「1点集中」派? 「何でも」派? 仕事の範囲も医院それぞれ|歯科衛生士知っとこ!職場の見極め塾#35
こんにちは!ライターのヤナギです。 これまでに10年以上、クオキャリアでたくさんの歯科医院を訪問したり、記事を執筆したりしてきました。
その経験から、歯科衛生士の皆さんに「自分に合った職場を選ぶためのヒント」をご紹介します。
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目次
歯科衛生士の仕事の範囲は、職場によって違う
皆さんは歯科衛生士として就職をしたら、どんな仕事をしたいでしょうか?
歯科衛生士の仕事内容は、「診療分野」による違いもありますが、それ以外にも、「医院内の仕事のどの範囲を行うか」という違いも大きいです。
一般的に、治療や技工以外で、歯科医院のスタッフが担う業務には、大きく分けて
- スケーリング」「ブラッシング指導」「仮歯作製」など、資格や専門知識が必要な業務
- 「受付」「滅菌」「口腔内を触らないアシスト」といった、資格や知識が必須ではない業務
の2種類があります。
この中で、歯科衛生士の業務範囲がどこまでに設定されているかは、実は歯科医院によって違うのです。
「せっかく勉強して資格を取るのだから、『歯科衛生士でなければできない仕事』だけをしたい」という人も、「受付もアシストも、いろいろやってみたい!」という人もいるでしょう。
実際に働いている先輩たちの話を聞いても、「予防に専念できるからやりがいがある」派と、「幅広く経験できるから成長できた」派に、大きく分かれている印象があります。
そこで今回の記事では、それぞれのメリットとデメリット、そして、どんな人に向いているかを見ていきたいと思います。
なお、歯科衛生士の仕事は「予防処置」「保健指導」「診療補助」の3つですが、この記事ではこのうち「予防処置」と「保健指導」を、「歯科衛生士の資格や専門知識が必要な業務」という意味で「“歯科衛生士業務”」と呼んでいます。
「歯科衛生士業務だけを行う職場」のメリット
まずは、定期検診や歯周病治療など、「歯科衛生士(と歯科医師)にしかできない仕事」に専念できる職場について考えてみます。
このような職場で働く歯科衛生士には、以下のようなメリットがあるでしょう。
1.歯科衛生士業務により深く取り組める
歯科衛生士業務だけを行う職場では、当然、一日の中でこれらの業務にかけられる時間が長くなります。
加えて、こうした職場では患者担当制を導入していることが多いので、患者さんと長期的な信頼関係を築く中で、予防や歯周病治療の奥深さを感じられるでしょう。
歯科衛生士としてのやりがいが大きいのに加えて、専門スキルを身につけていけます。
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2.プロ意識を持って働ける
「歯科衛生士には歯科衛生士にしかできない仕事をしてほしい」と考えている職場は、すなわち、歯科衛生士をプロフェッショナルとして尊重している職場だと言えます。
医院によっては、歯科医師と対等な立場で症例について意見交換をしたり、歯科衛生士が「主治医」のようなポジションで患者さんの管理を任されていたりすることもあります。
歯科衛生士として、大きな誇りを持って働ける環境だと言えるでしょう。
3.落ち着いて診療ができる
歯科衛生士業務、すなわち「予防」や「歯周病治療」は急患が入ることはなく、ほとんどの場合が予約制です。
そのため、比較的落ち着いて診療に当たれます。
「歯科衛生士業務だけを行う職場」のデメリット
このようにさまざまなメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。
1.関わる症例の幅が狭い
予防や歯周病治療に深く取り組めるということは、逆に言えば「それ以外の治療にはあまり触れられない」ということでもあります。
このデメリットをカバーするために、「入職後、最初の数週間〜1年間はアシストに入って、さまざまな治療を経験する」という研修体制を採っている職場もあります。
2.社会人スキルが身につきにくい
本格的に仕事をするのが初めてという人は、社会人としての言葉遣いやマナーなどが身に付いていないことも多いでしょう。
受付業務や電話対応などを経験する機会がない職場では、仕事の中でこうした社会人としてのスキルを身につけるのが難しいかもしれません。
そのため、新人教育の中で、接遇やマナーを学ぶ機会を設けている職場も多いです。
3.転職の際の負担が大きいことがある
将来的に他の職場に転職して幅広い業務を担当することになった場合に、未経験の仕事が多くなり、新人のように教えてもらわなければならない可能性があります。
「歯科衛生士業務だけを行う職場」に向いている人
こうしたメリット・デメリットを踏まえた上で、「歯科衛生士業務だけを行う職場」には、次のような人が向いているでしょう。
