【起業して活躍】歯科衛生士インタビュー「歯科衛生士の起業が当たり前の世の中になる」
スウェーデンやアメリカでは口腔ケアのスペシャリストとして独立開業する歯科衛生士も多い。その選択肢の一つが歯科医療行為を伴わないオーラルケアサロン。
日本でもそんな施設をオープンした歯科衛生士がいます。2021年、山形県酒田市に「Oral care salon Lycka(リュッカ)」をオープンした前田奈美さんもその一人。20年もの診療所勤務を経てなぜ起業という道を選んだのか、話を伺いました。
*こちらは、2022年2月発行「就活BOOKクオキャリア春号」掲載記事を再編集したものです。掲載情報は当時のものとなります。
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目次
プロフィール
前田 奈美さん(Maeta Nami)
Oral care salon Lycka 代表
宮城高等歯科衛生士学院(2002年卒)/新卒で予防型歯科医院に入職。以来20年の在職中に1,500名もの患者さんを担当する。2017年、2019年にはスウェーデンのマルメ大学において最先端の予防歯科学を学ぶ。2021年1月に同医院を退職し、9月に「Oral care salon Lycka(リュッカ)」をオープン。3児の母。趣味はヨガ。
★Oral care salon Lycka
https://lycka-ocs.com/
https://www.instagram.com/lycka_oral.care.salon/
歯科衛生士の起業が
当たり前の世の中になる
20年分の臨床経験を武器に思い切ってチャレンジ
“人の役に立つ仕事がしたい”と歯科衛生士を目指した前田さんが、就職先として選んだのは予防型歯科医院。
「取り組んでいる予防プログラムにも、自立して働くスタッフの姿にも魅力を感じたんです。6年目のときにスウェーデンでの研修に参加してからは専用ルームを任せてもらい、ますます予防に打ち込むようになりました。口腔に問題を抱えている方を健康に導き、維持する。自分のやっていることが間違っていない、歯科衛生士はすごく価値のある仕事なんだと改めて実感しました」
その後20年間勤めた歯科医院を退職し、独立することを決めたものの、周りにはそんな道に進んでいる歯科衛生士はいなかった。
「調べたら近いことをしている方はいましたが、やるからには自分の理想を追求しようと思ったんです。だからあえて支援を求めず、これまでの知識と経験という自分の持ち物だけでやってみることにしました」
2021年9月山形県酒田市にオープンした「Oral care salon Lycka(リュッカ)」
歯科衛生士という職業には
無限の可能性がある
2021年9月、前田さんは山形県酒田市にオーラルケアサロン『Lycka』をオープンした。人づてに人気が広がり、開業3ヶ月で150人もの人が訪れている。
「健康な口腔の人が“健康であり続けたい” “もっときれいになりたい”と訪れる場所をつくりました。法律上、歯科衛生士単独では医療行為が行えないため、私が行うのは各種検査とそれに基づいた情報提供。その上で何を使いどんなケアをするか。そうした『選択』はご本人にお任せしています」
歯科衛生士の独立開業。日本ではまだ珍しく一筋縄ではいかない。しかし前田さんはそれが特別ではなくなる日がやってくると信じている。
「個性や得意分野に合わせていろんな道を選べることも、歯科衛生士の魅力。起業もその一つで、誰でも目指せる働き方なんです。かつてごく平凡な歯科衛生士学生だった私が、20年の時を経て持っていたのは、積み上げた経験と『歯科衛生士が好き』という気持ちだけです。皆さんもぜひ広い視野で、あなたの価値を一番生かせるカタチを見つけてもらえたらと思います」
サロン内にはユニット2台と滅菌消毒システムを設置。初診では最低1時間をとり、セルフケアの質を上げるサポートをしている。
口臭ケアやホワイトニング、ベビー・キッズケアなどのメニューも。
教えて! 前田さん
スウェーデンで学んだことは?
教育のすばらしさです。小さい頃から心と体の健康や人権の尊重などを学ぶ機会があり、人としての教育が大切にされています。予防が普及しているということ以上の、もっと根本的な日本との違いを感じました。歯学部でも、口のことだけでなく、自身で考える力や仕事への誇りと責任感を養うプログラムが印象に残っています。こんな教育が日本にも浸透し、歯科衛生士一人ひとりがもっと使命を持って働けるような社会が実現することを願っています。
今後力を入れていきたいのは、情報発信。最近ではベビーヨガ教室とコラボして食育や虫歯予防について話す啓発イベントを行った。