歯科の診療分野を知ろう!〈口腔外科(インプラント)編〉|歯科衛生士知っとこ!職場の見極め塾#31
こんにちは!ライターのヤナギです。 これまでに10年以上、クオキャリアでたくさんの歯科医院を訪問したり、記事を執筆したりしてきました。
その経験から、歯科衛生士の皆さんに「自分に合った職場を選ぶためのヒント」をご紹介します。
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目次
わかるようでわからない? インプラントと歯科衛生士の関係
この連載のLesson 6で、歯科医院の「診療科目」や「診療分野」について解説をしました。
今回取り上げるのは、「口腔外科」のうち「インプラント」です。
「インプラント」という治療方法は今ではかなり一般的になり、診療メニューとして掲げている歯科医院も増えています。
皆さんの中にも、「興味がある!」という人がいるのではないでしょうか。
しかし、具体的な仕事内容として、「インプラントに歯科衛生士がどう関わるのか」は、よくわからないという人が多いかもしれません。
そこで今回は、インプラントにおける歯科衛生士の役割や、インプラント治療ならではのやりがいなどについて、詳しく見ていきたいと思います。
そもそも「インプラント」とは
まず、インプラントについて簡単に確認しておきましょう。
インプラントは、虫歯や歯周病などで歯を失ってしまった場合の治療方法の一つです。
顎の骨の中に、金属でできたネジのような器具を埋め込み(この部分がインプラント本体)、その上に、レジンやセラミックでできた人工歯(上部構造)をかぶせて歯の代わりにするという方法です。
なお、失ってしまった歯を補う方法は、大きく分けて、「義歯」「ブリッジ」「インプラント」の3種類があります。
インプラントはその中で、「残存歯に影響を与えない」「しっかり噛める」「見た目が天然歯とほぼ同じ」といった点が大きなメリットです。
一方で、外科手術が必要になり、費用も高額になるなど、患者さんの負担が大きいというデメリットもあります。
また、現在のようなチタンを使用したインプラントが実用的に行われるようになったのは比較的最近で、40年ほど前から。
研究や技術開発がまだまだ進んでいる途中の分野だということも、インプラントの特徴と言えるでしょう。
インプラントにおける歯科衛生士の役割は3つ
インプラントを使った一連の治療の中で、歯科衛生士の役割は主に次の3つです。
1.オペ前後の口腔ケア・歯周病治療
インプラントを埋め込む手術を行うためには、まず歯周病があればしっかり治療して、口腔内の環境を良い状態に整えておく必要があります。
それを中心的に担うのが歯科衛生士です。
また、インプラントを入れた後も定期的にメンテナンスを行う必要がありますが、それも歯科衛生士の重要な役割です。
インプラントのメンテナンスは天然歯とは違った注意点があり、通常のメンテナンスとは別の器具を使用する場合も多いため、専門的な知識や技術が必要とされます。
2.オペの補助
もちろん実際にオペを行う際にも、歯科衛生士が活躍します。
事前に器具をそろえておく、オペの進行に合わせて必要な器具をドクターに渡す、オペ中の患者さんの様子に気を配る、といったサポートが主な仕事です。
インプラントのオペに使う器具や材料にはさまざまな種類がありますし、オペ中には血圧をはじめとした患者さんの全身管理も必要になるので、ここでも専門的な知識が求められます。
3.患者さんのサポート
実は、インプラントにおける歯科衛生士の一番重要な役割は、これかもしれません。
インプラントは他の歯科治療に比べると大掛かりなので、治療に臨む患者さんの多くが不安な気持ちを抱えています。
不安をできるだけ解消してあげるため、患者さん自身が治療内容についてしっかり理解できるように噛み砕いて説明をしたり、ドクターより身近な存在としていろんな質問に答えたりします。
こうしたサポートは、歯科の専門的な知識を持つ歯科衛生士だからこそできることです。
また、手術中に、こまめに声をかけたり、気温が低すぎないか、姿勢が辛くないかに気を配ったりすることも、歯科衛生士の役目です。
加えて、歯科医院によっては、「インプラントにかぶせる人工歯の色や形を患者さんと相談し、歯科技工士に伝える」という重要な役割が、歯科衛生士に任されることもあります。
インプラントには、歯科医師や歯科技工士などさまざまなスタッフが関わります。
その中で、患者さんとのコミュニケーションのフロントに立つのが歯科衛生士だといえるでしょう。
インプラントに関わるやりがいは?
