パートナーが開業医でも、お金持ちとは限らない!?|歯科衛生士の不安をお金のプロに相談してみた!#1

歯科衛生士として働いているけど、他の人はどのくらいお給料をもらって、どんな生活をしているんだろう……?

そんな気になるお金事情について、紐解いていく本企画。現役歯科衛生士さんが、ファイナンシャルプランナーの小沢美奈子さんにお金の悩みを相談する連載です。収入や支出を見直しながら、今後のお金の使い方について考えていきます。

今回のお悩み相談者は、山田さん(仮名)。パートナーが開業した歯科医院で働いていて、すでに貯金や投資もしているとのことですが、将来に不安を抱えているそうです。


第1回 パートナーが開業医でも、お金持ちとは限らない!?(こちらの記事)
第2回 私立の歯学部は3000万円かかるけど、どう貯める? 子どもの教育費問題
第3回 保険の見直し、どうすればいい?


お悩みを相談するのは……
山田さん(仮名)
25歳。歯科医師の夫と子どもの3人家族。夫との出会いは、新卒時代に勤めていた歯科医院。現在は子育てをしながら、夫が開業した歯科医院で週に2~3日働いている。月の収入は10万円(額面)。老後や子どもの教育資金のために貯金をしているが、いくら貯めても不安な気持ちがある。

お悩みを受け止めるのは……
ファイナンシャル・プランナー 小沢美奈子さん
大学卒業後、損害保険会社(現あいおいニッセイ同和損保株式会社)に就職し、事務、社員教育、講師など幅広く経験。その後転職を経て、2015年に独立。日経WOMANなどでもマネー記事を執筆するなど、マネーライターとしても活動中。
https://kandbplanning.org/

歯科医師の彼と出会って結婚 パートナーと同じ職場で働くメリットって?

FP小沢さん   今日はよろしくお願いします。山田さんは将来や老後のお金について、不安を抱えているようですね。具体的なアドバイスをしたいので、まずは山田さんの職歴と、現状の暮らしについて詳しく伺いたいです。

山田さん   よろしくお願いします! 私は高校卒業後に歯科衛生士の専門学校に通って、新卒で入った歯科医院で2年半ほど働いていました。その後出産を経て、今は夫が開業した歯科医院で働いています。

FP小沢さん   パートナーさんと一緒に働いているんですね。山田さんの月の収入は額面で10万円だそうですが、どんな働き方をしているのでしょうか?

山田さん   患者さんが多い土曜日は必ず出勤していて、その他は週に1〜2日ほど、人手が足りないときに働いています。まだ子どもが小さいので働ける時間は限られているのですが、歯科衛生士の仕事が楽しくて。普段はずっと子どもの面倒を見ているので、勤務中に患者さんやスタッフと話すことが、良いリフレッシュにもなっています。

FP小沢さん お仕事が好きなんですね。お二人は、どこで知り合ったんですか?

山田さん    新卒で勤めていた歯科医院です。働き始めてすぐの、2020年4月から付き合い始めて7月には同棲開始、2021年に結婚して、2022年に息子を出産しました。2023年に夫が独立開業し、そこで働くようになったんです。

FP小沢さん 5年ほどのお付き合いなんですね。同じ職場で歯科医師と歯科衛生士という立場で働いてみて、いかがでしたか?

山田さん   私は新人で、彼はすでに経験のある歯科医師だったので、上手くできない部分は親身にサポートしてくれました。でも、技術面以外の患者さんに対する姿勢などについて怒られることも。私は結構引きずってしまうタイプなので、家に帰っても落ち込むこともありましたね……。「あの言い方はきつかったよ」と伝えたら彼も謝ってくれてたので、良い関係性ができていたのだと思います。

FP小沢さん 職場では同僚として真剣にやりとりしつつ、プライベートでは個人としての気持ちを伝えられているのは素敵ですね。開業した今もご夫婦一緒の職場ですが、どんなところにメリットを感じますか?

山田さん   仕事中も常に一緒にいられるのは心強いです。彼も私が医院にいると安心するみたいで。

FP小沢さん 素敵な関係ですね。山田さんの経歴やご夫婦の関係性がわかったところで、ここからお金の具体的な話をしていきましょう!

歯科医師=お金持ち、ではない? 開業医の堅実・リアルな家計事情

FP小沢さん   山田さんは70万円の貯金とNISA、アメリカ株を合わせて350万円の個人資産があるそうですね。NISAも毎月4万円積み立てていますし、順調に資産を増やせていると思います。それでも、お金の不安があるんですね。

山田さん   はい。自分の祖父母も自営業で、厚生年金ではなく国民年金だったため、支給額も低くて大変だったみたいです。祖父が亡くなった後、金銭的に苦労する生活を送る姿も見てきたこともあって。私も老後のことを考えると、お金をいくら貯めても不安で……。子どもの教育資金も貯めないといけないし、常に預金残高を確認しています。

FP小沢さん 将来に対する不安が大きいんですね。ご家族がいる場合は貯金や投資をする上で、話し合いはとても大切です。夫婦でお金の話はしていますか?

