“地域密着型医院”の魅力って?|歯科衛生士知っとこ!職場の見極め塾#21
こんにちは!ライターのヤナギです。 これまでに10年以上、クオキャリアでたくさんの歯科医院を訪問したり、記事を執筆したりしてきました。
その経験から、歯科衛生士の皆さんに「自分に合った職場を選ぶためのヒント」をご紹介します。
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目次
歯科衛生士に人気の“地域密着型医院”
歯科衛生士としてどんな働き方がしたいかを考えたときに、「地域に密着した医院で働きたい」と、漠然と希望している人も多いでしょう。
“地域密着型”は、歯科衛生士に人気のキーワードです。
そこで今回は、“地域密着型医院”とはどんな歯科医院のことなのか、また、歯科衛生士にとって、地域密着型医院で働くことにどんなメリットがあるのかを詳しく見ていきたいと思います。
“地域密着型医院”とは?
実は歯科の分野で、“地域密着型”の明確な定義はありません(ちなみに介護の分野では、「地域密着型サービス」という分類が設けられています)。
一般的に“地域密着型医院”とは、「その歯科医院の近隣の住民が、お口に関して困ったことがあるときに最初に相談する先」というイメージです。
「かかりつけ歯科医院」と言い換えても良いでしょう。
“地域密着型医院“と対照的な存在の一つが、「病院の口腔外科」です。
例えば、親知らずの難しい抜歯など、かかりつけ歯科医院ではできない高度な治療を病院で行い、一通りの処置が終わったら、またかかりつけ歯科医院でアフターフォローをするというケースがよく見られます。
「病院の口腔外科」は多くの場合、特定の処置のために、短期間だけ通院する場所となります。
もう一つ、“地域密着型医院”ではないものとして挙げられるのが、「審美歯科専門医院」「矯正歯科専門医院」といった、専門性の高い歯科医院です。
大型駅の近くなど、利便性の高い立地にあることが多く、「ホワイトニングがしたい」「矯正がしたい」といった、ピンポイントのニーズに応えることが特徴です。
こうした病院や専門医院も一定数あるものの、数で言うと、全国に68,000軒ほどある歯科医院の大半は、“地域密着型”に分類されます。
歯科衛生士が地域密着型医院で働くメリット
では歯科衛生士が地域密着型医院で働く場合、どんな「良いこと」があるのかを見ていきましょう。
患者さんとのコミュニケーションが密に取れる
地域密着型医院では、患者さんの家族全員を同じ歯科衛生士が診ていたり、近隣のお店の話題で話がはずんだりと、患者さんとスタッフの距離が近いことが大きな特徴です。
そのため、一歩踏み込んだカウンセリングや、生活背景を踏まえた指導がしやすくなります。
また、このように医院と患者さんとの信頼関係ができていることは、新人歯科衛生士にとって特に大きな安心材料になります。
例えば、初めて処置を行うときに、先輩がなじみの患者さんに「新人なのでよろしくお願いします」と紹介してくれたり、患者さんが「練習台になるからね」と言ってくれたりすることもあります。
患者さんを長期的に診られる
最初は子どもだった患者さんが、診ていくうちに徐々に成長し、大人になって、さらにその子どもを連れてくる、などというのは、地域密着型医院ならではの光景です。
歯科衛生士として大きな喜びを味わえることはもちろん、症例を長期的に見る目も養えて、スキルアップにつながります。
予防型の診療ができる医院が多い
最近では、地域密着型医院の大半が「予防歯科」に力を入れています。
特に痛いところがなくても、定期的にメンテナンスに通ってもらうスタイルを取っているところが多いです。
そういった医院では、歯科衛生士が予防歯科で活躍できるでしょう。
症例が幅広い
先ほど述べたように、地域密着型医院は「お口の悩みの最初の相談先」です。
そのため、虫歯や歯周病、審美、噛み合わせ、義歯、インプラントなど、扱う診療分野が多岐にわたります。
