【介護施設で活躍】歯科衛生士インタビュー「思いやりと誇りを胸に 人の尊厳に向き合う」
高齢化が進み、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の向上が介護分野の課題となる中、それに深く関わる口の健康が注目され、口腔環境づくりを担う歯科衛生士に期待が集まっています。
歯科衛生士の資格に加えて、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得し、介護老人保健施設(老健)で口腔ケアに携わる徳留美緒さんに、老健での歯科衛生士の仕事や役割について伺いました。
*こちらは、2019年3月発行「就活BOOKクオキャリア春号」掲載記事を再編集したものです。掲載情報は当時のものとなります。
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目次
プロフィール
入所者との口腔レクリエーション。手づくりのイラストを使って、ぶくぶくうがいをレクチャー。
徳留 美緒さん(Tokutome Mio)
大阪府立看護大学医療技術短期大学部(2001年卒)
訪問歯科から始まり、一般、審美、インプラントと幅広い経験を経て、2006年介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得。2014年に現在の職場である介護老人保健施設「さやまの里(大阪府大阪狭山市/施設長:歯科医師 阪本秀樹)」に入職した。仕事や育児の傍ら、月1回は歯科衛生士会の研修に参加。知識を深めることが自信となり、モチベーションにつながっている。
★介護老人保健施設「さやまの里」
http://www.sayama.or.jp/sayamanosato/
思いやりと誇りを胸に 人の尊厳に向き合う
“おいしく食べる”を 多職種連携でサポート
「ここで私に求められているのは、口の中をきれいにするだけではなく、ごはんをおいしく食べられるよう口腔機能を改善させることです」
介護老人保健施設「さやまの里」で、入所者やデイケア利用者の口腔健康管理を行う徳留さん。“ミールラウンド”では、管理栄養士や介護職、リハビリ職(PT・OT)、看護師など多職種が、利用者の食事の様子を見ながらお互いに意見を出し合う。
「あの人、最近食事量が減ってるな。歯の調子はどう?」「グラグラしている歯があったから、痛みが出ているのかも」
それぞれの視点から不調の原因を探り、現場でのケアやリハビリに活かしていく。
「さまざまな見方を学び、口の健康が全身に関わっていることを実感しています」
歯科衛生士だからできる 介護での役割
徳留さんの口腔ケアや言葉かけで、しっかり食べられるようになった利用者も多い。
「嫌がっていた入れ歯を入れてくれるようになり、ペースト状から形のあるご飯に移行できた方は、お米好きやねん、と喜んでくれました。そんな笑顔を見られることが何よりのやりがいです」
利用者はいずれここを退所されるため、家族や次の施設への情報提供、病状・性格に応じたセルフケア指導にも力を入れている。
入職から4年半、ご家族やスタッフから口の相談を受けることも増え、たくさんの利用者に元気をもたらした。しかし今なお、病院や他施設、在宅から入所する方の多くは、口腔の環境に問題を抱えているという。
「病気の予防や回復、リハビリにはお口の健康がとても大切。これから医療や介護の分野でもっと歯科衛生士が活躍していけたらと思いますね」
入所者への口腔ケア。嫌がる人もいれば、認知症が原因で人からのケアを怖がる人も。恐怖心を与えないようにやさしく目線を合わせて説明することを心がけている。
徳留さんにQ&A
現在の仕事内容は?
主な仕事は口腔ケアと昼食時のミールラウンド。午前中は通所(デイケア)の方、午後からは入所の方に、口腔清掃や口腔マッサージ、口腔機能訓練などを行っています。歯科受診に同行したり、グループホームに保健指導で行ったりすることもあります。
役に立つ資格や経験は?
ケアマネの資格を取ったおかげで、介護保険の仕組みや他職種の役割が理解でき、連携に役立っています。診療所での仕事や訪問診療に携わった経験も、口腔内の状態や治療の流れを説明する際に活きています。