歯科衛生士と歯科助手、どこがどう違う? 働きやすさに違いはある?

歯科医院では、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手の3つの職種が働いていることが多いです。
治療を受ける患者さんからは、「歯科医師の治療をサポートしているスタッフ」として、歯科衛生士と歯科助手が混同されていることもしばしば。
両者が同じような仕事に携わる場合もあるため区別がしにくいですが、実はこの2つの職種には、大きな違いがあるのです。
この記事では、その“違い”について詳しくご説明します。

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歯科衛生士と歯科助手の基本的な違い

歯科衛生士 歯科助手
資格
(国家資格)
不要
(公的資格なし。民間の資格はあるが、必須ではない)
修業年数 指定の養成校(専門学校や短大、大学)で3年以上学ぶ必要がある 法的定めはなし
歯科医療行為 できる
(歯科衛生士法で定められている範囲で)
できない
仕事内容 歯科予防処置
歯科保健指導
歯科診療補助
(歯科医師の指示に基づいて医療行為を行う)
受付業務
カウンセリングや患者誘導
診療準備や清掃など
歯科診療補助
(医療行為は禁止)
平均年収 約387万円 300万円前後

※歯科衛生士の年収は「令和3年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)」より算出

歯科衛生士は国家資格だが、歯科助手には特に資格はない

一番の違いは、歯科衛生士は国家資格を持つ専門職だということです。
歯科衛生士は、厚生労働省が管轄し、歯科衛生士法という法律で定められている資格です。
国家試験に合格して初めて、歯科衛生士と認められます。

一方、歯科助手には資格は必要なく、歯科助手として歯科医院などに採用されれば、それだけで歯科助手になれます。
日本歯科医師会の歯科助手資格認定制度など、民間の資格もありますが、歯科助手として働くために必須ではありません。

歯科衛生士になるには養成校に通う必要があるが、歯科助手は学歴不問

歯科衛生士になるためには、厚生労働省が指定する養成校(専門学校や短大、大学)で3年以上学ぶ必要があります。
解剖学や生理学といった人体の基礎知識から、実際に病院などで行う臨床実習まで、専門的な教育を経て、歯科衛生士になれるのです。

歯科助手の場合は、学歴に特に決まりはありません。
数ヶ月〜1年制の「歯科助手養成コース」を設けている専門学校や通信教育機関などはありますが、一般の高等学校や短大、大学を卒業しただけでも、歯科助手として働くことは可能です。

歯科衛生士は医療行為ができるが、歯科助手はできない

このように、歯科衛生士と歯科助手では持っている知識や専門性が大きく違うため、認められている業務範囲が異なります。

歯科衛生士は、歯科衛生士法で定められている範囲で、患者様に対する「歯科医療行為」が行えます。
一方で歯科助手は、歯科医療行為は一切できません。
「歯科衛生士は患者様の口の中を触れるが、歯科助手は触ってはいけない」と考えると、業務範囲がわかりやすいでしょう。

仕事内容はどのように違う?

歯科衛生士 歯科助手
仕事内容 歯科予防処置
歯科保健指導
歯科診療補助
(歯科医師の指示に基づいて医療行為を行う)
受付業務
カウンセリングや患者誘導
診療準備や清掃など
歯科診療補助
(医療行為は禁止)

歯科衛生士の主な仕事は「予防処置」「保健指導」「診療補助」

歯科衛生士の主な仕事内容は3つあります。
「歯科予防処置」「歯科保健指導」「歯科診療補助」です。

<歯科予防処置>
歯や歯茎の検査、汚れや歯石の除去、薬の塗布などによって、虫歯や歯周病をはじめとしたお口の疾患を防ぐことです。

<歯科保健指導>
歯磨きや食生活のアドバイス、摂食・嚥下訓練など、患者様にさまざまな指導を行うことです。

この「歯科予防処置」と「歯科保健指導」を通して、患者様のお口の健康維持をサポートすることが、歯科衛生士の仕事の“要”です。
“治療のプロ”である歯科医師に対して、歯科衛生士は“予防のプロ”と呼ばれることもあります。

<歯科診療補助>
歯科医師の治療のアシスタント全般も、歯科衛生士の重要な仕事です。
これには、器具の準備や唾液の吸引など、お口に触らずにできることと、印象(歯型)の採得や矯正器具のつけ外しなど、お口の中を触る業務の両方が含まれます。また一般的な治療以外に手術を伴う治療のサポートをすることもあります。

なお歯科医院によっては、歯科衛生士は「歯科予防処置」と「歯科保健指導」のみ行い、「歯科診療補助」は原則として担当しない、と言う場合もあります。

上記3つの仕事のほかにも、職場によっては、患者様へのカウンセリングや受付業務、器具の滅菌や清掃、材料の管理などを担う場合があり、歯科衛生士の業務は医院ごとにさまざまです。