インプラントに関わっている先輩歯科衛生士の多くが、次のようなやりがいを挙げています。
1.患者さんが、しっかり噛んで食べられるようになる
「歯を失ってしまい、食事がうまくとれずに痩せてしまっていた患者さんが、インプラントを入れたことで、逆に太らないか心配するくらいまでしっかり食べられるようになった」
「インプラントを入れて人生が変わった、と喜んでくれた」
など、患者さんのうれしい変化をすぐ近くで支えられることが、インプラントに関わる中での一番のやりがいでしょう。
2.患者さんと長期にわたって信頼関係を築ける
インプラントは、治療の決断をするところから、事前のメンテナンス、手術当日、術後のメンテナンス、定期メンテナンスと、長期間にわたって患者さんとのお付き合いが続きます。
患者さんに寄り添う中で距離が縮まり、深い信頼関係が築けることも、インプラント治療のやりがいの一つです。
3.手術そのものの達成感や面白さ
実際に目の前で大きな手術が行われることや、他の治療では扱わない器具を見られるなど、インプラント治療そのものを面白いと感じている先輩も多いようです。
4.スキルアップ
専門性の高いスキルを身につけられることも、インプラントに関わるメリットの一つです。
学会の認定資格を目指すこともでき、歯科衛生士として「自分の武器」をつくれます。
インプラントに向いている人は?
ここまで挙げたような特徴があることから、インプラントには次のような人が向いているでしょう。
1.新しいことを学ぶのが好きな人、好奇心旺盛な人
先ほど書いたように、インプラントはまだまだ治療法が研究されている最中です。
新しい知識を積極的に学びたい人や、チャレンジ精神のある人に向いています。
2.患者さんの人生のターニングポイントに関わりたい人
オペを境に患者さんの生活がガラッと変わるところが、インプラントの醍醐味です。
このようなダイナミックな変化に立ち会いたいと考えている人にも、インプラントはピッタリです。
3.責任感が強い人
インプラントは「手術」なので、一つのミスが重大な結果を招きかねません。
もちろんどんな歯科診療でも責任感は大切ですが、特にインプラントではより強い責任感が必要とされます。
インプラントは、どの歯科医院でも経験できる?
インプラントはかなり普及してきているとはいえ、導入していない歯科医院ももちろんたくさん存在します。
また、歯科医院のホームページなどに「インプラントを行っています」と書いてあっても、実際の施術件数が少ないこともあります。
「インプラントの経験をとにかくたくさん積みたい!」「難しい症例も見てみたい」という人は、大学病院や総合病院、インプラントを専門的に行っている歯科医院などに就職するのがおすすめです。
一方で、「インプラントにも興味があるけれど、一般歯科もまんべんなく身につけたい」と考えている人は、幅広い診療を行いつつインプラントにも力を入れている医院を選択すると良いでしょう。
いずれの場合にも、見学や面接の際に「週や月あたりのオペ件数」を確認しておくと、「こんなはずじゃなかった……」というミスマッチを防げます。
また、医院によっては、「インプラントに関わるのは入職◯年目から」などと決まっている場合もあるので、研修カリキュラムやキャリアパスについても確認しておきましょう。
「インプラントに興味があります」と医院側にしっかり伝えておくことで、早くからオペを見学できたり、インプラントの係に振り分けてくれたりするなど、何らかの配慮をしてもらえることも多いです。
まとめ:チャレンジする気持ちが大事!
一般的には、「インプラント=手術」というイメージを持っている人が多いと思います。
でも実は、オペ前後の口腔ケアや、患者さんとのコミュニケーションなど、手術以外でこそ歯科衛生士が活躍できることがわかっていただけたのではないでしょうか。
また、専門的な知識や技術が必要になる一方で、一般歯科と共通の業務も意外と多いものです。
「難しそう」「新卒には無理かな」と敬遠せずに、興味のある人は、積極的にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
★柳原さん連載の#診療分野シリーズ
★【診療分野別】口腔外科・インプラント/歯科衛生士業務の特徴
ライター、インタビュアー
2010年よりクオキャリアのさまざまな媒体で歯科医師・歯科衛生士の取材や、求人原稿・インタビュー記事の執筆など、のべ6,000件以上を担当。歯科業界の採用事情に精通している。
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