仕事には慣れてきたけど同じことの繰り返し…転職した方が良い?|キャリコン歯科衛生士のお悩み相談室#3
皆さん“キャリア”というと計画を立てその道筋に沿って進んでいく…というイメージが強いかもしれません。
しかし実際、そんな教科書通りにうまくいくことばかりではないはずです。
キャリアってなんだか難しそう、そこまで考える必要があるのかな…と思う方もいるでしょう。
本連載は歯科衛生士と国家資格キャリアコンサルタントのダブルライセンスを持つ冨澤幸子さんが、歯科衛生士としての臨床経験のほか、歯科衛生士養成校の教員や一般企業での勤務経験など多彩なキャリアを歩んできた経験を活かし、皆さんのキャリアのお悩みにお答え。
歯科衛生士という道を選んだ皆さんがその資格を活かして楽しく職業人生を送れるよう、考え方・生き方のヒントをお伝えしていきます。
★キャリコン歯科衛生士のお悩み相談室
第1回 私が自分のキャリアを前向きに受け入れられるようになるまで
第2回 卒後1年以内に辞めてしまった。これから歯科衛生士としてやっていける?
目次
プロフィール
歯科衛生士/国家資格 キャリアコンサルタント
とみざわ さちこ/金融機関での営業職を経て、歯科衛生士にキャリアチェンジ。歯科衛生士養成校を卒業後、歯科クリニックや市役所、歯科衛生士養成校に勤務。現在は企業の人材確保・採用支援に関わる仕事に携わっている。
悩んだらまず、ここまでの成長を振り返ってみよう
今回のお悩みはこちら!
入職から3年、仕事には慣れてきたけど同じことの繰り返し…このままで良い? 転職した方が良い?
慣れてきたということは、入職してからの3年間、その職場の一員としての役割を自然と果たせるまで成長した、ということ。よく頑張ってきましたね。
ぜひ一度、入職した時のことを思い出してみてください。その時の自分と今のあなたを比べてみると、あなたが何をどのように頑張ってきたのかが見えてきますよ。まずは、ここまで成長してきた自分を実感してくださいね。
さて、新卒から3年、毎日仕事に向き合って取り組んでいれば、現在の職場で必要な歯科衛生士業務はひととおり習得できていると思います。多くの職場で必要となる知識や技術が身についていれば、転職しても即戦力として期待されることも多いでしょう。
それでは、今の職場で続けることもできる、転職もできる、さてあなたはどうしたいのでしょうか、どうすると良いのでしょうか。
今回は「転職した方が良いのかな?」と思う理由を2つ取り上げて、考えていきます。他にもあるよーという方は、フォームからぜひ教えてくださいね。
転職した方が良いと思う理由(1)「このままだと成長できないのでは、という不安」を考えてみる
(1) 同じことの繰り返しになってきた。このままだと成長できないのでは、という不安
(2) やりたい業務があるのにできない、という不満
それではまず、(1)から、考えてみましょう。
「このままだと成長できないかもしれない、という不安」が生まれたら…
今の職場での毎日の業務に慣れて、誰かの指示がなくても動ける皆さんは、新しい知識や技術が得られることが少なく、成長が止まってしまったような気持ちになることもあるかもしれません。
確かに毎日同じ職場で働いていると同じことの繰り返しに感じてしまうこともありますよね。
ところであなたは、今行っている業務に対して「なぜこれをするんだろう?」と考えながら取り組んでみたことはありますか。その「なぜ」の答えを「院長(先輩)に聞いたから」、という説明ではなく、根拠を持って自分の言葉で説明できるでしょうか。もし考えたことがなかったら、あるいは「自分の言葉で説明は難しいな…」と思ったら、ぜひやってみてください。
「なぜこれをするんだろう?」を考えると見えてくること
例えば、「ただただクリーニングをしている」と思っているとしましょう。
でも、皆さんが担当している患者さんの口腔内は日々同じではありませんよね。
自分の担当患者さんの問題点を整理して、それを良くするために歯科衛生士として関わり、その後の変化や結果を見ていく。
そんなふうに見方が変われば見え方が変わります。
私は新人歯科衛生士の頃、小学校中学年くらいの患者さんの上顎6番頬側の白濁の変化を、1ヶ月ごとの来院のたびに、その部分だけ口腔内写真を撮影させていただいたことがあります。処置の内容と共に変化を記録し、比較したことで、セルフケアの必要性や歯科衛生士としての処置の効果、フッ化物の有効性等を自身のスキルとして落とし込むことができました。
もし定期的に全顎的なポケット測定や口腔内写真、エックス線写真の撮影ができなかったとしても、気になる部位だけでも何かしらの記録を取ることで、自分の処置の効果を客観的に確認することができますよ。
このように、積み重ねてきた知識や技術を客観的に整理し直してみると、それが今の職場のみでしか通用しないものなのか、どこでも通用するものなのかがわかり、国家資格である「歯科衛生士」としての自信につながります。
また、案外着実に成長できているな、とか、自分はこれに興味があるからもっとできるようになりたいな、ということに気づけるかもしれません。転職をする上での「強み」や「志望動機」を明確にすることにもつながりますね。
転職した方が良いと思う理由(2)「やりたい業務ができない、という不満」を考えてみる
やりたい業務があるのにできない、という不満が生まれたら…
「今のままこの職場にいてもやりたいことができない」と思うこともありますよね。
その「やりたいこと」は、その医院にいたらずっとできないことなのか、今すぐできないだけでいずれやらせてもらえるようになるのか、もポイントです。
同級生と話していると、「もうそんなことしているんだ」「私はまだ教えてもらえない」と焦ることもあるかもしれません。けれど、教育制度がしっかりしている環境で一つ一つ着実に身につけているからこそ、今はまだできない、ということもあると思います。
この場合は、今すぐ転職などと焦らず、先輩たちの姿を見て、「〇年目までに◎◎ができるようになる」といった目標を立ててみてはいかがでしょうか。将来の自分像のイメージが見えてきませんか。「今は〇年後に◎◎ができるようになるために、基礎スキルを身につけているところ」という現在地がはっきりしてきますね。
それでは次に、「今の医院にいたらずっとできない(あるいは難しい)」場合はどうでしょうか。
「今の医院にいたらずっとできない(あるいは難しい)」場合はどうする?
