正社員で働く歯科衛生士の副業事情って？｜歯科衛生士の不安をお金のプロに相談してみた！#1

歯科衛生士として働いているけど、他の人はどのくらいお給料をもらって、どんな生活をしているんだろう……？

そんな気になるお金事情について、紐解いていく本企画。現役歯科衛生士さんが、ファイナンシャルプランナーの小沢美奈子さんにお金の悩みを相談する連載です。収入や支出を見直しながら、今後のお金の使い方について考えていきます。

今回のお悩み相談者は、笹川さん（仮名）。正社員として週休3日で働きつつ、休日は副業で歯科衛生士のスポット勤務や動画編集業務もしているそう。「将来のためにお金を貯めておきたい！」と考えつつも、この先どうしたらいいのか悩んでいるそうです。

第1回　正社員で働く歯科衛生士の副業事情って？（こちらの記事）
第2回　職場が非社保完備。自分で老後の備えを作るには？
第3回　貯金と投資、バランスはどうすればいい？

本業は歯科衛生士、副業も歯科衛生士

FP小沢さん　笹川さんは正社員の歯科衛生士として働きながら、副業もしているんですね。

笹川さん　はい、歯科医院で週休3日で働いています。出勤日は12時間勤務です。

FP小沢さん　休日が多い代わりに、勤務時間は、かなり長めなんですね。副業の方は、何をされているんですか？

笹川さん　副業も歯科衛生士なんです。ヘルプが必要な歯科医院を探すマッチングサービスを活用して、本業が休みの日にスポット勤務しています。

FP小沢さん　休日も働いているということは、何か欲しいものがあるとか、目標があるんでしょうか？

笹川さん　元々、新卒で歯科衛生士として働き出したころから「ワーキングホリデーに行くためにお金を貯めよう！」と考えて、Uber Eatsの配達員などの副業をしていたんです。ハイペースで働いた分、貯金もできたし、無事に海外生活も実現しました。

FP小沢さん　笹川さん、夢のために頑張ったんですね。

笹川さん　はい。海外生活を楽しんで、昨年帰国したのですが、それまで貯めた貯金はすべて現地で使い切ってしまいました……。今はまた、将来のために貯金しようと思っています。

FP小沢さん　なるほど。確かに、貯金ゼロは不安が大きいですよね。それにしても、休みなしで働き続けるのは、少し心配です。休んだり遊んだりする時間がなくて辛くないですか？

笹川さん　私、これといった趣味がないんですよね……。本業は週休3日なので、1日はゆっくりしています。でも、残り2日はやることがないから働いているんです。もはや、副業が趣味になっていますね。

副業が“趣味” でもスポット勤務の調整はやっぱり大変

FP小沢さん　副業でも歯科衛生士として働いていますが、やっぱり今の仕事がお好きなんですか？

笹川さん　いろんなアルバイトをやってみたのですが、やっぱり歯科衛生士が性に合っていると思えたんです。ほかにも在宅で動画編集の副業もしているんですが、動画を1本仕上げるのにも、想像以上に時間がかかってしまって。歯科衛生士のように「診療時間が終了したら退勤！」ではないのがストレスで……。

FP小沢さん　自分がどんな働き方や環境にストレスを感じるかを把握するのも、長く働く上ではとても大事なことです。

笹川さん　それに、やっぱり歯科衛生士は時給がいいんですよね。

FP小沢さん　たしかに、一般的なアルバイトよりも効率よく稼げそうです。

笹川さん　でも、働きたい日に募集を出している歯科医院を探して、申請して、返事が来て、また返して……とひとつずつやりとりしなきゃいけないので大変です。「明日働きたい！」という探し方は難しいかもしれません。

FP小沢さん　働く意欲が高いことは良いですが、休む間もなく働いて身体を壊してしまっては元も子もありません。笹川さんは本業だけでも十分な収入があるので、無理のない働き方で貯金ができるように、一緒に考えていきましょう！

