116回“歯科医師国家試験”の徹底分析! 予備校講師による「出題傾向」と受験者の「国試後アンケート」
会員限定いよいよ3月に突入! もうすぐ国試の合格発表ですね。編集部一同、受験された皆さんの合格を心よりお祈りしております。
この記事では、第116回歯科医師国家試験の出題傾向を、国家試験予備校の講師に分析していただきました。また、当サイトBRUSHの歯学部生エディターズ6年生に、受験後に感じた試験の難易度や感想を聞いてまとめました。今年受験した皆さんにも、来年以降受験する下級生の方々にも参考になる記事になっています。どうぞ最後まで、じっくりとお読みください!
6年生の歯学部生エディターズ9人が分析。第116回国試はどうだった?
第116回歯科医師国試。よくできた問題や難しかった問題、試験直前の追い込み期の勉強法やオススメ参考書など、受験した歯学部生エディターズ9名のリアルな声を集めました!
Q1 今年の国家試験は例年の過去問題と比較してどうでしたか?
Q2 国家試験でよくできたと思う問題は?(複数回答)
Q3 国家試験であまり出来なかったと思う問題は?(複数回答)
Q4 試験の時間は十分でしたか?
Q5 見直しはできましたか?
Q6 試験中に困ったり驚いたことはありましたか。
エディターズA 「図表の表面がつるつるで、消しゴムで印刷が消えてしまうことを知らなかったので、解答に必要なX線写真の部分を消してしまった時は困りました。」
エディターズB 「試験監督の雰囲気が厳しくて驚きました。」
エディターズC 「説明時間が長く、部屋が寒いためお手洗いに行きたくなりました。」
Q7 国家試験直前期(12月頃~)のオススメ勉強法は?
1位 必修問題対策
1位 国試過去問
3位 模擬試験の復習
4位 苦手分野の暗記
5位 授業のテキスト、復習テストの復習
Q8 使ってよかった参考書、問題集は何ですか?
1位 国試過去問
1位 実践
3位 パーフェクトマスター、必修ナビ、CBT PASSガイド
予備校講師が出題傾向を分析。必修削除問題の大胆予測も!
第116回の問題の傾向はどうだったのでしょう? 歯科医師国試塾ブループリントの先生に、詳しい分析を教えていただきました。気になる必修削除問題も大胆に予測! 難問の解説も付いているので、これを機にチェックしてみて!
著者
宇梶淳平(うかじじゅんぺい)
東京外国語大学外国語学部卒後、一年間のサラリーマン生活を経て東京歯科大学へ編入。学生時代から歯科系SNSワンディー株式会社にて勤務し、1D歯科用語集やニュース記事の編集、海外論文の翻訳、国家試験対策セミナーの運営に携わった。現在は歯科国試塾ブループリントの代表として、多くの受験生をサポートしている。
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著者
渡部準也(わたなべじゅんや)
2021年、東京医科歯科大学歯学部歯学科を卒業し歯科医師免許取得。卒業時には長尾学術奨励賞(首席卒業)を受賞。同大学病院で臨床研修を行ったのち、2022年より同大学大学院へ進学し免疫をテーマに研究を行っている。学部在学中から同級生に対し、CBT/国家試験対策を行うなど、歯学教育に強く関心をもち、時期を同じくして他大学で試験対策研究を行っていた歯科国試塾ブループリント講師陣と意気投合し協力する。
116回歯科医師国家試験を受験された皆様、お疲れさまでした。国家試験の手ごたえはどうだったでしょうか。合格発表までゆっくり休んで勉強の疲れを癒してください。
5年生の皆様は、国家試験まで1年を切り、今回からの新出題基準でどのような問題がでていたのか気になっているのではないでしょうか。
この記事では116回歯科医師国家試験を、新出題基準と照らし合わせて、今年の試験全体の特徴、必修問題の削除の予想を行っています。
116回歯科医師国家試験全体の特徴
今年の歯科医師国家試験の全体に目を通して、以下のことが印象的でした。受験生の皆様はいかがだったでしょうか。
- 難易度は例年通りかやや易化
- 新出題基準以外でも出題形式は変化している
- 新出題基準の和漢薬(漢方薬)は具体的な薬品名は出題されず
続いて、詳しく見ていきます。
