【企業】で活躍する歯科衛生士|クロスフィールド株式会社・岡部さん「臨床現場での経験を活かして予防の大切さを伝えたい」
歯科衛生士の専門的知見は、歯科の材料や製品を取り扱う企業でも活かすことができます。研究開発職や広報・PR職などその活躍の場はさまざま。
今回は、歯ブラシ「TePe」の輸入販売を取り扱うクロスフィールド株式会社で営業職として働く岡部有希さんに、お話を伺いました。
★歯科衛生士のインタビュー記事一覧はこちら
目次
プロフィール
東京医科歯科大学卒(2019年卒)/クロスフィールド株式会社勤務(営業職)
おかべ ゆうき/大学卒業後、一般歯科に勤務したのち、2022年にクロスフィールド株式会社に転職。趣味は中学時代から約15年続けているホルンの演奏。社会人向けオーケストラ団体に所属し、休日は演奏会に向けた練習やカフェ巡りをして過ごしている。
★クロスフィールド株式会社:公式サイト、Instagram
歯ブラシで有名なスウェーデンTePe社をはじめ、海外の歯科器材・医療機器の輸入販売を行うほか、講習会や北欧歯科研修なども開催している。
ある一日のスケジュール
勤務体系はフレックス制で、普段はほとんど内勤。残業はほぼなく毎日17:40頃には退社している。
時間 | 項目 | 内容 |
---|---|---|
7:00 | 起床 | 7時には起き、朝食を食べてランチのお弁当作り。 |
8:55 | メールチェック | 歯科医院や雑誌制作の関係者からのメールに対応。 |
10:00 | 電話対応/サンプル手配 | ディーラーさんからの電話対応、サンプル希望の方へ送付手配。 |
10:30 | チームで会議 | 部内全体やDHだけの会議も。デンタルショーの装飾検討など、いろんなテーマで開催。 |
12:00 | ランチ | 節約のため、毎日お弁当を作って持参。 |
15:00 | オンライン説明会 | 歯科医院を対象に、自社製品の説明などを行う。 |
17:00 | メルマガやSNS投稿 | 投稿のアイデア出しから行う。 |
17:40 | 翌日の予定確認/退社 | 退勤後はまっすぐ帰宅することが多いが、金曜日は外食に出かけることも。 |
17:40~ | 退勤後 | 家では好きなドラマを観てリラックスして過ごす。 |
口腔ケア製品を通して予防の大切さを伝えたい
薬剤師だった祖父の影響で医療系の仕事に就きたいと思っていた岡部さん。子どものころに通っていた歯医者さんでの治療や歯磨き指導を通して予防の大切さを学び、それをいろんな人に伝えたいと歯科衛生士を目指すようになった。
東京医科歯科大学を卒業後は、ご高齢の方が多く訪れる歯科診療所に勤務。訪問診療にも携わるなかで患者さんからよく聞いたのは、「歯を失う前からちゃんと予防をしておけばよかった」という後悔の声。
「日本で予防歯科がまだまだ根付いていないことを実感しました。そんなとき、クロスフィールド株式会社に勤める大学の先輩から一緒に働かないかとお声掛けいただいたんです。予防歯科先進国のスウェーデンの歯科器材などを取り扱う会社なら、製品を通してもっと広く予防の大切さを伝えられるのではないかと思い、転職を決めました」
入社後は製品情報を覚えることからスタートし、先輩に教わりながら歯科医院を対象とした製品説明会や訪問営業を担当。2年目の現在では、製品カタログの作成や外部講師を招いたセミナーの開催、デンタルショーや学会での展示、自社製品を使用している歯科医療従事者への取材や雑誌の発行など、担当業務は多岐に渡る。
歯科衛生士養成校で講義を行うことも
デンタルショーでは展示ブースで訪れた人に製品の説明を行う
「日本の歯科医療従事者はもちろん、スウェーデンで働く歯科衛生士さんなど、いろんな方と関われるのがこの仕事の魅力だと思います。それから、入社してすぐにスウェーデンでの研修に行かせていただき、当社で扱っているTePeの工場や現地の大学・歯科医院を見学しました。日本との違いを実感でき、働く上でのモチベーションアップにつながりましたし、とても楽しかったのを覚えています」
