職場が非社保完備。自分で老後の備えを作るには?|歯科衛生士の不安をお金のプロに相談してみた!#2

歯科衛生士として働いているけど、他の人はどのくらいお給料をもらって、どんな生活をしているんだろう……?

そんな気になるお金事情について、紐解いていく本企画。現役歯科衛生士さんが、ファイナンシャルプランナーの小沢美奈子さんにお金の悩みを相談する連載です。収入や支出を見直しながら、今後のお金の使い方について考えていきます。

今回お悩みを相談するのは、歯科衛生士の笹川さん(仮名)。正社員として週休3日で働きつつ、休日は副業で歯科衛生士のスポット勤務や動画編集業務もしているそう。「将来のためにお金を貯めておきたい!」と考えつつも、この先どうしたらいいのか悩んでいるそうです。


第1回 正社員で働く歯科衛生士の副業事情って?
第2回 職場が非社保完備。自分で老後の備えを作るには?(こちらの記事)
第3回 貯金と投資、バランスはどうすればいい?


お悩みを相談するのは……
笹川さん(仮名)
20代後半。一人暮らし。歯科医院での勤務や世界一周旅行などを経て、2023年にはワーキングホリデーで北米へ。帰国後、今の歯科医院に就職して半年弱。週休3日で正社員として働きながら、副業もこなす。

お悩みを受け止めるのは……
ファイナンシャル・プランナー 小沢美奈子さん
大学卒業後、損害保険会社(現あいおいニッセイ同和損保株式会社)に就職し、事務、社員教育、講師など幅広く経験。その後転職を経て、2015年に独立。日経WOMANなどでもマネー記事を執筆するなど、マネーライターとしても活動中。
https://kandbplanning.org/

就業規則や福利厚生の確認はしっかりと

FP小沢さん 前回のお話では、笹川さんは本業だけでなく、休日に副業もしていて、月に約63万円の収入があると伺いました。

笹川さん はい。本業が額面約47万円、副業が額面約16万円、合計約63万円です。

FP小沢さん しかし、笹川さんの職場は社会保険未加入なんですよね。すると、ご自身で国民年金や国民健康保険の保険料を支払う必要があります。そのため銀行口座に振り込まれるお金が多かったとしても、実際の手取りは減ってしまいます。

笹川さん はい。この連載でお金の現実を知って、びっくりしたところです……。

FP小沢さん ちなみに笹川さんは、職場の就業規則や福利厚生について、きちんと把握できていますか? 実はそのあたりも給料に大きく影響するんです。

笹川さん よく分かっていません。今の職場で働き出してまだ半年ということもあって、ボーナスや有給休暇についてもほとんど知らないんです。

FP小沢さん そうなんですね。院長や同僚に聞いたことはありますか?

笹川さん こちらからは聞きにくいですし、具体的な話はしたことがないです。「ボーナスがある」ことは教えてもらえたんですけど、金額や支給日などもわからないまま働いています。

FP小沢さん お金にまつわることは聞きづらいですが、長く働く上で大事なことです。面談や給与日などのタイミングで、勇気を出して確認してみましょう。「自分はこの医院が大好きで長く働きたいので、安心して働くためにもお給料についても知っておきたいです」と添えると、円満にいくのではないでしょうか。

笹川さん 心強いです! 聞いてみます。

社保完備の歯科医院への転職も視野に入れて

FP小沢さん 笹川さんの職場は社会保険未加入なんですよね。今後のことを考えると、できれば社保完備の医院で働くことを検討するのも一案です。

笹川さん なぜですか? 銀行口座に振り込まれた金額よりも実際の手取り給与が少なくなることは理解したんですけど「その分、ベースのお給料が高いので大丈夫かな」と考えていました。

FP小沢さん 例えば、笹川さんが加入している国民健康保険だと、万が一笹川さんが病気になってお仕事を休まないといけなくなった場合、保障がほとんどないんです。会社が健康保険に加入していれば、「傷病手当金」としてお給料の約3分の2に当たる金額がもらえるんですよ。「出産手当金」も同様です。

FP小沢さん これらを踏まえると、職場から振り込まれるお金が多くても、保障がしっかりしていないともしもの時に困ってしまいます。

笹川さん そうなんですね。でも、今の職場は、すごく自分に合っているので、できれば辞めたくないんです。人間関係が良好ですし、診療方針も共感できます。嫌なところがないんですよ。

FP小沢さん 笹川さんにとって、居心地の良い職場なんですね。

笹川さん はい。保険診療をベースとしているところや、治療内容や金額を最初にしっかり説明するところも、私の考えと合っているんです。副業のスポット勤務でいろんな歯科医院を見てきましたが、中には高額な自費治療を患者さんに勧める方針のところもあるんです。

FP小沢さん いろんな歯科医院を見ているからこそ、今の職場の環境が良いと感じているんですね。

笹川さん はい、なので今すぐの転職は考えていないです。

FP小沢さん もちろん、職場の居心地の良さは大切です。しかし、お金の面を切り離して考えると、笹川さんの職場は働く人にとっては、あまり優しくはない労働環境のようです……。将来的には社保完備の職場への転職をオススメしたいところですが、今の職場で働き続けるならば、自分で将来の備えをする必要があります。

笹川さん どうしたらいいんでしょうか?

FP小沢さん 笹川さんは既にNISAを運用しているとのことですが、合わせてiDeCo(イデコ)も活用してみてはいかがでしょうか。職場が社会保険未加入ということは、健康保険だけでなく、厚生年金も未加入ということです。これから詳しく説明していきましょう。

職場に頼らず自分で老後の備えを作るには?

笹川さん 貯金以外に自分の資産を作るためには、NISAだけだと不十分ですか?

FP小沢さん 職場が厚生年金に加入している場合は、国民年金と厚生年金の2階建てで将来の資金を準備できます。しかし、未加入の場合は国民年金のみ。なので、社保完備の医院で働いている(厚生年金に加入している)方はNISAだけでも十分な場合もあります。でも、職場が未加入の方は、iDeCoも運用して自分で年金資産を形成すると良いと思います。

FP小沢さん iDeCoは、投資信託や預金・保険商品で老後の資産を形成できる制度です。節税できることが大きなメリットと言えますが、運用する際には毎月手数料がかかってくるので、よく調べてから始めましょう。

<iDeCoの主なメリット>

  • 運用状況によっては資産を有利に増やせる
  • 運用で増えた額に対する税金がかからない
  • 掛金が全額所得控除の対象になる
  • 60歳までお金を引き出せないため、強制的に老後資金の資産形成ができる
  • お金を受け取る際も、所得控除の適用が受けられる

<iDeCoの主なデメリット>

  • 運用状況によっては資産が減ることもある
  • 60歳まで原則途中でお金を引き出せない
  • 各種手数料が必要
  • 加入できる条件がある(加入できない人もいる)

FP小沢さん トータルでいうとiDeCoの活用をおすすめしますが、注意点やリスクも把握しておくことが大事です。

笹川さん なるほど。NISAをやりつつ、iDeCoも始めてみようと思います!

FPからのアドバイス「iDeCoも検討を」

FP小沢さん 将来を考えると、社会保険などの福利厚生は大事な要素となります。笹川さんのように、支給額が高くても、社保完備ではない職場の場合は備えが必要です。将来の年金が不安な方は、iDeCoも運用して年金対策をしておきましょう。iDeCoは老後のための資金なので、長期の積み立てが必要です。まずは少額から始めてみては?

 

イラスト/斎藤充博
編集/ピース株式会社


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