会社員が働きながら歯科衛生士の資格を取るのって、大変?
クオキャリアのブログを読んでいるみなさん、こんにちは。ライターの斎藤充博です。
僕の妻は歯科衛生士です。妻は会社員でしたが、一念発起して歯科衛生士学校に入り、現在では歯科衛生士として働いています。
大変だったのは、会社員として働きながら夜間の歯科衛生士学校に行っているとき。そばで見ていて、ハッキリと分かるくらい大変そうでした。
今日はそんな妻の経験をあらためて聞いてみることにしました。現在、同じような境遇で大変な思いをしている人や、これから会社勤めをしながら夜間の学校に通おうとしている人は、何かの参考になるかもしれません。
目次
なぜ歯科衛生士になろうと思ったのか
ミツヒロ 妻は歯科衛生士になる前に、通販の会社で事務員をしていたんだよね。
妻 そうそう。その会社が本当によくなかった。ヘンな社員がパワハラをしてくる。あと、会社の経営が危ない。
ミツヒロ 経営が危ないって、なんで分かるの? 妻は事務員だったんでしょ?
妻 社長が電話で取引先に「その支払はちょっと待っていただけますか~?」って交渉してたり、私の給料も遅配になったりしたことがあったよ。
ミツヒロ 分かりやすく危険な会社。
妻 だから転職したかったんだけど、私にはなんのスキルもなくて。だからなにか資格が欲しかったんだ。
ミツヒロ そこでどうしてまた歯科衛生士に? 国家資格だし、取るのが大変な部類に入ると思うけど。
妻 その時に大きな虫歯ができちゃって、歯医者に通っていたんだよ。そこで歯科衛生士さんに歯の磨き方を教えてもらって、「私は歯のことをなんにも知らないな」って思って。それがきっかけかな。
ミツヒロ なるほど……。ちなみに歯科衛生士に近い職種として「看護師」があるよね? そっちは考えなかった?
妻 看護師さんって、夜勤が大変そうなイメージがあって。正直なところそれは避けたかった。実際は勤務先を選べばそんなことはないのかもしれないけど……。
ミツヒロ 妻に夜勤は無理だよな。寝るの大好きだし。
学校に入るまで
ミツヒロ 歯科衛生士の専門学校に入ろうと決意してから、1年間バイトでお金を貯めて学費を確保していたよね。
妻 なんであんなことができたのか不思議なくらい、大変だった。通常の会社勤めが終わった後に、ハンバーガー屋でバイトをして、お金を貯めて……。
ミツヒロ おれもあの時はお金があったわけじゃないし、何もしてやれなかった……。いま思えば奨学金を借りるなどもっといいやり方があったような気もするけど。
妻 その時は奨学金を借りることに抵抗があったな……。
ミツヒロ 歯科衛生士の学校っていろいろあるけど、どんなふうに選んだの?
妻 会社員をやりながらっていうのが大前提だから、こんなふうに考えていたよ。
◆夜間部があるところ
これは当然だよね。
◆行事が少ないところ
忙しくて、あまり参加できそうにないから……。
◆「化粧禁止」などの大変な規則がないところ
会社勤めをした後に化粧を落とすなんて、大変すぎると思って。学生をするだけならいいけど、社会人はそうもいかないよね。
ミツヒロ こういうふうに考えていくと、おのずと絞られてくるね。
妻 あとは、会社と学校の距離を考えて、ちゃんと会社が終わった後に間に合うかどうかを見たかな……。
ミツヒロ なんだかんだ言って、それが最も重要かもしれない。
夜間部で大変だったこと
ミツヒロ 入学して、ここからが大変なわけだ。昼は会社員、夜は学生。
妻 9時に会社が始まる。会社が終わるのが17時。夜間の学校が始まるのが18時。学校が終わるのが21時。
ミツヒロ 僕は実際に見ていたわけだけど、こうして改めて文章にしてみると、かなりキツい!!!
妻 もう本当に課題をやる時間がなくて、会社の昼休みに外でやっていたりしたよ。
ミツヒロ 会社員だと定時に上がれるとは限らないでしょ? 残業になりそうな時はどうしていたの?
妻 そもそも事務員だから残業は以前からほとんどなかった。時々は忙しかったけど、それは根性で早く終わらせてた。
ミツヒロ ユルい性格のようで、しっかりしているところがある。……学校自体は大変じゃなかった?
妻 歯科衛生士専門学校って、思っていたよりもいろいろな授業があるんだよね。例えば、難しい計算をしなくちゃいけないようなこともあって、そういうのは苦手。まあ、やるしかないんだけど。
ミツヒロ なるほど。
妻 それに、私は歯医者で歯科助手として働いた経験がない。だから分からないことがたくさんあった。
ミツヒロ たとえば?