「月収」と「手取り」は大きく異なるので注意

FP小沢さん　笹川さんは本業の月収が47万円、副業分（雑所得）が毎月約16万円だそうですね。合わせると、月収63万円。本業だけでもかなりの収入がありますね。

笹川さん　そうですよね。「こんなにお給料を出してくれる職場は他にないだろうな」と思っています。

FP小沢さん　笹川さんの場合は、月収に対して手取り額（職場からの支給額から税金や社会保険料が差し引かれて実際に口座に振り込まれる金額）も多いですね。

笹川さん　はい。去年はワーキングホリデーに行っていて、働いていない期間が長かったので、今年は税金が安いんです。（※1）

FP小沢さん　……あれ！？　給料明細を見てみると、支給額から厚生年金や健康保険などの社会保険料が引かれていないですね。もしかして、今の職場は社会保険に未加入なのでしょうか？

笹川さん　はい。国民年金と国民健康保険の保険料を、自分で払っています。

FP小沢さん　なるほど。国民年金（※2）と国民健康保険の保険料まで含めて計算すると……。笹川さんの月収が63万円なら、実際に手元に残るお金は約47万円です。

笹川さん　　思ったよりも少ないですね……！

FP小沢さん　笹川さんの場合、去年は海外にいて働いていない期間も長かったんですよね。昨年の収入が少なかった分、今年度は税金（※1）や保険料がとても安くなっていますし、あまり意識してなかったのかもしれませんね。

笹川さん　まさに「私は副業もしているし、月収63万円なんだ」と考えていました。

FP小沢さん　国民健康保険の保険料は、前年度の収入ではなく、前年度の総所得金額から基礎控除を引いた額で算定されます。保険料の計算はちょっと難しいため、新宿区の概算早見表をもとに算定してみましょうか。

笹川さん　お願いします！

FP小沢さん　たとえば、総所得金額等が150万円の場合、39歳以下の方の年間保険料は18万8543円です。そして総所得金額等が450万円に上がった場合、保険料は53万3,243円になり、3倍近くアップします。

笹川さん 　えーっ！！　そんなにかかるんですか！？

FP小沢さん　そうなんです。社会保険未加入の職場の場合、給与明細の総支給額（額面）や銀行口座に振り込まれた金額だけではなく、保険料などを差し引いた金額（手取り額）も意識するようにしましょう。

※1：所得税と住民税は毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得に対する税金を納めます。給与所得者の多くは、会社が毎月の給料から税金を天引きして、国や自治体に支払っています。住民税は前年分を、その翌年の6月から天引きで支払う仕組みです。
一方、確定申告で納税する場合は、毎年の所得に対する税金を、翌年の確定申告の時期（2月16日～3月15日）に所得税を納め、住民税は翌年の6月頃に自治体から送られてくる納税通知書をもって納税します。
※2：令和6年度の国民年金保険料の金額は、1カ月あたり16,980円です。まとめて前払い（前納）すると、割引となります。

FP小沢さんのまとめ「額面より、手取りが大事。税金や年金、保険料を確認してみて」

FP小沢さん　笹川さんのように、歯科衛生士さんで額面60万円以上を稼いでいる人は珍しいです。しかも、収入に対して出費も控えめで、すごく堅実な暮らしをされています。今の収入と出費をキープしていけば、ハイペースで貯金ができるはず。

ただ笹川さんは20代ということもあり、休みなしでも働けていますが、体力やライフステージの変化などを考慮すると、今の働き方をずっと続けるのは難しいと思います。くれぐれも無理はしないでくださいね。

また、笹川さんの場合は社会保険未加入（非社保完備）」の職場である点も気になります。社会保険未加入の場合、実際に使える額（手取り額）を意識するということ以外にも気をつけたいポイントがあります。次回以降、詳しく見ていきましょう！

イラスト／斎藤充博
編集／ピース株式会社

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