例えば、
歯周病ケアをしっかりやっていきたいのに、その職場では「ハンドスケーラーを使わない」
等明確にできない環境にあり、医院で相談しても導入が難しいこともありますよね。その場合は転職を考える必要もあると思います。けれどその場合、転職した先で同じことにならないようにしなければなりませんね。
そのためには、
まず、自分がこれから大切にしていきたいこと、成長していきたい方向性を考えて整理してみましょう。
例えば、上で挙げたように、歯周病ケアをしっかりやっていきたいのに、その職場では「ハンドスケーラーを使わない」という状況だったケースを考えてみましょう。
私が大切にしたいこと | 今不足していること | 不足している理由 |
---|---|---|
歯周基本治療ができるようになりたい | ・医院が歯周治療に力を入れていない | ・医院で必要な治療の流れができていないから |
適切な歯周治療をしたい | ・歯周治療の症例の記録資料等が取れない | ・医院に必要な器具がないから |
歯周治療の認定が取りたい | ・歯周治療の勉強会に行けていない | ・自分からの情報収集が足りていないから |
自分がこうしていきたいと思うこと、今なぜ物足りなさを感じているのかを整理していくと、それが「職場」の問題か、「自分」の問題かが見えてきます。
それが「職場」の問題だった場合、転職先の職場に望むポイントも同時に整理できてくると思います。
また、今の環境ではできないと思っていたけれど、自分が何か行動を起こしてみないと本当にできないかどうかわからない、今の時点では決められないことも出てくるかもしれませんね。
「職場」の問題で、転職を考えてみよう、となったときは、見学や面談でそれを伝えて相談してみる、実現可能な環境かをよく見てくる、ということが重要ですよ。
例えば、
★自分の進みたい方向性と合った取り組みをしているかどうかを確認するには…
- 自分の進みたい方向性「歯周基本治療ができるようになりたい」
- 確認方法(1):初診患者さんの診療の流れを、アポ帳を見せていただいたりお話を伺ったりして確認する
- 確認方法(2):どのような器具・器材を使っているか見せていただく。ハンドスケーラーは個人の管理か、使用できる超音波スケーラーのチップの種類を聞いてみる、など
★医院と同じ方向を向いて貢献したいと思えるかどうかを確認するには…
- 確認方法(1):院長やスタッフの皆さんがどんな目的に向かって日々診療をしているか、お話を伺ってみる
- 確認方法(2):患者さんとの会話やスタッフ同士の会話などを観察してみて、共感できるか考えてみる
転職するかどうかを決める前に、“自分に質問”してみよう
仕事を始めて2~3年、慣れてくるとこのままで良いのかな、という風に悩むこと、ありますよね。実際第1回目で書いたように私自身もそのような想いから転職をしたこともあります。
私が自分のキャリアを前向きに受け入れられるようになるまで|キャリコン歯科衛生士のお悩み相談室#1
そんな時に大事なのは、転職するかどうか、ではなく、「どうして転職した方が良いと思っているのか」です。
それを掘り下げていくと
- 実は自分が気づいていないだけで大きな問題ではなかった
- 自分のやりたいことが見えてきた
- 自分のやりたいことを実現できる、「自分に合った」医院を探す軸が見えてきた
など「転職するべきか」はもちろん、働く上で大事なこともたくさん見えてきます。
「なんとなくモヤモヤしてる」という方も多いと思います。ぜひ、自分の気持ちに向き合って「どうしてそう思っているのかな」「将来はどんな自分でいたいのかな」ということをゆったりした気持ちで考えてみてください。
自分で自分の気持ちに対して「なぜなぜ」と会話し、それを紙に書き出してみるのも一つの手。
自分一人で整理するのは難しいので、親しい先輩などに「なぜなぜ」に付き合ってもらってもいいかもしれません。もちろん、うまくいかなかった時や近くの人に相談するのが心配な場合は、キャリアコンサルタントに相談する、というのも良いのかな、と思います。
こんな感じで「なぜなぜ」を考えてみよう!
あなたがどのような選択をしても、それをあなた自身が納得して受け入れられる道になることを、応援しています。
キャリアのお悩み相談をしたい歯科衛生士さん
「キャリコン歯科衛生士のお悩み相談室」著者の冨澤さんに悩みを聞いてほしい、何か相談したい!という方はぜひこちらのフォームからご連絡ください