難易度は例年通りかやや易化
問題を全体的に見ると今までの国家試験でも出題されていたような一般的な知識を聞く問題も多く、難易度としては例年通りまたはやや易化かなと思われます。全体的な平均点は例年よりも高くなると予想しています。
今年の現役生はストレートに進級されている場合、試験勉強を本格的に始める前の4年生から、コロナ禍に入っている最初の学年です。コロナ禍によるカリキュラムの変更などの影響を受けにくく、勉強時間が増えたことが起因して、全体的な習熟度が上がっているのではないかと考えられます。
新出題基準以外でも出題形式は変化している
今年は新出題基準で出題される始めの年でしたが、実は出題基準の変更によらずとも、ここ数年で少しずつ、歯科医師国家試験の問題形式や傾向は変わってきています。
A84では、例年90問目に出題されていた順序問題が途中に出題されていました。114回歯科医師国家試験から一般問題と臨床実地問題がランダムな順番に出題されるようになっています。
B66では、一般的な5択問題ではなく8択問題が出題されました。114回B86(放射線画像、MRIから上顎部の腫脹を鑑別する問題)でも8択の問題が出題されており、様々な形式で出題していこうとする傾向は続いていくようです。
ちなみに、このように選択肢が6つ以上ある多選択肢問題は「LAタイプ」と呼ばれており、105回の歯科医師国家試験から出題されています。令和3年の歯科医師国家試験制度改善検討部会では「(前略)LAタイプ、計算問題及び順序問題の使用に際しては、引き続き、問題の質を検討する必要がある」ともあり、よく考えられた問題がこれからも出題されていくのではと考えています。
せっかくなので、今回出題された8択のB66を一緒に見ていきましょう。
問題 B-66
44歳の女性。口蓋の腫脹部の精査を希望して来院した。かかりつけ歯科医で指摘されたという。口蓋に弾性軟から中等度、無痛性の腫瘤を認める。初診時の口腔内写真(別冊No. 25A) 、CT (別冊No. 25 B) 、MRI (別冊No. 25C) 及びH-E 染色病理組織像(別冊No. 25D) を別に示す。
診断名はどれか。1つ選べ。
- 血管腫
- 線維腫
- 乳頭腫
- 多形腺腫
- 粘表皮癌
- 腺様嚢胞癌
- 扁平上皮癌
- Warthin 腫瘍
正答・ミニ解説
正答:d
口蓋部にある病変(口蓋腺の病変が疑われる)が、CT、MRIで病変の境界が明瞭であることから良性腫瘍が考えられ、病理像の特徴からdの多形腺腫が導かれます。
難易度は高くない基本的な問題ではありますが、5択の問題を解いている時に、8つまで選択肢が出てくると少し驚いてしまいますよね。
ただし、実は「2つ選べ」のX2問題や「3つ選べ」のX3問題の方が選択肢の選び方が10通りあるので、8択の「1つ選べ」の方が選択肢の選び方は少なくなります。落ち着いて回答していきましょう。
新出題基準の和漢薬(漢方薬)は具体的な薬品名は出題されず
和漢薬は「白虎加人参湯」(びゃっこかにんじんとう)など色々と覚えて、いつ出るのか思っていた方も多かったと思いますが、今年の国家試験ではA80の選択肢で「和漢薬」という文字が出ただけで、具体的な漢方薬の名前が聞かれることはありませんでした。
もちろん、今後の国家試験では出題される可能性があるので歯科範囲で使われる代表的な漢方薬についておさえておく必要があるでしょう。
必修の削除問題の大胆予想
必修問題では、必修範囲のレベルにふさわしくない問題について、誤答者では採点されず、正答者のみを採点対象にする削除問題があります。問題の難易度によって問題数は異なりますが、例年削除問題がでています。今回の116回歯科医師国家試験では10問程度が削除となると予想しています。
ほぼほぼ削除問題になりそうなのはA20、C9、C16、D18の4問です!その他、正答率や問題の難易度を鑑みて、削除されるかもしれない問題は、A2、A11、B4、B5、B11、B16、C2、C15、D8、D15、D17を予想しています。
ただし、以上の削除問題の予想は、あくまでも「予想」だということは念頭に置いていただければと思います。
ほぼ削除確実な問題をピックアップ!