スウェーデンのTePe本社。外には有名な歯のモニュメントがある
デンタルショー会場の様子
スウェーデン研修ではデンタルショーにも参加(TePe社のブースにて)
歯科医院での臨床経験が今の道にも生きている
企業に勤めてみて、入社前のイメージとの違いに驚くこともあったという岡部さん。
「営業は終日外勤のイメージがありましたが、支払い処理や記事の校正、配布するサンプルセットの作成など、意外と社内での作業も多いことを知りました。以前は、企業勤務に向いているのは『人前に立つのが得意な人』だと思っていましたが、事務処理など細かい作業やデスクワークが苦でない人も向いているのかもしれません」
前職である歯科診療所とは異なる環境下で働いているものの、臨床に従事していた頃に培った経験は無駄にすることなく活かせているという。
「どの製品がどんな患者さんに適しているかを聞かれたときに、自信を持って製品を紹介することができていると感じます。それはきっと、実際に患者さんのお口の中を診ていた経験が活きているからなんじゃないかと思います」
お客様のニーズと心を掴むため、下準備は入念に。歯科医院への訪問前には、医院HPなどで診療理念や注力していることなどをチェックして、フォーカスをあてる製品や相手に響く説明の仕方を事前に考えるようにしている。
新たなキャリアを重ねる今、岡部さんが力を入れているのは、製品や会社のことをより多くの人に知ってもらうための広報やPR活動、そして英語。
「どんな企画ならたくさんの方に見ていただけるのか。SNSやメールマガジンの配信ではいつもそれを考えています。それから、海外の方とのやり取りもある仕事なので、英語力をもっと上げていきたいです。英語耳になれるように、アプリや動画を駆使して日々勉強に励んでいるところです」
クロスフィールド株式会社で歯科衛生士の持つ可能性をますます実感するようになったという岡部さん。
「歯科衛生士には臨床現場で働く人だけではなく、私のように企業で働く人もいれば、研究の道へ進む人もいます。歯科衛生士は本当にいろんな分野で活躍できる魅力的な職業だと思うので、どんな分野であってもぜひ歯科衛生士という資格を生かして働き続けてほしいと思います」
また“歯科衛生士として企業で働く”という機会に恵まれ、実際に仕事をする中で実感しているのは「人とのつながり」の大切さだという。
「私も今の会社に入るきっかけになったのは、同じ大学の先輩とのつながりでした。もしかすると自分が働きたい企業に勤めている先輩が同じ学校にいらっしゃるかもしれないし、デンタルショーで企業の方とお話をした際に求人の話が出る可能性だってあります。人とのつながりを大切にし、巡ってきたチャンスを逃さずつかむ。それが、自分の道を切り拓くためのコツかもしれません」
入社して2年。「やっぱりここに入って良かった」と語る岡部さんの笑顔からは、チャンスを逃さなかったからこそ得られた今の充実した日々が浮かんでくる。
Q1.クロスフィールド株式会社ってどんな職場?
社員数は多くはないですが、その分社員同士の距離が近く、相談がしやすい職場です。歯科衛生士チームで話し合うことが多いですが、ディーラーさん(歯科医院との取引を仲介している代理店)が関わる分野は営業部に相談をするなど、他の職種ともコミュニケーションを取りながら仕事を行っています。
予防歯科製品では、TePeのほか、DIRECTAなどを取り扱っている
Q2.仕事でよく使うアイテムは?
パソコンやポインター、名札のほか、製品説明会の時に必ず持参するのはTePe製品の「デモケース」。ケースには、ほぼ全種類のTePe製品が入っています。見た目が道具箱みたいで目を引くので、「ケースごと欲しい」と言われることもありますね(笑)。