焦らずに、自分の歩幅でホンモノの力を身につける

臨床研修後は、開業医に就職するか大学に残るか、どちらかの道に進む人がほとんどでしょう。私が後者を選んだ理由は、まずは基礎を固めたかったから。臨床の流れの中で断片的に学ぶより、理論も含めて体系的に理解しながら治療に応用する方が自分に向いていると考えました。

大学病院では歯内療法学講座で、根管治療や歯周病などを研究しました。この分野を選んだのも、やはり「まずは土台の治療を極めたい」という考えからです。在籍した4年間で歯科保存を深く突き詰められましたが、その反面、視野が狭まっているようにも感じていました。

歯科医師としての私の長期的な目標は、オールラウンドなスキルを身につけ、患者さんを笑顔にすることです。歯科医師である父が、地域の患者さんから慕われている姿を目にするうちに、自然とそのような理想像を思い描くようになりました。

そこで、いよいよ大学を離れて、次のステージに進むことを決意。補綴に強い一般開業医を何院か経験し、義歯やインプラントなど、それまで触れる機会が少なかった治療に取り組みました。同時にマネジメント面での役割も増し、現在は分院長を任されています。基本的な治療はひと通り身につけたので、今後は外科や矯正などの専門性を高めて、ステージをもう一段上がりたいです。

振り返ると、最初の4年間を大学病院で過ごしたことで、「考える力」が自分の根源として身につきました。だからこそ、大学の外の世界に出ても、新しく得た知識を着実に自分のものにしながら、スキルを広げられているのだと思います。

私の選択軸は〝焦らない〞ことです。自分の歩幅をきちんと捉えて、一歩一歩確実に前に進むこと。そして、「10年後、どうなっていたいか」を考えて、今の過ごし方を決めること。当院で働いてくれる勤務医の先生に対しても、将来について一緒に考えながら、日々の成長をバックアップしたいと考えています。