ほぼほぼ削除問題になりそうな以下の4問について具体的に問題を見てみましょう。
- A20(切削器具の硬さ)
- C9(歯周病の新分類)
- C16(機能の改善ができる病変)
- D18(過量摂取で催奇形性があるビタミン)
問題 A20(切削器具の硬さ)
切削・研削工具の材質で硬さが最も小さいのはどれか。1つ選べ。
- アルミナ
- スチール
- ダイヤモンド
- カーボランダム
- タングステンカーバイド
正答・ミニ解説
正答:b
各材料の硬さを暗記している受験生はほとんど居ないでしょう。(参考までに各材料のモース硬度をのせています)
この問題のミソは、選択肢はどれもバーやポイントの材質ということです。実際の臨床で何を切削研磨するかイメージしていると意外と分かりやすい問題ともいえます。スチールバーのみが主に軟化象牙質の切削に用いて、エナメル質が切削できません。他の材料のバー、ポイントはエナメル質の切削、形態修正ができますね。
モース硬度
- 10 ダイヤモンド
- 9.5 炭化ケイ素(カーボランダム)
- 9 タングステンカーバイド
- 8-9 アルミナ
- 4 スチール
問題 C9(歯周病の新分類)
ステージとグレードによる歯周病の分類でステージの基準になるのはどれか。1つ選べ。
- 喫煙
- 糖尿病
- 歯の喪失
- 骨吸収の経年変化
- バイオフィルムの蓄積
正答・ミニ解説
正答:c
2017年に公表された歯周病の新分類に関する問題です。比較的新しいため、新分類についてしっかりと学習できていなかった受験生も多いと予想されます。特に既卒の方の場合、「学部生だった時に習っていない」事項のため初見だった方もいるかもしれません。
また、この問題の正答肢以外は全てグレードの基準に入っています。正答に関係の深い選択肢を入れることで、新分類をしっかりと理解しているかを問う問題となり難易度が高くなっているといえます。
問題 C16(機能の改善ができる病変)
治療によって機能の改善が期待できるのはどれか。1つ選べ。
- 血管性認知症
- 正常圧水頭症
- 進行性核上性麻痺
- Lewy小体型認知症
- 筋萎縮性側索硬化症
正答・ミニ解説
正答:b
正常圧水頭症自体が歯学部教育ではほとんど触れないこと、血管性認知症は患者の回復力や症状によってはある程度機能が回復できることから、A.血管性認知症を選んだ受験生が多いようです。大学からの問題修正依頼があればAとBの両方が正解になることもありえるかもしれません。
問題 D18(過量摂取で催奇形性があるビタミン)
妊婦が過剰摂取すると催奇形性があるのはどれか。1 つ選べ。。
- ビタミンA
- ビタミンC
- ビタミンD
- ビタミンE
- ビタミンK
正答・ミニ解説
正答:a
この問題もビタミンの知識の中では難しい部類に入るでしょう。ビタミンCの不足で壊血病、ビタミンDの不足でくる病や骨軟化症といった知識は歯科衛生士国家試験でも頻出のテーマですが、ビタミンの不足ではなく過剰摂取を問題にした点が難易度を上げた原因でしょう。
【今回のまとめ】
エディターズのアンケート結果でも、ブループリントの先生の分析でも、今年の国家試験の難易度は例年通りか、やや低くなったようです。
ほぼ確実な必修削除問題は、A20、C9、C16、D18の予測!
いかがでしたか? 出題形式は毎年少しずつ変化しているのですね。過去問の動向を分析することは、これから国家試験を受ける歯学部生にとっても大切なことのようです。来年以降受験する下級生は、ときどきこれを読み返してきたる国家試験の準備をスタートしましょう!
執筆協力
歯科国試塾ブループリント
2021年3月創業の新進気鋭の歯科医師国家試験向け予備校。個人個人に合った教え方、無駄なことを教えない徹底した効率主義、SNSによるいつでも質問可能なサポート体制で、進級や多浪生の国試合格を実現している。歯科医師国家試験の他、歯科衛生士/歯科技工士国家試験、歯学部編入試験、大学院入試など幅広いニーズに対応した個別指導を展開する。
2021年3月創業の新進気鋭の歯科医師国家試験向け予備校。個人個人に合った教え方、無駄なことを教えない徹底した効率主義、SNSによるいつでも質問可能なサポート体制で、進級や多浪生の国試合格を実現している。歯科医師国家試験の他、歯科衛生士/歯科技工士国家試験、歯学部編入試験、大学院入試など幅広いニーズに対応した個別指導を展開する。