資格が必要な職業と資格が必要ではない職業があります。
そして、医療関係の資格には、国家資格のほかに、都道府県の認定資格や医療関係の団体が認定する資格も含まれます。
その中で、歯科衛生士も看護師も、「国家資格」が必要な職業。
つまり、それだけ専門性が高い仕事だと言えるでしょう。
女性が多く活躍している
もう一つ、歯科衛生士と看護師の大きな共通点は、女性が多く活躍している仕事だということです。
もちろんどちらも男性が就くこともできますが、実は以前は女性しかなれない職業だったのです。
現在看護師と呼ばれている職業は、もともとは「看護婦」と呼ばれ、女性だけに限定されていました。男性は「看護士」と呼ばれ、例外的な扱いとなっていたのです。
その後、1968年に男性の看護師(当時は「看護士」)が正式に認められました。
男性歯科衛生士の歴史はさらに浅く、男性の歯科衛生士が誕生したのは2012年。
実はそれ以前にもなれないことはなかったのですが、看護師と同様に、基本的には女性の仕事とされていました。
歯科衛生士学校の入学条件も「女性のみ」としていた学校がほとんどだったようです。
現在のそれぞれの職業の女性の割合は、歯科衛生士が99%程度、看護師が92%程度(いずれも2020年時点)。
今後は、男性歯科衛生士・男性看護師が今よりも増えることが予想されますが、女性が活躍できる職業であることは間違いありません。
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就職・転職・復職がしやすい
先ほど述べたように、歯科衛生士と看護師は、どちらも専門性の高い仕事です。
誰にでもできる仕事ではないため、就職したい人の数に対して、採用したい人(病院や会社などの組織)の数が多い傾向があります。
特に新卒の歯科衛生士では、1人の求職者(就職したい人)に対して、20件近い求人が寄せられることもあり、“引く手あまた”の状況と言えるでしょう。
そのため、新卒での就職はもちろん、その後の転職や、出産・育児が一段落した後の復職の際にも、職場を見つけやすいのです。
つまり、どちらの仕事も、家庭や育児と両立しながら女性が自立して長く働ける職業。
こうした特徴も、歯科衛生士や看護師の人気の理由の一つです。
歯科衛生士と看護師の比較その①:資格の取り方
このように似ている点が多い2つの職業ですが、もちろん違う点も多くあります。
ここからは、二つの職業をさまざまな面から比較してみたいと思います。
まずは、資格を取るまでのステップを比べてみましょう。
養成学校の比較
歯科衛生士を目指す場合は、高校卒業後に、歯科衛生士の養成校(歯科衛生士学校)に進学します。
養成校には専門学校、短大、大学、大学校があり、3年以上学ぶ必要があります。
看護師を目指す場合は、いくつかの道筋があります。
一つは、歯科衛生士と同じく高校(看護科以外)卒業後に、専門学校や短大、大学、大学校で3年以上学ぶ道です。
もう一つ、中学校卒業後に5年間の一貫教育を行う看護専門の高等学校に進学したり、高校(看護科)で3年間学んだ後に、専門学校や短大などで2年間学んだりして、資格取得を目指す道があり、期間としてはそちらが最短です。
そのほかに、准看護師を経て看護師になるルートもあります。
国家試験の比較
歯科衛生士も看護師も、原則として、養成校の課程を修了(卒業見込みも含む)すると、国家試験の受験資格が得られます。
歯科衛生士の国家試験は、3月初旬に全国10ヶ所で行われます(2022年度実績)
合格率は95%程度です。
看護師の国家試験は、2月上旬に全国12ヶ所で行われます(2022年度実績)
合格率は90%程度です。
看護師国家試験の方がやや難易度が高めですが、歯科医師国家試験の合格率が60〜65%程度であることと比較すると、「コツコツ勉強をしていれば、ほぼ合格できる難易度」と言えそうです。
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歯科衛生士と看護師の比較その②:仕事の仕方
働く場所の比較
歯科衛生士の勤務場所は、診療所(歯科クリニック)が90%程度です。
そのほかに、病院の口腔外科や保健所などの自治体、介護施設、養成校、歯科関連企業などで働いている歯科衛生士もいます。
一方で看護師の勤務場所は、病院が72%程度で、診療所(クリニック)は11%程度です。
そのほかに、介護施設や福祉施設、訪問看護ステーション、保健所などの自治体、一般企業、養成校などで働いている看護師もいます。
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仕事内容の比較
歯科衛生士の仕事内容は、歯科予防処置、歯科診療補助、歯科保健指導と定められています。
歯をはじめとした口腔が対象で、病気の治療の補助のほか、健康な人に対する「予防」も仕事内容に含まれていることが特徴です。
具体的には、歯の汚れや歯石を除去したり、歯磨きの仕方を指導したりすることが、歯科衛生士の重要な業務です。
歯科医院は、医療機関では他にあまりない、「健康な人が、健康維持のために定期的に通う」場所です。
そして、健康維持のサポートを中心的に担うのが歯科衛生士です。
そのため、美容院のように、歯科衛生士の指名制や担当制を採っている歯科医院も多いです。