患者さんの年齢層も、地域による偏りはありますが、子どもから高齢者まで幅広いことが多いです。
こうした環境だとさまざまな症例を経験できるので、着実にスキルアップが図れます。
近隣に住んでいるスタッフが多く、心強い
地域密着型医院では、患者さんだけでなく、スタッフも医院の近くに住んでいることが多いです。
特に、就職を機に一人暮らしを始めるケースでは、スタッフ同士で地域の情報交換ができたり、いざというときに頼れる人が近くにいたりすることが心強いでしょう。
「これぞ、地域密着型医院!」のエピソード
“地域密着型医院”に分類される歯科医院の中でも、患者さんとの距離の近さは、医院によってある程度の差があります。
これまで私が取材をした中で、「まさにここは、地域に根ざしている医院だな」と感じたエピソードや風景を紹介します。
診療の予約が入っていないときに、患者さんが立ち寄って差し入れをしてくれる
旅行のお土産、ちょっとしたおやつ、さらにはお弁当など、まるで「近所のおばちゃん」のように、患者さんが差し入れをしてくれる医院もあります。
近隣の方々にとって、それほど「気軽に立ち寄れる場所」になっているのでしょう。
待合室で、患者さんとスタッフが世間話で盛り上がっている
ユニットで話が盛り上がっている、というのは、割とよくある光景です。
でも、スタッフ(ときにはドクターも!)がわざわざ待合室まで出てきて、患者さんと楽しそうに立ち話をしている様子からは、「アポイント時間だけでは話し足りないくらい、仲が良い」「診療に関係なく、ざっくばらんに話ができる」という密な関係性が伝わってきます。
待合室に、患者さんの撮った写真や、手作り品が飾ってある
ある医院の待合室には、患者さんが撮った風景写真と写真集が置いてありました。
また別の医院では、季節ごとの飾りを患者さんが作って持ってきてくれるそうです。
こうした医院では、歯科医院が、「院長やスタッフのもの」ではなく、「地域のもの」になっているように感じます。
スタッフが結婚するときに、患者さんがお祝いをくれた
スタッフが患者さんのことを知りたいと思うのは仕事上の自然な流れですが、逆に患者さんがスタッフのバックグラウンドに興味を持ってくれ、さらにそれをお祝いしてくれるというのは、深い信頼関係が築けていることの表れです。
患者さんとスタッフが、本の貸し借りをしている
これは、読書好きのある歯科衛生士さんから聞いた話です。
数ヶ月ごとの定期検診のたびに、患者さんがおすすめの本を数冊持ってきてくれ、その歯科衛生士さんは次回の検診までにその本を読んで、患者さんに感想を伝えているのだそう。
歯科衛生士さんの方から「こんな本が読みたい」とリクエストを出すこともあるそうで、本当に仲が良いんだなあと心が温まりました。
こうしたエピソードに共通しているのが、スタッフと患者さんが、その立場や関係性を超えて、「人」と「人」のお付き合いをしているということです。
スタッフと患者さんが「この人のために頑張りたい」とお互いに思い合うことで、口腔衛生の面でも良い結果が生まれるのではないでしょうか。
なぜ、地域密着型医院で働きたいのかを考えてみよう
「地域に密着した医院」について、理解が深まったでしょうか?
多くの歯科医院が“地域密着型医院”に該当するだけに、「地域に密着して働きたい」というだけでは、職場選びの際に候補を絞り込めないでしょう。
でも、自分が「地域密着型医院のどんなところに魅力を感じているか」が明確になれば、譲れない条件や、見学でチェックすべきポイントが見えてくるはずです。
また、「病院の口腔外科」や「専門医院」と比較してみることも、「なぜ地域密着型医院で働きたいのか」を考えるための、有効なプロセスになりそうです。
この記事が、「自分はどんな職場で働きたいか」をよりクリアにするための手助けになればうれしいです。
ライター、インタビュアー
2010年よりクオキャリアのさまざまな媒体で歯科医師・歯科衛生士の取材や、求人原稿・インタビュー記事の執筆など、のべ6,000件以上を担当。歯科業界の採用事情に精通している。