【講座2】第116回国試、新出題基準での必修問題の形式は? 暗記が必要な臨床検査基準値を確認しよう!
“歯科医師国家試験”ラストスパート直前講座 #2 会員限定歯科医師国家試験まであと2ヶ月を切りました。国立大学、私立大学、現役生、既卒生…、どんな立場の受験生も多少なりとは緊張していることでしょう。そこで、在学中から国試勉強会を主催し、予備校の受験対策研究にも協力した渡部先生に、受験直前期の心構えや勉強内容を教えてもらいました。
国家試験直前まで毎週更新していきますので、この連載を読み、受験勉強のラストスパートをかけてください!
著者
渡部準也(わたなべじゅんや)
2021年、東京医科歯科大学歯学部歯学科を卒業し歯科医師免許取得。卒業時には長尾学術奨励賞(首席卒業)を受賞。同大学病院で臨床研修を行ったのち、2022年より同大学大学院へ進学し免疫をテーマに研究を行っている。学部在学中から同級生に対し、CBT/国家試験対策を行うなど、歯学教育に強く関心をもち、時期を同じくして他大学で試験対策研究を行っていた歯科国試塾ブループリント講師陣と意気投合し協力する。
先週の国家試験勉強の心構えに続き、今週からは必修問題における頻出範囲について、具体的な直前対策を行っていきます。今回は、新出題基準における必修問題の形式の解説と、必修範囲で暗記が必要な検査基準値について解説を行います。
私自身が近年の国家試験を受験した歯科医師として、また在学中から勉強会を主催してきた経験の中で作成したまとめ資料を今回の連載のため、アップデートしています。受験直前期の今だからこそ、是非、皆さんに確認していただきたい内容です。
新出題基準では、
必修問題の出題形式はどうなる?
今年度の116回歯科医師国家試験より、新出題基準に基づいて出題されます。
「歯科医師国家試験出題基準 令和5年版」から、新出題基準の必修問題では、今までの5つの選択肢から1つの正解を選ぶ問題形式(Aタイプ)に加えて、5つの選択肢から2つの正解を選ぶ問題形式(X2タイプ)が追加されることが公表されています。問題数と評価方法は今までの通り80題で、絶対評価となっています。
今回の必修問題における問題形式変更の経緯について「歯科医師国家試験制度改善検討部会報告書」を調べてみました。
必修問題は、「歯科医師として必ず具有すべき基本的な最低限度の知識及び技能」を試験範囲としています。歯科医師として必要な基本的事項は変わりませんが、国家試験の特性として丸暗記で解答されることを避けるために、過去問をそのまま出題することができません。このため狭い範囲から、新しい問題を作り続ける必要があり出題者の負担が大きくなっていました。受験者の立場からも、必修問題でありながら、ひねられた複雑な問題となってしまっていたといえます。そこで、新出題基準における必修問題では、新しい問題形式を追加することで問題に多様性をもたせることになりました。
これらの情報を合わせると、新出題基準の必修問題では過去問で出題されていたような基本的で重要な問題が、2つの正解を選ぶ問題としてリメイクされ出題される可能性が高いと考えています。
「歯科医師国家試験出題基準 令和5年版」と「歯科医師国家試験制度改善検討部会報告書」は厚生労働省のWebページに公開されていますので、より詳しく知りたい方は見てみてください。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000163627_00002.html)
暗記が必要な臨床検査基準値を
確認しよう!
