大変だった臨床実習、私はこうやって乗り切った
こんにちは。ライターの斎藤充博です。
うちの妻は歯科衛生士です。一般の企業で働いていたのですが、会社に行きながら専門学校に通い、歯科衛生士になりました。
専門学校に行っていたときの妻はとても大変そうだったのですが、なかでも大変そうだったのは「臨床実習」です。臨床実習のなにがそんなにつらかったのか? そして妻はどうやって乗り切っていたのか? 改めて話を聞いてみることにしました。
目次
労働している気分になりがちだけど…。臨床実習は「実地に勉強に行く」こと
ミツヒロ というわけで、今日は臨床実習の思い出を教えてほしいんだけど。
妻 臨床実習の思い出~? あれは本当に……本当に……。
ミツヒロ のっけからつらそうですね。
妻 いや、本当に大変だったので。
ミツヒロ そもそも臨床実習ってなに? クオキャリアのブログを読むような人はみんな知っていると思うけど、改めて教えてほしい。
妻 一言でいうと、歯科衛生士の専門学校の学生が、歯科医院や大学病院などに行って、実地で勉強することだよ。
ミツヒロ なるほどね。医療従事者である以上、必要なことだ。
妻 うん。ただね、「勉強」に行くのは間違いないんだけど、なんとなく学生としては「労働」しているような雰囲気もある。
ミツヒロ 職場にいる以上、そうなるのはなんとなく想像がつく……。
妻 学校からは「勉強させていただくという気持ちで行きましょう」とは言われているんだけど、なかなかずっとそういう気持ちを保っているのも大変な部分はあるよね。どうしても(笑)。
ミツヒロ まあ、そうだろうね。ちなみに、学校は「夜間部」なのに、臨床実習は昼にやるから、妻はこの時点で会社を辞めていたよね。
妻 辞めざるを得ないよね。これは本当にしょうがないことだと思うよ。
ミツヒロ 妻は2年生のときに行っていたけど、みんなそのくらいの時期に行くのかな?
妻 おそらく、臨床実習に行く時期は学校によって違うんじゃないかな? 気になる人はちゃんと調べたり、学校に質問した方がいいと思う。
歯科医院はそれぞれ。どんなところに当たるかはわからない
妻 臨床実習で、私は4件の歯科医院に行ったよ。それぞれ2カ月間くらい。そこでわかったことがあって。「この世の中には本当にいろいろな歯科医院がある」ってこと。
ミツヒロ そんなにいろいろあるの? 素人のおれには普通の虫歯治療をしている歯科医院と、矯正をメインにしている歯科医院くらいかなと思ってた。
妻 そうだよね。私もそう思っていたんだけど……。
1.マッサージ院を併設している歯科医院
妻 私が最初に行ったところは、マッサージ院を併設している歯科医院だったんだよ。歯科医院で口の中をみるでしょう? そこで東洋医学的な考え方に基づき、必要があればマッサージ院に行ってもらう。
ミツヒロ そんなのあるんだ! おれの本業は指圧師だけど、マッサージ業界的にも「歯科医院」と連携しているって聞いたことない。
妻 そうでしょう。歯科衛生士の業務自体は別に特別なことをやるわけじゃないけど、「こんな歯科医院もあるんだ!」ってびっくりしたよ。
2.超大物芸能人がアポなしでひょいと現れる歯科医院
妻 次に行ったところは、都心にある審美をメインでやっている歯科医院。
ミツヒロ 審美っていうのは、歯を白くするとか、そういうことかな。
妻 そうそう。ここは歯科衛生士も相応のホスピタリティが求められる。歯科衛生士というより、エステティシャンのような対応。大変だったけど、なかなか勉強になったな~。ここは芸能人がいきなり来たりするんだよね。テレビで誰でも見たことのある大御所バラエティ芸人とか。
ミツヒロ へー。誰?
妻 守秘義務があるので、それは言えません。
3.問題のある歯科医院
妻 次に行った歯科医院は問題があるところで……。歯科衛生士や歯科医師は、治療のときに使い捨てのグローブをつけるんだけど、そのグローブを使い回していたんだよね。
ミツヒロ ウワー。素人でもダメってわかる! そういう基本的なところでよくない歯科医院は、他にもいろいろ問題がありそうだな。
妻 本当にその通りで、いろいろありました……。ここは学校にちゃんと報告しておいたよ。もう実習先から外されるようになったはず。
4.団地の中にある「普通」の歯科医院
妻 最後に行ったのは団地の中にある歯科医院で、ここは比較的「普通」だったかも。保険診療メインで、近所の人が治療や定期検診に来る。
ミツヒロ ここまで聞いているとなにが「普通」なのかだんだんわからなくなってくるけど……(笑)。本当に歯科医院はそれぞれってことがわかるね。
妻 本当にそうだよね。ちなみにどの歯科医院も実習が終わる頃には「卒業後はぜひウチに就職して!」って言われるけど、「ちゃんと自分で選ぼう」という気持ちになる(笑)。
実習で大変だったこと。歯科材料、実習ノート、理不尽な扱い
ミツヒロ もう少し、大変だった思い出を聞かせてください。
妻 まず思い出すのが「歯科材料」の取り扱いだよね。たとえば、治療の時にセメントのような材料を使うんだけど、これはすごく高価なもの。それに取り扱いが初心者には難しいんだ。ちょっとした加減で、固まるのが速くなっちゃったり……。
妻 あとは、同じように歯科材料を使う話だと、印象を取るときはすごく緊張したな~。いまでも本印象は緊張するかも。
ミツヒロ 印象とか本印象ってなに?