歯科助手は、歯科医院内の幅広い業務を担っている

歯科助手は医療行為以外の部分を幅広く担当しますが、代表的な業務をいくつかご紹介します。

<歯科診療補助>
先ほど「歯科衛生士の仕事」としても出てきた、歯科医師の治療のアシスタント業務です。
ただし歯科助手が行えるのは、器具の準備など、患者様のお口に触らずにできることのみ。
歯科衛生士が行う「歯科診療補助」よりも狭い範囲です。
また、歯科衛生士による予防処置のアシスタントをすることもあります。

<受付業務>
受付業務は、専任スタッフを置いて診療補助業務と分業している場合と、歯科助手が兼務している場合があります。
受付業務の具体的な内容は、対面での患者様対応や電話対応、カルテの管理、会計などです。
これらの業務は現場で学ぶこともできますが、医療事務や接遇マナーに関する知識を持っていると役立ちます。

<カウンセリングや患者誘導>
待合室から診療室へ患者様を誘導したり、処置の合間に声をかけたりと、患者様との接点が多いのも、歯科助手の仕事の特徴です。
職場によっては、患者様へのカウンセリングを歯科助手が行っている場合もあり、「トリートメントコーディネーター」などの民間資格を取得して活躍している歯科助手もいます。
「治療中は緊張して話せない」という患者様も多いので、そういった方の“本音”を拾い上げる大切な役割を担っていると言えるでしょう。

<器具の滅菌や院内の清掃業務>
歯科医院の診療では、さまざまな医療器具を使用します。
これらは患者様ごとに消毒や滅菌を行い、常に清潔な状態で準備しておく必要があります。
この業務を歯科助手が担っている歯科医院も多いです。

そのほか、材料の管理や発注、資料作成、外部業者の対応などを行うこともあります。
歯科医院内の幅広い雑務を担当しているのが歯科助手と言っても良いでしょう。

なお、歯科助手の仕事自体は専門性の高さが求められるわけではありませんが、その分逆に一人ひとりの経歴やスキルが活かせることも多いです。
例えば、外国語が話せたり、パソコンスキルが高かったり、人をまとめる能力に長けていたりと、何らかの“強み”を持っている人は、資格を持っているわけではなくても、歯科医院の中で「いなくてはならない人」として活躍できます。

お給料に違いはある?

歯科衛生士 歯科助手
平均年収 約387万円 300万円前後

業務の専門性の高さの違いは、お給料の金額にも表れています。

歯科衛生士の平均年収は、約387万円です(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より算出)。
一方で歯科助手の平均年収は職場によって大きく幅があり、平均すると300万円前後のようです。

歯科衛生士の場合は「衛生士手当」が支給されたり、業務内容によってインセンティブ(歩合給)が加算されたりするため、歯科助手より高くなる傾向があります。

歯科助手から歯科衛生士になるには?

歯科助手から歯科衛生士を目指す人も多い

実は、歯科衛生士として働いている人の中には、「以前は歯科助手をしていたけれど、資格を取って歯科衛生士になった」という人も多いです。

ここまで見てきたように、歯科助手と歯科衛生士では、仕事内容や給与、安定性などが大きく違うため、歯科衛生士に魅力を感じてキャリアチェンジをする歯科助手もたくさんいるのです。

働きながら歯科衛生士の資格を取ることもできる

こうして「歯科衛生士になろう」と決意しても、今の仕事を辞めるとなると、経済的に学校生活を続けられるか不安ですよね。
実は、歯科助手をはじめ他の仕事をしながらでも、歯科衛生士を目指すことは可能です。

歯科衛生士養成校には「夜間部」を設けている学校もあり、仕事と学業の両立を支援しています。
例えばある学校では、「17:30〜20:40」という時間帯で授業が行われるため、仕事が終わった後に通学することができます。

歯科助手として働いている場合は、勤務時間の融通を利かせたりと、職場として歯科衛生士の資格取得を応援してもらえることが多いようです。
歯科治療の内容や用語も、歯科助手の仕事の中である程度把握していますから、学校での勉強も理解しやすいでしょう。

また、夜間部は昼間部に比べて学費が安いというメリットもあります。
さらに、各種奨学金制度を利用できる場合もあるので、金銭面での負担を抑えながら資格取得を目指せます。
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まとめ 歯科衛生士と歯科助手には、それぞれの役割がある

歯科衛生士と歯科助手の違いが理解できたでしょうか。

まとめると、「予防のプロ」として、専門的な知識を活かして働くのが歯科衛生士。
一方で歯科助手は、歯科医師や歯科衛生士、そして患者様のサポート役として、院内の幅広い業務を担っています。

給与や条件に差はありますが、大切なのは「自分にはどんな仕事が合っているか」。
歯科衛生士の仕事に興味が湧いた人は、ぜひこちらもチェックしてみてください。

 

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