歯科の診療分野を知ろう!〈予防歯科・歯周病治療編〉|歯科衛生士知っとこ!職場の見極め塾#28
こんにちは!ライターのヤナギです。 これまでに10年以上、クオキャリアでたくさんの歯科医院を訪問したり、記事を執筆したりしてきました。
その経験から、歯科衛生士の皆さんに「自分に合った職場を選ぶためのヒント」をご紹介します。
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目次
これぞ、THE・歯科衛生士!「予防歯科」&「歯周病治療」
この連載のLesson 6で、歯科医院の「診療科目」や「診療分野」について解説をしました。
診療分野について考えてみよう!〈小児歯科編〉 |歯科衛生士知っとこ!職場の見極め塾#6
今回取り上げるのは、歯科の診療分野のうち「予防歯科」と「歯周病治療」。
この2つは、歯科衛生士が活躍できる代表的なフィールドです。
この記事では、「予防歯科」や「歯周病治療」における歯科衛生士の仕事内容や、これらの分野を理解するために役立つキーワードをご紹介します。
「予防歯科」「歯周病治療」とは
まずは、「予防歯科」と「歯周病治療」の概要を見ていきましょう。
虫歯をはじめ、口腔内の何らかの疾患を「治療」するのが、歯科医院の役割の一つです。
こうした治療は、歯科医師が中心となって行います。
ただし、治療の中でも歯周病の基本治療については、歯科衛生士が大きな役割を果たしています。
また、口腔内に特に問題がない場合に、その健康な状態を維持することも、歯科医院の重要な役割です。
こうした“健康維持のための歯科診療”は、「予防歯科」と呼ばれています。
治療が、“今起こっている困りごと”への「対症療法」であるのに対して、予防は、“将来起こりうる困りごと”の「原因を前もって取り除く」という違いがあります。
そしてこの予防歯科は、歯科衛生士が中心となって担っています。
「予防歯科」と「歯周病治療」は、歯科衛生士の仕事内容においては共通する部分が大きいため、今回の記事では、この2つを一緒に取り上げます。
「予防歯科」「歯周病治療」における歯科衛生士の役割は2つ
「予防歯科」「歯周病治療」における歯科衛生士の役割は、大きく分けて2つあります。
1.スケーリング等の処置
スケーリングやSRP、ブラッシングなどの手技によって、歯石やプラークを除去する業務です。
予防処置は歯科医師の指導の下で進めることが基本ですが、診療計画の立案を歯科衛生士が主体となって行うこともあります。
2.保健指導
患者さんとコミュニケーションを取り、ブラッシング指導や生活習慣の改善指導などを行う業務です。
患者さんが自らお口の健康を保てるよう、そのための“スキル”と“モチベーション”を上げることが目的です。
患者さんが自分で行う口腔ケアは、歯科医院で行われる「プロフェッショナルケア」に対して、「セルフケア」や「ホームケア」と呼ばれています。
なお、院内で販売するセルフケア用品の選定も、歯科衛生士に任されていることが多いです。
「予防歯科」「歯周病治療」のやりがいは?
「予防歯科」「歯周病治療」における歯科衛生士のやりがいは、主に次の4つがあります。
1.口腔の状態を自分の手で改善に導ける
「SRPを重ねることで、歯肉の状態が良くなった」など、自分の専門技術で、患者さんのお口の状態を改善する手応えを感じられます。
2.患者さんの意識や行動を変えられる
「ブラッシング指導をしたら、患者さんが頑張って歯を磨いてくれるようになった」など、患者さん自身の前向きな変化が何よりもうれしいと話す先輩が多いです。
3.患者さんと直接やりとりをする場面が多いため、患者さんとの距離が縮まる
信頼関係が深まるうちに、「これからもずっと診てほしい」「あなたに会うために通っている」など、うれしい言葉をもらえることもあるそうです。
4.スキルを積み上げて、歯科衛生士として存分に活躍できる
歯周病関連の学会認定歯科衛生士など、資格取得も目指せます。
「予防歯科」「歯周病治療」の難しさは?
