<1月の対策講座>国試前の追い込み! コスパのいい扁平上皮癌を確認しよう
合格までナビゲート!【第117回歯科医師国家試験】年間対策レクチャー #9 会員限定117回歯科医師国家試験も直前に迫ってきました。
今回は国家試験前の追い込みとして歯科医師国家試験に必ず出題される「扁平上皮癌」について分野横断的に確認していきましょう。
扁平上皮癌をマスターすることは「コスパがいい!」
はじめに過去の歯科医師国家試験の中でどのくらい扁平上皮癌についての問題が出ているか確認してみましょう。
以上を踏まえると、114回なら3問、115回も3問、116回は4問出題されています。つまり1回の歯科医師国家試験で3〜4問は出題されると考えてよく、超頻出であることがわかると思います。
また、都市伝説に近いかもしれませんが「出題のルールとして、口腔癌に関連する問題が3問以上出題されると決まっている」との噂も聞いたことがあります。信じるか信じないかは完全に読者の皆様次第ですが、過去の歯科医師国家試験の出題を考えるとあながち嘘とも言えなさそうです。
扁平上皮癌は幅広い科目で出題されており、具体的には、口腔外科、病理学、歯科放射線学、薬理学、衛生学(疫学の分野)と多岐にわたります。幅広い科目に及ぶために毎年出題数が多く、勉強の「コスパがいい」といえるのです。扁平上皮癌とその周囲を学び、効率よく点数をとれるようにしましょう。
この記事では、扁平上皮癌の中でも分かりづらい範囲である「治療方針の選択」、「放射線治療」にポイントを絞って解説してきます。
ポイントは放射線治療! 舌癌の治療法の選択
扁平上皮癌の治療方針の選択はTNM分類を元にしたStage分類で行っていきます。口腔癌の中で最も頻度が高い舌癌の治療方針選択について一緒にみていきましょう。Stage分類やTNM分類自体はすでに十分に勉強されていると思うので、ここでは詳細を省きます。もし不安の残る方がいれば、必ず復習して覚え直すようにしてください。
化学療法も併用されることはありますが、舌癌の治療で主に用いられるものは「外科療法」と「放射線療法」の2つです。舌癌の治療方針は「Stage分類」と「原発巣の大きさ(=T分類)」で決まり、どちらの治療法を選択するかが変わってきます。
化学療法の併用など治療法のバリエーションはありますが、国家試験レベルでは上の表の内容で十分です。ポイントは、放射線治療を行うのは「原発巣が浅く小さいとき」か「原発巣がかなり大きく切除できないとき」だということです。
腫瘍が小さく浅いとき(StageⅠまたは厚さ10mm未満のStageⅡ)、放射線治療の治療成績は切除する場合と同等に良いことがわかっています。そのため、摂食・嚥下、構音などの機能や舌の形そのものを温存するために、原則として放射線療法が選択されます。この場合の放射線療法は癌細胞を殺して治すことを目的としており、小線源照射が主として使われることが多いです(後で詳しく解説します)。
放射線で治すことが難しい場合(厚さ10mm以上のStageⅡ、切除可能なStageⅢ/Ⅳ)は、外科療法となります。当然ながら腫瘍が大きければ大きいほど切除量が大きくなり、それに伴って再建が必要になります(再建方法は一歩踏み込んだ内容なので覚えなくても大丈夫です)。リンパ節に転移がある場合や疑われる場合は頸部郭清術も行います。
さらに腫瘍が大きくなり切除ができない場合は、完治を目的とするのではなく疼痛をできるだけ取り除き、進行を遅らせるための放射線治療を行っていきます。これを緩和照射と言います。
放射線治療の種類
近年出題が増えているのが放射線治療です。臨床実習で見る機会がないことも多くイメージしづらい受験生が多いのではないでしょうか。混乱しないように、放射線治療の大きな分類から覚えていきましょう。
放射線治療は「外部照射」と「小線源治療」に分かれます。外部照射は文字通り、体の外から放射線を当てる方法です。小線源治療は内部照射ともいい、体の中に放射線を出す線源を入れて、体の中から放射線を当てる方法です。実際の治療では線源をそのまま入れるのではなく、金属などに封入した「密封小線源」を用います。
続いて、密封小線源治療(内部照射)の種類について細かく見ていきましょう。小線源治療は組織内照射、モールド照射、腔内照射に分けられます。腔内照射は口腔外科ではほぼ使わないので詳しい説明は割愛します。モールド照射はマウスピースや義歯のような装置に線源を埋め込み、接する部位の腫瘍組織に放射線を照射する方法です。
組織内照射については次の項目でさらに詳しく解説していきます。
組織内照射の種類と特徴
組織内照射は、比較的弱いガンマ線を出す「低線量率小線源」を使用する方法と、強いガンマ線を出す「高線量率小線源」を使用する方法に分かれます。
低線量率小線源による組織内照射では、術者がワイヤー状のIr(イリジウム)線源を腫瘍組織に直接刺入します。線源が患者さんの体に入った状態で約1週間ほど照射を行った後に線源を抜去します。この期間は線源が患者さんの体に入ったままになるため、患者さんが過ごす病室は放射線を通さない遮蔽病室である必要があります。
Irの他に低線量率小線源治療に使われている線源として、Au(金)があります。こちらは粒状で、半減期が短いために刺入したのちはそのままにして除去を行いません。
高線量率小線源による組織内照射では、治療を行う前に腫瘍組織にチューブを挿入します。その後、チューブを通して遠隔操作で線源を腫瘍組織内に入れ、短時間の放射線照射を行います。コンピュータ制御で線源を動かすので線量があたる部位を自由に設定できる利点があります。数日間に分けて照射を行った後、最後にチューブを抜去します。
このように線源が通るチューブを設置して、後からをコンピュータを用いた遠隔操作で高線量率小線源を装填する放射線照射方法を、RALS(Remote After Loading System:遠隔後装填法)といいます。ちなみに、高線量率小線源による組織内照射だけでなく、モールド照射でも装置内にチューブを通してRALSで放射線照射を行います。
低線量率と高線量率の違いで間違いやすいのは「低線量率の方が術者の被曝がある」ということでしょう。低線量率の線源は術者が手術で直接組織内に入れるために、放射線被曝があります。高線量率の方はRALSを活用して遠隔操作で線源を扱うために被曝が少なくなります。
いかがだったでしょうか。
他にも、扁平上皮癌で重要な事項としては口腔癌の疫学、口腔内所見、病理検査、画像検査、抗腫瘍薬、頸部郭清術、周術期口腔管理といったことが挙げられます。
このあたりもしっかり学んで、きちんと点が取れるようにしておきましょう!
皆様の合格を祈っております。
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