<8月の対策講座>範囲設定がカギ! 基礎科目の効率的な勉強法
合格までナビゲート!【第117回歯科医師国家試験】年間対策レクチャー #4 会員限定夏の季節がやってきました。歯科医師国家試験の受験生にとっても「夏は受験の天王山」です。夏の間にできるだけ苦手範囲をできるだけ無くして直前期に本番に向けた対策に専念できるように調整していきましょう。本連載では、引き続き歯科医師国家試験の勉強方法について一緒に考えていきます。今回は基礎範囲です。
基礎範囲の問題の特徴と国試勉強のコツ
基礎範囲は、解剖学/組織学/発生学/病理学/生理学/生化学/微生物学/免疫学/薬理学/歯科理工学と幅広い範囲を含みます。全ての基礎範囲を等しくしっかりと復習すると非常に時間がかかってしまうこと、また、基礎範囲は1問3点の臨床実地問題はなく、全て1問1点の一般問題であることから、特に臨床系科目の対策が十分でない方は基礎範囲の対策はよく出る範囲に的を絞り、そうでない範囲はCBTレベルの参考書に記載されているような基本的な内容まででとどめておいた方が良いでしょう。
基礎範囲で非常に難易度の高い問題が出ることもありますが、受験生の多くが解けない問題は合否に影響しません。基礎範囲も、過去問の難しい問題はとらわれすぎずに基本的な内容を抑えていきましょう。
解剖学・組織学・発生学の対策
特に解剖範囲は出題の多い範囲が絞られる印象です。また基礎範囲以外の臨床教科で解剖学的知識を前提とした問題が多数出題されるために、基礎範囲で特にしっかりと理解すべきなのは解剖学範囲だと考えています。ですので、解剖学範囲は特に頻出の3テーマを重要と考えている順にあげて少し詳しく解説します。
1つ目は「顎骨と咀嚼筋」についてです。上/下顎骨の解剖学的構造についてどの場所にあるかきちんと頭に入れておきましょう。骨の構造はもちろん、顎骨に付着する筋や付近を走行する血管神経も押さえる必要があります。顎骨に付着する筋で最も大切な咀嚼筋については、筋の役割や走行、起始・停止の部位など特に詳細に覚えてください。自信がない人はCBTレベル「勉強相談室」Q&A 第3回の解説記事も見てみてください。神経の走行に関しては特に三叉神経の枝である上顎神経、下顎神経の枝についてはよく確認しておきましょう。
2つ目に「脳神経と頭蓋底の孔」です。12脳神経の名前と働きを覚えていることは前提として、各神経が頭蓋を出る際の孔は、イラストまたCT画像で分かるようにしておきましょう。頭蓋底内面と頭蓋底外面の両方の孔を理解していることが必要です。
3つ目に「歯の異常形態」です。上の2つほどは頻出ではありませんが歯の形態異常の名称や部位、異常が発生しやすい歯種については、過去から近年にいたるまで、まんべんなく出題されている印象です。一度、しっかりと覚えてしまえば本番で出題されたされた際も落ち着いて回答できるのでこの機会に覚えておきましょう。
組織学範囲は、解剖学範囲よりは幅広く出題される印象ですが、発生学範囲と絡む骨化様式の違い(軟骨内骨化、膜内骨化、両方が合わさったハイブリット)や神経堤細胞から発生する組織については細かく見ておくと良いでしょう。神経堤細胞と三胚葉に関してもCBTレベル「勉強相談室」Q&A 第5回で解説したことがありますので詳しく知りたい方は見てみてください。
具体的な細胞の種類や性質を十分に理解する必要があるのは、歯周組織(歯・歯槽骨・歯根膜・歯髄・歯肉)をつくる細胞と、体全体の組織における上皮の種類です。歯周組織の細胞に関して、エナメル芽細胞、象牙芽細胞、歯髄の神経細胞、マラッセの上皮遺残、骨/セメント系細胞、線維芽細胞などについて構造の特徴と名称、働きについて確認しておきましょう。体全体における上皮に関しては、消化管や気道、膀胱・尿路などの上皮の種類は復習しておいてください。例えば、「食道の上皮の種類は何か?」「肺胞の上皮の種類は何か?」など自信を持って答えられるでしょうか。
病理学・生理学・生化学の対策
病理学範囲は口腔外科範囲と被る部分も多く出てきますので、口腔外科と被らない病理学における基礎範囲を一緒に確認してみましょう。遺伝性疾患に関しては、特に染色体異常(常染色体/性染色体・優性/劣性・トリソミー/モノソミーなど)と代表的な疾患の名前を頭に入れておきましょう。覚えているかいないかで答えられるか決まってしまう、がん遺伝子・がん抑制遺伝子についても、ちらほら出題されていますので確認しておくと本番で出題された際に焦らずに安心できるでしょう。
炎症について(炎症の性質・炎症のケミカルメディエーター)は、病理学だけでなく生理学・生化学の範囲とも重なってきますが、その分よく出題される重要な範囲ですのでよく復習しておいてください。アラキドン酸カスケードについては、関わる酵素や薬の作用部位を自分で一度、書いてまとめてみると良いでしょう。
