真摯に患者さんと向き合い、納得してもらえる治療を

研修後は大学院へ進学し、根管治療を専攻。虫歯の原因となる菌の、どの遺伝子が影響を与えているかを調べるという研究をしていました。同時にアルバイトで勤務医も経験しました。院で学びながら働くというのは、実は〝いいとこどり〞。大学で専門分野を究めて自分の強みをつくれるうえに、実際の診療も経験できるからです。

しかし、最初に勤務した医院では自分の力不足で「良い診療ができていない」と感じることも多く、悩む日が続きました。それを見た友人が当院を紹介してくれ、理事長と話すことに。するとちょうど理事長も「根管治療に力を入れていきたい」と考えていたそうで、ぜひ来てほしいと言っていただけたんです。理事長は非常に勉強熱心で豊富な知識を持っているため、さまざまな治療を教えてもらえそうだと思い、アルバイトとしての入職を決めました。

大学院を卒業した後は、そのまま当院の常勤になりました。その理由は、とにかく「患者さんとじっくり向き合えるから」の一言に尽きます。時間に追われて診療するのではなく、アポイントの時間を延ばしてでも、ひとりの患者さんを丁寧に診る。当院は患者数が比較的多いのですが、どんなときもすべての歯科医師がこの精神を共有しています。

私が大切にしているのは、自分の歯がどのような状態なのか、なぜこうなっているのかを患者さんに理解してもらうこと。治療するのは歯科医師ですが、どうするか決めるのは患者さん自身です。そのために、いかに患者さんに納得してもらえるかを大切にしています。

大学院で学んだことは、もちろん日々の治療に生きています。歯の神経を取るべきか否か、すぐに判断できているのは、研究の期間があったからこそ。また論文を読み知識を得たことで、人間としても成長できたと感じています。今後も学んだことを社会に還元できるよう、常に研鑽を積んでいきたいです。