- とにかく予防と歯周病治療に興味がある人
- 学んだ知識や技術をできる限り活かしたい人
- 歯科医師と対等な立場で働きたい人
- 臨機応変な対応が、どちらかというと苦手な人
「幅広い業務を行う職場」のメリット
さて次に、受付や滅菌、アシストなどを含め、スタッフが行うほぼすべての業務を歯科衛生士も担う職場について見ていきましょう。
まずは、こうした職場のメリットを挙げてみます。
1.幅広い治療の知識が身に付く
アシスト業務を通してさまざまな治療に触れることで、治療についての理解がぐっと深まります。
虫歯治療や審美治療、噛み合わせ治療などについての知識を持っていることで、治療内容を踏まえた予防管理ができますし、経験を積めばさらに、自分から患者さんに治療を提案できるようになれるかもしれません。
「歯科衛生士」という枠にとどまらず、「歯科医療」全般について学べる環境と言えるでしょう。
2.社会人として成長できる
受付業務や電話対応などを通して、言葉遣いやマナーなど、社会人としてのスキルが磨かれます。
こうした社会人スキルはプライベートの場面でも役立つことが多く、仕事を通じて自然と「素敵な大人の女性」へと成長できそうです。
3.医院全体の仕組みを把握できる
院内の幅広い業務に関わることで、「会計の仕組み」「滅菌の仕組み」「在庫管理の仕組み」など、さまざまな「歯科医院の仕組み」を把握できます。
それによって自分自身が働きやすくなったり、改善点を見つけられたりすることもあるでしょう。
また、歯科助手など他職種と一緒に仕事をする機会が多く、互いに理解が深まって、職種間の距離が縮まるのもメリットの一つです。
4.転職がスムーズ
歯科医院内の業務が一通りできるようになるので、将来どんな職場に転職したとしても、比較的スムーズに対応できるでしょう。
「幅広い業務を行う職場」のデメリット
では逆に、このような職場のデメリットは何でしょうか。
1.歯科衛生士業務の経験が少なめ
歯科衛生士業務に専念する場合と比べると、予防や歯周病治療の経験値はどうしても少なくなります。
特にスケーリングやSRPといった手技は経験を積む中でスキルが磨かれるので、技術面でのスキルアップのペースは比較的ゆっくりになりそうです。
2.専門性を発揮する場面が相対的に少ない
歯科衛生士業務だけを行う職場に比べると、「プロフェッショナル」というイメージは弱いことが多いです。
ただし、「歯科衛生士業務については患者担当制を導入する」など、幅広い業務を担いつつも、歯科衛生士の専門性の高さを尊重している職場もあります。
3.業務内容が予測しにくい
幅広い業務を担っている職場の場合、「手が空いたら受付やアシストに入る」「急患に対応する」など、臨機応変な行動が求められる場合があります。
ただし、「アシストや受付に入る日と、歯科衛生士業務に入る日を曜日で分ける」など、どの業務を行うかスケジュールを定めている職場もあります。
「幅広い業務を行う職場」に向いている人
「幅広い業務を行う職場」には、次のような人が向いているでしょう。
- 一つのことだけをやっていると飽きてしまう人
- 好奇心旺盛な人
- 「全体像」を把握して仕事をしたい人
- 歯科衛生士としてだけでなく、社会人としても成長したい人
大切なのは、自分の価値観や適性に合っていること
こうして比べてみると、どちらのタイプの職場も、それぞれ「メリット」「デメリット」があることがわかっていただけたかと思います。
冒頭でも述べましたが、実際に働いている先輩の評価も、「専門性を発揮できる職場で良かった」「幅広く経験できる職場で良かった」と、驚くほど人それぞれです。
つまり、「どちらが良い」とは一概には言えず、自分の価値観や性格に合っていることが重要なのです。
また、今回ご紹介した2パターンの他にも、「受付や滅菌はやらないけれど、アシストは幅広くやる」「歯科衛生士業務に加えて、オペアシストなどの専門的なアシストは歯科衛生士が担当する」など、さまざまなケースがあります。
入職してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためには、見学や面接の際に、その歯科医院で歯科衛生士がどのような仕事を任されているのかを確認しておくことが大切です。
働いている先輩にも積極的に質問をしてみて、しっかり納得した上で、就職先を選ぶと良いでしょう。
みなさん一人ひとりが、「ここを選んで良かった!」と心から思える職場に出会えますように。
ライター、インタビュアー
2010年よりクオキャリアのさまざまな媒体で歯科医師・歯科衛生士の取材や、求人原稿・インタビュー記事の執筆など、のべ6,000件以上を担当。歯科業界の採用事情に精通している。
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