山田さん      はい。積立NISAも夫に教わりながら始めました。彼は元々資産運用に関心が高かったですし、私もお金について詳しくなりたいと思っていたので、一緒にYouTubeを見ながら勉強しています。

FP小沢さん   結婚される前から自然とお金の話ができていたんですね。

山田さん   はい。彼には「30代のうちに地元で歯科医院を開業する」という目標があったんです。私たちはもともと同じ職場で働いていたし、歯科治療の価値観が似ているので、開業にかかるお金の話も夫婦でしていました。

FP小沢さん 素晴らしい関係性です。夫婦間でお金の話がしにくい、という方もたくさんいらっしゃいますから。

山田さん  夫が開業医だと、周りからお金持ちだと思われがちなんです。でも、開業してまだ1年程度ですし、法人化もしていないので彼には役員報酬もありません。開業準備期間の数カ月は貯金を取り崩しながら生活していましたし、約5000万円の設備投資をしたので、出費もかなり大きかったんです。

FP小沢さん 開業にはお金がかかりますよね。開業後の暮らしは、もともとのイメージとのギャップはありましたか?

山田さん 夫が堅実で、しっかりと貯蓄をしたいタイプであることは付き合っている時からわかっていたんです。だから、贅沢な暮らしができるとは思っていなかったですね。夫婦間でも「しっかりお金を貯めつつ、たまに外食や旅行に行ける暮らしができたらいいね」と話していました。

FP小沢さん 堅実でありながら、楽しむことも忘れない柔軟性があるんですね。現在は、院長である彼の収入もお給料制なんですよね。

山田さん     はい。現在、夫の給料は約20万円です。夫婦合わせて月約30万円で生活をやりくりしているので、決して贅沢な暮らしをしているわけではないと思います。時々、不要になったものをフリマアプリで売って、その売り上げを生活費の足しにしているくらいです。だから、「全然お金持ちじゃないよ〜!」って思います。

FP小沢さん しっかり工夫しながら節約されているんですね。世間では開業医=お金持ちというイメージが一人歩きしてしまっているのかもしれませんね。

お金の話は言いにくい? まずは家庭内で相談することが大事

FP小沢さん 山田さん夫婦は月30万円の中から生活費と投資分も捻出していて、協力しながら堅実な生活を心がけている様子が伺えます。パートナーとお財布は分けていますか?

山田さん 分けています。外食費や日用品、光熱費といった家族で使うものは彼が出してくれていて、私の10万円のお給料から支払っているのは食費、通信費、交際費、積立NISA、自動車保険、子どもの定期積立です。

FP小沢さん なるほど。現在は2万円を山田さんが自由に使えるお小遣いに当てているそうですが、どんな使い方をしていますか?

山田さん 友達とカフェに行ったり、海外通販で子どもの服を買ったりしていますね。自分のお小遣いの額にはとくに不満はないですし、むしろ教育費の足しにしたいという気持ちが強いです。普段の生活の中でどうしてもお金が足りなくなったときは、自分の貯金を取り崩しています。

FP小沢さん 本当にお子さんのことを第一に考えていることが伝わってきますね。山田さんのお小遣いから支払っている自動車保険は、夫婦で加入しているんですか?

山田さん 私が支払っているのは、自分の分だけです。私たちが住む場所だと、車は1人1台ないと生活できないので、各自加入しています。

FP小沢さん そうなんですね。山田さんの支出を見ていても、無駄使いをしている様子はありませんね。それでも、自分の貯金を崩すこともあるとのことですが、お給料自体を少し上げてもらう相談をすることは難しいですか?

山田さん うーん……相談すれば応じてくれると思いますが、夫に出してもらっている分もありますし、彼もお給料が足りないときは貯金を取り崩しているので、ちょっと言いづらいです。今後、彼のお給料を上げられる見込みはあるので、貯金を切り崩す生活が続くわけではないと思うんですけどね。

FP小沢さん では、食費だけでもパートナーさんに出してもらうようにお願いするのはどうでしょう? 食費は彼の分も含めた出費なので、相談しやすいと思います。

山田さん そうですね。自分の欲しいものを買うためなら言いにくいですが、食費は家族の支出なので相談してみます! 家族カードを作って、彼の口座から引き落とされるようにできたらいいなと。それで浮いた分は息子のための貯金に回したいです。

FP小沢さんのまとめ:夫婦のコミュニケーションが出来ていれば、家計もうまくいく!

夫婦でお財布は別だとしても、夫婦間でのお金の話し合いはとても大切です。山田さんは普段から仕事やお金の話ができていますし、お互いを思いやりながら生活している様子が伺えました。普段から夫婦間でコミュニケーションが取れていると、自然と家計もうまく回ります。どのようにお金を貯めていくかは、次回以降じっくりとお話していきましょう!

 

イラスト/斎藤充博
編集/ピース株式会社


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