「興味がある」ならやってみよう!|先生の履歴書《明海大学》

歯科衛生士養成校の先生は、学生を指導する立場であると同時に歯科衛生士としての“先輩”でもあります。
この連載では先生に、ご自身のキャリアを振り返っていただきながら、歯科衛生士という仕事の魅力や可能性についてお聞きします。

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先生紹介

金久 弥生 先生

明海大学 保健医療学部口腔保健学科 教授

広島歯科衛生士専門学校(1990年卒)/病院と開業医への勤務を経験後、要介護高齢者複合施設在籍中に学位[学士(教養)、修士(マネジメント)、博士(歯学)]を取得。その後一念発起し、生まれ育った広島を出て九州歯科大学にて大学教員の職に就き、神戸常盤大学短期大学部の教員を経て現職。趣味は音楽鑑賞。好きなことは猫と遊ぶこととスイーツを食べること。

学生たちには物事を広く多面的に捉えられるようになってほしいと、自分で考える力を奪わないアプローチを心がけている。

「興味がある」ならやってみよう!

卒業間際に進路変更 ロールモデルに出会う

高校時代は勉強が大の苦手でした。だから大学に行く選択肢はなくて、何か人の役に立つ仕事がしたいという漠然とした気持ちで歯科衛生士専門学校へ。そのころは将来大学で教えるなんて、まったく想像できませんでした。

卒業後はアルバイト先の歯科医院に就職するつもりだったのですが、卒業間近に広島大学歯学部附属病院の求人があり、「大学病院ってどんな感じなんだろう」と興味を持ち入職しました。配属は予防歯科診療室。そこで新卒の私に歯科衛生士のいろはを教えてくださったベテラン歯科衛生士と出会えたことが、今でも大きな財産になっています。

その先輩と同じ歯ブラシを使って同じように歯磨きをしても患者さんから「全然違う」と言われてしまう、お手本のような方で。技術はもちろん、患者さんから選ばれる大切さと難しさ、歯科衛生士としてのあり方や社会的役割についてなど、今の私につながる多くのことを学びました。

当初は、大学病院への就職は自分には難しいかなと不安も感じていました。でも「興味がある・やってみたい」という思いを優先したおかげで素晴らしい出会いがあり、この選択をして本当によかったと思っています。

施設初の歯科衛生士 未知の世界に飛び込んだ

3年間ほど勤めた後、一般歯科を経て要介護高齢者複合施設に入職しました。実は私はその施設の歯科衛生士第1号。入職前は「その分自由にできるかも」なんて考えていました。本当に事の重大さを理解していませんでしたね。若かったです。

いざ臨床現場に入ると、私だけでなく周りの人たちも「歯科衛生士さんに何をしてもらうの?」状態。今ほど他職種連携が一般的でなく、いきなりやってきた歯科衛生士の扱いに困っていたと思います。

まずはできることをやろうと、施設利用者さん約500名の口腔の状態を確認し、歯科衛生士記録を作成。口腔衛生管理に加えて看護師や歯科医師への橋渡しなどを行いました。1年、2年と経つうちに少しずつ口腔の健康の重要性を理解してもらえるようになりましたが、まだ充分とはいえませんでした。

100の主張より1の研究調査

転機になったのは、米山武義先生による研究調査への協力です。テーマは口腔ケアと肺炎の関連性。この調査結果により、専門的な口腔衛生管理による肺炎予防効果が明らかとなり、「口腔ケア」という言葉が生まれました。

すると、職場の口腔ケアに対する意識が急速に変わったんです。私が「ずっと叩いてきたけれど開かなかったドア」が、研究成果により一気に開いたと感じました。客観的なデータや数字の力を痛感しましたね。この経験が、大学院に進んだ理由の一つ。研究を通じて歯科衛生士という職業を考えることで、次の時代につながると考えたんです。

大学院修士課程では社会科学研究科を選択したおかげで、自分がいかに「歯科の常識」で考えて患者さんに接していたのかに気づかされました。私が当たり前だと思って説明すらしなかったことこそ、実は患者さんが知りたいことだったんだと反省したこともあります。

さまざまなバックグラウンドの人と接する機会があったことも、新しい学びにつながりました。その後歯学博士を取得し、その経験を生かして大学、短大で教鞭をとることになりました。

※Yoneyama T,et al:Oral care and pneumonia,Lancet,354:515,1999. 全国6ヶ所の特養入所者を対象に行った口腔ケアと肺炎に関する研究調査

人との出会いと 少しの勇気が未来をつくる

2018年からは明海大学の口腔保健学科立ち上げに加わりました。学生教育に携わるほか、日本歯科衛生教育学会やその他所属学会、養成機関の協議会に関わるなど社会的な活動にも参加しています。

ずっと先の目標ですが、「歯科衛生士が歯科衛生士を育てていく」教育環境をつくることが私の夢です。口腔保健学はまだ発展途上です。でも私は歯科衛生士の社会的役割の大きさを信じています。看護学部のように歯科衛生士の教授が複数いて、その中に領域とか分野とか講座のようなものがあるー。いつかそんな教育の場を実現できたら、と夢見ているんです。

皆さんこれから社会人になると、受け身ではなく、主体的・自律的であることが求められます。日々の業務に流されず、あなた自身がやりがいを感じる仕事や業務を早く見つけてほしいと思います。憧れを感じる人や尊敬できる人との出会いは、その近道になるでしょう。

私自身、広大診療室時代に出会った先輩の姿に、「彼女のような歯科衛生士になりたい」と思ったことからここまでこられました。当時若くて何も知らなかったからこそ、未知の世界に飛び込めて多くの出会いに恵まれました。だから皆さんにも、少しでも興味を持てることがあったらまずは話を聞いてみてほしいです。やるかやらないかは、それから判断すればいい。そしてできればチャレンジしてほしい。自分で自身の可能性を広げ、歯科衛生士のライセンスを楽しく生かしてください。

明海大学では2023年、口腔保健学科1期生の卒業を予定している。

学校情報

学校法人
明海大学[千葉県浦安市]

2019年、東日本の私立4年制大学で初となる歯科衛生士養成課程を開設。複数の学部を設置する総合大学のため、歯学部との連携をはじめ他学部との交流で知見を広められる。
★学校HPはこちら

*こちらは、2022年2月発行「就活BOOKクオキャリア春号」掲載記事を再編集したものです。掲載情報は取材時のものとなります。

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