一方で、次のような難しさもあります。
1.患者さん自身のモチベーションを引き出すスキルが必要
予防は「健康な状態を維持する」のが目的のためもちろん無症状ですし、歯周病も、痛みなどの自覚症状が少ない病気です。
そのため、患者さんが治療や予防の必要性を自覚しにくく、通院を中断してしまうこともあり得ます。
よって結果につなげるには、患者さんのモチベーションを引き出し、それを維持してもらえるようなコミュニケーションを取れるスキルが必要とされるのです。
2.手技の訓練が必要
特にSRPなどの高度な手技では、ある程度のレベルに達するまでに訓練が必要です。
うまくいかなくても諦めずに、練習を重ねる根気強さが求められます。
「予防歯科」「歯周病治療」に関わるキーワード
ここでは、「予防歯科」「歯周病治療」に関して、求人情報でよく見かけるワードや、時事的なトピックスをご紹介します。
患者担当制
一人の患者さんを、同じ歯科衛生士が継続して診ていく仕組みのことです。
患者さんとの信頼関係が築きやすい、症状の経過を追いやすい、などのメリットがあります。
なお、「治療のアシストは手の空いている歯科衛生士が入るが、予防歯科や歯周病治療は患者担当制を採っている」という職場も多いです。
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)
予防処置としてクリーニングを行う場合は原則として保険適用外ですが、か強診に届けている診療所では、保険の範囲内でSRP(スケーリングやルートプレーニングなどの歯周病初期治療)が行えます。
患者さんの金銭的な負担が軽くなるので、歯周病や虫歯予防のための通院がしやすくなるというメリットがあります。
メンテナンス実施状況や医療機関との連携、設備の設置など、さまざまな施設基準を満たすと、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の届け出を出すことができます。
「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」はどんな歯科医院? 歯科衛生士が就職するメリットは?
国民皆歯科健診制度
現在は小児のみに義務付けられている歯科健診を、成人にも拡大する制度です。
2025年からの導入が検討されています。
「か強診」制度とあわせて、社会全体の方向性が、「治療」から「予防」に移行していることの一つの表れと言えるでしょう。
メディカル・トリートメント・モデル(MTM)
スウェーデン発祥の、口腔内の健康管理の手法の一つです。
最初に詳細なデータを取り、患者さん一人ひとりの「リスク」を分析することが特徴です。
そして、そのリスクを軽減するための予防プログラムを作成し、治療と再評価、メンテナンスを行っていきます。
予防矯正
主に小児に対するアプローチで、近年、取り入れている歯科医院が増えています。
癖や生活習慣を改善することによって、正常な歯並びへの発達をサポートするという、「将来、本格的な矯正治療が必要にならないようにするための矯正」です。
具体的な内容としては、歯科医院や自宅でMFT(筋機能訓練)を行ったり、マウスピースを装着したりします。
PMTC
求人情報や医院ホームページなどで見かけることの多いワードで、「プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング」の略です。
スケーリングやSRPに加えて、ラバーカップによるポリッシングで、歯の表面をツルツルに仕上げる一連の処置のことです。
自費メニューとして設定している歯科医院が多いです。
エアフロー
現在行われている一般的な歯面清掃では、スケーラーやブラシ、ラバーカップなどの器具と研磨剤を使用します。
一方でエアフローは、細かいパウダーを吹き付けることによって歯面の汚れを落とすものです。
従来の手法に比べてエナメル質へのダメージが少ないとされ、導入する歯科医院が増えています。
エアフローが設置されている歯科医院は、予防歯科に対する意識が比較的高いと考えられます。
まとめ:どんな職場でも、「予防歯科」「歯周病治療」はほぼ必須の業務
冒頭でも書いたように、「予防歯科」と「歯周病治療」は、歯科診療の中で歯科衛生士が活躍できる中心的な分野です。
どのような歯科医院に就職したとしても、歯科衛生士はほぼ必ず、これらの業務を行うことになるでしょう。
ただし、「予防歯科」や「歯周病治療」への力の入れ具合は、歯科医院によって差があります。
「予防歯科」や「歯周病治療」により本格的に取り組みたい人は、これらの分野を重視している歯科医院を選ぶと、一層のやりがいや成長を感じられるでしょう。
予防に力を入れている歯科医院の見極め方は、こちらも参考にしてみてください。
■「患者担当制」ってよく聞くけど、どういうこと?
■“予防専用“の空間がある医院=○○を大切にしている職場
ライター、インタビュアー
2010年よりクオキャリアのさまざまな媒体で歯科医師・歯科衛生士の取材や、求人原稿・インタビュー記事の執筆など、のべ6,000件以上を担当。歯科業界の採用事情に精通している。
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