妻 「歯型を取る材料を練る授業」があるんだけど、歯科助手の人は業務でやっていることだから、余裕でできるんだよね。あれはうらやましかったな~。
ミツヒロ そういう「クラスメイトにちょっと先に行かれている感」って、本人としては苦しそうだね。どっちみち授業でやるから覚えるんだろうけど……。
妻 あとは、「現場で使う略語」があって、それは教科書にも書いてない。でも歯科助手をやっていた人はみんな知っているんだ。
ミツヒロ どんなのがあるの?
妻 たとえば「インレー」っていう、詰め物があるのね。それをカルテに表記するときはカタカナで「インレー」って書いちゃうとダメで、「In」って書く。そういうのがいっぱいある……。
ミツヒロ ああ~。初見では絶対に分からないやつだ!
妻 学生は実際の歯医者に実習に行くんだけど、そこでこういうのに当たったら、困っちゃうよね。だから、実習の前に担任の先生が歯科助手経験のない人を集めて、補講をやってくれたんだよ。あれはありがたかった……。
ミツヒロ そこは学校側も配慮してくれているってことだね。
どうやって乗り切った?
ミツヒロ 本当に大変で、ストレスが溜まりそうだけど、それはどうやって解消していたの?
妻 最初はストレス解消に間食をしちゃっていたな……。菓子パンとか。
ミツヒロ 学校が終わるのが21時で晩ごはん食べる時間も遅くなるわけだから、間食は仕方のない側面もあると思うけどね。
妻 そしたらすごく体重が増えてしまって「ヤバい!」と思ってジムに行って、できるだけ走るようにしたんだ。
ミツヒロ やっていたね。休みの度にジムに行っていて、偉いな~って思っていたよ。
妻 そしたら、意外と走るのも気持ちがよくてね、それもストレス解消になったんだ。走りすぎて、今度はガリガリにやせてしまったけど……。
ミツヒロ 食べる方、体重を減らす方、どちらでもストレス解消になったの、よかったよね。太ったりやせたり、大変だけど……。まあそこは適度にやればいいってことかな。
妻 あとは、クラスメイトのみんなで励まし合っていたよ。授業が始まる前に、ちょっとしたチョコとか甘い物を交換し合って、コミュニケーションをとる。
ミツヒロ いい光景だね。
妻 ……でもね、学校の授業が進むにつれて「いかに間食が歯に悪いか」ということがどんどん分かってくるようになるんだよ。理論的に。そうすると、だんだんチョコを交換するのもやらなくなってきちゃう。
ミツヒロ おもしろい話。一般人からプロに成長する過程だね。
一度社会人を経験してしてよかったこと
ミツヒロ 大変だったと思うけど、逆に「社会人を経験しているからよかった」ってことはある?
妻 社会人としての基本的なマナーは身についているから、そういう面ではいいよね。やっぱりマナーを知らないと実習先で注意されがち。
ミツヒロ まあ、どこかで一度は通る道だよね。社会人として就職先で注意されるか、実習先で注意されるかだから……。
妻 あと、学校は「髪の毛を染めるの禁止」「ネイル禁止」のところが多いと思う。私が通っている学校もそうだった。
高校卒業してすぐのオシャレを思いっきり楽しみたい時期に、制限がかかっちゃうと、厳しいかもしれない。私はそういう時期はもう過ぎたから、我慢できたけど……。
ミツヒロ 高校卒業してすぐだと、周りは大学生だったり、就職していたりする人が多いもんね。「なんで自分だけ髪も染められないだろう」って思っちゃいそう。
妻 そうそう。周りから見ると些細なことに思えるかもしれないけど、本人は悩むだろうね。
ミツヒロ 結局、会社はいつまで勤めていたんだっけ?
妻 臨床実習が始まる2年生の秋くらいには退職したよ。臨床実習は昼間に行われるから、もうどんなにがんばっても、事務員と並行して続けられないんだ。
ミツヒロ いや、本当にお疲れ様です……。
妻 会社員と学生の両立は本当に大変だったけど、個人的には臨床実習の方が大変だった気がするな~。
ミツヒロ 長くなりそうだ(笑)。それはまた別の記事で聞きましょうか。
大変だったけどがんばろう
というわけで妻の会社員と歯科衛生士学校を両立していたときの話でした。ここまで読んでいただいた人には分かると思うのですが、「大変?」という問いには「大変だった!」と答えざるを得ません。
しかし、妻は途中でくじけずに最後まで通って本当によかったと言います。最後にこんなコメントをくれました。
「3年間の限られた時間だし、ずっと永遠に続くわけじゃない。最後までやり通せば圧倒的な売り手市場で就職先にはずっと困らない。学生さんは大変だと思うけど、とにかくがんばるしかないんじゃないかな。人生を変えるチャンスだし、辞めちゃったらもったいないよ」
この記事が、がんばっている人へ何らかの励みになることを祈ります……!