患者様から「またあなたにお願いしたい」と言われることもあるなど、歯科衛生士は、医療職の中では少し変わった位置づけと言えるかもしれません。
一方で看護師の仕事内容は、「傷病者に対する療養上の世話、診療の補助」です。
対象となる身体の部位は限定されておらず、「全身」に関わる仕事です。
また、基本的には「病気の人」が対象で、健康な人に関わることは比較的少ないです(美容医療や保健所業務などを除く)。
具体的には、血圧や脈拍などバイタルサインの測定、注射や点滴、食事や排泄の補助など患者様の身の回りのお世話、手術のサポートなどが主な業務です。
まとめると、「口腔内だけ」「病気の人と健康な人の両方」に関わるのが歯科衛生士、「全身」が対象で、基本的に「疾患のある人」に関わるのが看護師ということになります。
そのため、看護師の方が、命を左右する現場に立ち会うことが多いでしょう。
なお、どちらも、歯科医師または医師の指示の下で仕事をする職業です。
とはいえ、言われたことをやるばかりではなく、主体的に活躍できる場面も多いことや、患者様と医療側とのコミュニケーションの中で重要な役割を果たしていることも共通しています。
キャリアの比較
仕事を続けていく上で、どのようなスキルアップやキャリアアップができるかに関心を持っている人も多いでしょう。
どちらの職業も国家資格である専門職ですが、さらにその上で特別な知識や技術を身につけて、専門性を高めることができます。
例えば歯科衛生士の場合、歯周病やインプラントなどの専門分野を究めて、各学会や、日本歯科衛生士会が認定している資格を取得することができます。
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看護師の場合も同様に、特定の分野を掘り下げて、認定資格を取得することが可能です。
日本看護協会では、「緩和ケア」「生殖看護」「小児プライマリケア」など、19の分野を設けて、認定審査を行っています。
またどちらの職種も、医療技術の面でスキルを伸ばせるのに加え、組織内の役割という面でもステップアップすることができます。
歯科衛生士の場合は、主任やチーフ、マネジャーなどの役職を設けている職場が多いです。
看護師の場合は、看護師長や部長などの役職を目指せます。
看護師の方が、病院などの大きな組織で働いていることが多く、キャリアステップが比較的明確ではありますが、近年は歯科医院でも医療法人化が進んでいることもあり、組織内でステップアップできるようポジションを設けているところも多くなってきています。
歯科衛生士と看護師の比較その③:勤務条件
勤務時間の比較
歯科衛生士の勤務時間は、基本的には日勤(昼間の勤務)のみです。
具体的には9:30~19:30(120分休憩)といったケースが多く、正社員でも10時始業、18時終業といった職場もあります。
早い職場でも朝8時半ころから始まり、遅い職場でも夜9時には退勤できることがほとんどです。
また、木曜・日曜が固定休みや、日曜が固定休みで他に任意の平日1日休める完全週休2日制といったケースがよく見られます。
看護師は、職場によって勤務時間が大きく変わります。
外来のクリニックや訪問看護ステーション、自治体などに所属する場合は、歯科衛生士と同様に日勤が基本です。
一方で、病院や介護施設、福祉施設の場合は、部署によっては夜勤があります。
2交代制(日勤・夜勤)や、3交代制(日勤・準夜勤・深夜勤)を採っていることが多いでしょう。
また、看護は24時間必要とされるため、土日に出勤することも少なくありません。
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給与の比較
歯科衛生士の平均年収は386.7万円、看護師の平均年収は498.6万円です※。
ただし、新卒の平均年収を比べると、歯科衛生士が281.2万円、看護師が308.6万円と、それほど大きな差はありません。
また、給与は勤務時間や責任の重さなどによって違い、例えば同じ看護師でも病院勤務(夜勤あり)と、クリニック勤務(日勤のみ)では、金額に大きな差があります。
クリニックや介護施設勤務の場合は400万円を下回ることもあるため、一概に「歯科衛生士より看護師の方が、給与が高い」とは言えないようです。
当たり前のことですが、「夜勤がある」「土日出勤」「責任が重い」「専門性の高さが求められる」といった“大変な仕事”ほど、給与は高くなる傾向があります。
大事なのは、「どっちが自分に合っているか」
歯科衛生士と看護師の、「似ている点」と「違う点」が、少し整理できたでしょうか。
共通点は多いものの、それぞれ特徴的なポイントもたくさんあります。
看護師はなんといっても、「人の生命」に近いところで患者様を支えられることが、一番のやりがいでしょう。
一方で歯科衛生士は、子どもからお年寄りまで幅広い患者様のお口の健康に寄り添いながら、一生を通してのお付き合いができることが、他の医療職にはない醍醐味です。
自分が、「仕事にどのようなやりがいを求めているか」や、「どのようなライフスタイルで生活したいか」をよく考えてみると、どちらが向いているのかが見えてくるのではないでしょうか。
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