妻 うーん。ミツヒロには説明が難しいな……。クオキャリアを読んでいるような人なら、全員わかると思うよ。歯の型をとることだとざっくりと思ってくれればいい。
ミツヒロ そうなんだ……。
妻 あとは実習終わった後に「実習ノート」を書いて、実習先の歯科医院に提出しなくちゃいけないんだよね。
ミツヒロ まあ、実習だもんね。
妻 そこに「反省欄」があるんだけど、毎日やっていると、特に書くことがない日もたくさんあって。だけど「反省することは特にありません」とは書けないじゃない? だからどうにかしてひねりだす。あれはつらかった……!
ミツヒロ なんというか、学生っぽい悩みだ。
妻 あとは、理不尽な扱いをしてくる実習先もあるから。
ミツヒロ そこは学生の立場だと耐えるしかないのかな……?
妻 あまりにもおかしい場合は、学校に報告するのもアリだと思う。さっきの「グローブを交換しない歯科医院」は実習生の扱いもひどかったんだよ。
ミツヒロ やっぱり余罪があったんだ……。
私は実習をこうやって乗り切った
ミツヒロ 妻は大変な実習をどうやって乗り切ったんだろう?
妻 大変なんだけど、これがずっと続くわけじゃないから。資格を取れば、仕事には困らないし、人生におけるメリットが大きいよね。だから「とにかく資格を取るため」と思って、耐えることだよ。
ミツヒロ なるほどね。それは確かにそうだね……。
妻 あとは、同じ実習先に行っている実習生とは仲良くなった方がいいよ。帰り道ではげましあったりできるから。
ミツヒロ ちょっとしたことだけど、意外とそういうことが重要そうな気がする。
妻 私はこれで実習を乗り切れたけど、乗り切れなかったクラスメイトもいた。そういう人はいつの間にか退学しているんだよ。
ミツヒロ ……なんか切ないな。
妻 実習が始まると、学校に行く機会も少なくなる。たまに学校に行って「あれ? ○○さんはどうしたんだろう?」ってなって、そこで退学していることに気づく、という……。
ミツヒロ そんなの寂しすぎるだろ。クラスみんなで実習を乗り切りたいものだね……。
歯科衛生士になって思う。「こうしておけばよかった」
ミツヒロ 妻はもう歯科医院で実習生を受け入れる立場だよね? そこで思うことってあるかな?
妻 そうだね~。いま思えば、もうちょっと実習先の歯科衛生士さんと仲良くなっておけばよかったかもしれない。「仲良くなる」って言っても、ほんのちょっとしたコミュニケーションをするだけでいいと思うんだよ。それでお互いずいぶんやりやすくなるから。
ミツヒロ 学生の立場だと、ちょっと勇気が必要になりそうだけど、見返りはありそうだ。
妻 それから……。いま思えば、私は失敗におびえすぎていたのかもしれない。
ミツヒロ どういうこと?
妻 「歯科医院にいるんだからちゃんとしなくちゃ!」って思いがちなんだけど、やっぱり立場としては学生なんだから、ちゃんとできなくて当然という部分もあるんだよね。ぜんぜん気負う必要はない。
ミツヒロ 現役の歯科衛生士としてそういう実感があるのだとしたら、実習生もだいぶ気楽になりそう。
妻 逆に資格を取った現在は、そう失敗してはいけないとも思う。それが「公的な資格を持っている」ということの意味だから。だから、「学生さんは失敗できるうちにいっぱい失敗して
ください」って思うよ。
失敗してもいいから、精一杯学ぼう
というわけで、妻に聞いた「臨床実習の乗り切り方」でした。ひょっとしたら、これを読んでいる学生さんはこれから始まる臨床実習に緊張していたり、すでに臨床実習で大変な思いをしているのかもしれません。
妻は「いっぱい失敗してください」と言っています。これは、単なる一人の歯科衛生士の意見で、歯科衛生士の総意というわけではありません。実習先の歯科衛生士や歯科医師がこう思っているとは限らない。
でも、少なくともこういう風に言ってくれる人が確実に一人はいる……と思うと、多少は気がラクになるのでは?
この記事を読んでくれたあなたが臨床実習を乗り切って、歯科衛生士になってもらえたらいいなと思っています。
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