生理学範囲に関して大まかにまとめると、神経・筋自体に関すること(神経の種類と神経伝導、知覚・受容器、様々な中枢の位置、反射、骨格筋の収縮のメカニズム、味覚)、伝達物質と受容体(神経伝達物質と受容体、ホルモンの作用と産生器官)、高齢者と摂食・嚥下(高齢者の生理学的特徴、接触嚥下の過程、構音・発生、唾液の成分に関して)がよく出題されています。細々としたテーマがありますが比較的まんべんなく出題される印象です。
生化学範囲は生理学範囲に比べると出題されるところが絞りやすい反面、少し詳しく問われる問題も出やすいです。細胞内小器官に関しては名称と役割について基本的な内容ですが、忘れていないかこの機会に確認しておきましょう。石灰化に関連した内容として、石灰化のメカニズム(基質小胞)、破骨細胞、血中カルシウム濃度調節のメカニズムをよく復習しておいてください。
破骨細胞については、破骨細胞と骨の模式図を書いてみて、受容体や酵素などを自分の知識で書き込んでみましょう。あとで教科書と照らし合わせてみると知識の抜けている部分に気づくはずです。血中カルシウム濃度の調節に関しても、血中カルシウム濃度を上げるPTHと活性型ビタミンD3、血中カルシウム濃度を下げるカルシトニンと中心に作用を受ける臓器をまとめて書いてみると良いでしょう。アミノ酸・タンパク質に関して、コラーゲン合成経路や硬組織にある特徴的なタンパク質(RGD配列を持つタンパク質、シアロタンパクなど)が聞かれやすいです。特にコラーゲン合成経路に関しては細かいところまで聞かれ、かつ頻出ですのでこちらも自分で流れをまとめるなどしてよく復習しておいてください。
微生物学・免疫学・薬理学の対策
微生物学・免疫学・薬理学範囲に関しては出題されやすいところはまとまっている印象です。ただし、暗記事項が多い範囲でもあるので適宜、語呂合わせなども活用してしっかりと覚えておくようにしましょう。
微生物学範囲は、グラム染色による細菌の分類を覚えている前提の上で、具体的なう蝕・歯周病原細菌の種類と性質・病原因子を覚えましょう。消毒薬の強さや適用など消毒・滅菌関連の知識も出題されやすいです。あとは、疾患と原因となる代表的なウイルス・細菌について、日和見感染症と原因となる常在菌について感染経路についても復習してまとめておきましょう。
免疫学範囲は基本的な免疫細胞とその性質や働きについて、抗体の種類(IgG、Ig A、Ig M、IgE、IgD)と性質について、アレルギーの種類(1型、2型、3型、4型)と代表的な疾患にについてまとめておきましょう。免疫細胞に関して一見すると難しい問題でも、基本的な事項を理解していると答えが導ける場合が多いです。細かいことを細々と覚えていくというよりもイメージをもって理解できていることが大切です。
薬理学範囲については、薬理学の基礎の範囲と、ひたすら薬剤の名前を覚える範囲に分けて考えましょう。前者で頻出なのは、用量反応曲線と競合的拮抗・非競合的拮抗のメカニズムの理解です。後者の薬剤名を覚える必要がある範囲ですが、よく出題される3テーマは抗菌薬、自律神経の受容体の作動薬・拮抗薬、抗腫瘍薬です。薬剤名はどこかで必ず覚えなければいけないので、まだ覚えきれていない人はこの夏に覚えてしまいましょう。抗菌薬の覚え方についてはCBTレベル「勉強相談室」Q&A 第4回の記事も参考にしてください。薬剤名を覚えたら、最後にまとめとして薬物の相互作用・併用禁忌など薬の組み合わせについても頭に入れるようにしましょう。
歯科理工学の対策
最後に理工学範囲の対策についてです。基礎範囲はよく出る範囲に的を絞って勉強するとお伝えしてきましたが、理工学範囲に関しては幅広く出題されるため広く勉強しておく必要があります。下にまとめたテーマのどれも大切です。
全体的なことでいうと、金属・陶材・ジルコニア・レジン・歯・ワックスなど様々な材料が出題されますが、硬さや熱膨張係数などの材料の性質について(硬さの順番など)、細かい数値を覚える必要はありませんがまとめておくと良いです。合金、陶材、セメント、印象材、レジン・CRなどの歯科材料含まれている物質とその役割についてはしっかりと覚えておきましょう。
今のうちに苦手範囲を克服し、できるかぎりの暗記物をつぶしておきましょう。今回は“基礎範囲について”でした。これまで解説した内容も含め、今一度復習して、自信をもって答えられる範囲を増やしていってくださいね。
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