今回は臨床検査値についてです。必修範囲の他、口腔外科や全身疾患の理解で重要な範囲ですが、必要な基準値について不足なく覚えていますでしょうか。
ここでは、暗記が必要な具体的な基準値の範囲について一緒に確認していきます。必修問題において解答する上で基準値を暗記しなければならない検査項目(基準値が問題中に明記されない検査項目)は、先述の「歯科医師国家試験出題基準」に公表されています。
必修範囲での臨床検査値の頻出問題
必修範囲では、
・具体的な基準値の範囲(104回C-12、103回C-8、99回C-2など)
・臨床検査値の意味(110回C-29、106回C-17、104回A-22など)
・検査値と関連する疾患・薬剤(112回A-18、109回C-11、102回A-17など)
が頻出です。
臨床検査値が意味するところ(例:CRP高値のとき炎症が存在)、臨床検査値と関連する疾患(例:ALT高値のとき肝炎などの肝障害など)、および基準値と関連する薬剤(例:ワルファリンカリウムによりPT-INRが延長)の詳細については、教科書や参考書で改めてよく確認するようにしてください。
推定糸球体濾過量(eGFR)について
新出題基準では、検査項目に新たに推定糸球体濾過量(eGFR)が追加されました。
eGFRによって推定される、糸球体濾過量(GFR)は、単位時間あたりに腎臓の糸球体で濾過される血液量のことです。一般的にはイヌリンという、糸球体を通過した際にほぼ完全に濾過され、それ以外の尿細管において吸収や分泌されない物質を静脈注射して尿中への排出を調べることで測定されます。(補足:糸球体を通る血液量(GFR)×血液中のイヌリン濃度=尿量×尿中のイヌリン濃度が成り立ちます)この方法では、イヌリンを静脈注射すること、尿量の測定のため蓄尿することなどの手間が多く大変です。
そこで日常診療では、18歳以上の日本人を対象としたGFR推算式を用いて、血清Cr値、性別、年齢からGFRを推定しています。これがeGFRです。体内で作られるクレアチニン(Cr)の血液検査値から推定できるため広く用いられています。
eGFRの基準値は、60 mL/分/1.73 m2以上です。健康な方では90mL/分/1.73 m2以上となることも覚えておくと良いでしょう。
慢性腎臓病(CKD)の診断基準の1つに、GFR<60 mL/分/1.73 m2が3か月以上持続することが挙げられており、基準値以下では腎機能が低下しているといえます。eGFRが低下する代表的な疾患として、糖尿病、高血圧、慢性糸球体腎炎があります。腎機能が低下している場合、Crが排出されにくくなるので血中Cr濃度は上昇しますが、濾過される血液量は減少するためeGFRは低下することに注意が必要です。
基準値の暗記が必要な検査項目
暗記が必要な検査項目について、表にまとめました。基準範囲は、健常者群の中央95%が含まれるよう(中央値±2SD)に設定されています。したがって、検査対象者によって異なり、施設ごとに様々な値が使われています。
基準値をわずかに上下する問題がでるとは考えにくいので、数値の細かな違いについては神経質になる必要はありません。キリをよくして、代表的な数字を覚えておきましょう。ここでは、「学生用共通基準範囲(日本臨床医学会設定、2011)」を参考にまとめています。
(https://www.jslm.org/committees/standard/ref_2011.html)
空欄の表も用意しているので、何も見ずに埋められるかチェックしてみてください。
どうしても覚えられない基準値がある時のために語呂合わせ表も用意しました。作成した語呂合わせの他、一部に一般的に使用されているゴロが含まれています。よろしければ使ってみてください。
【今回のまとめ】
今年度の歯科医師国家試験より新出題基準から出題されます。
必修範囲では、X2タイプ(正答を2つ選ぶ問題)が追加され、基本的な問題が出やすくなると予想されます。
必修問題における臨床検査基準値に、推定糸球体濾過量(eGFR)が新しく追加されました。暗記が必要な検査項目について代表的な基準値を覚えておくことの他、臨床検査値の意味や検査値と関連する疾患・薬剤の見直しもしておきましょう。
次回は国家試験に頻出の「歯の萌出・発育時期」について、簡単にまとめた表をアップ! ぜひチェックしてください。↓↓↓
執筆協力
歯科国試塾ブループリント
2021年3月創業の新進気鋭の歯科医師国家試験向け予備校。個人個人に合った教え方、無駄なことを教えない徹底した効率主義、SNSによるいつでも質問可能なサポート体制で、進級や多浪生の国試合格を実現している。歯科医師国家試験の他、歯科衛生士/歯科技工士国家試験、歯学部編入試験、大学院入試など幅広いニーズに対応した個別指導を展開する。
2021年3月創業の新進気鋭の歯科医師国家試験向け予備校。個人個人に合った教え方、無駄なことを教えない徹底した効率主義、SNSによるいつでも質問可能なサポート体制で、進級や多浪生の国試合格を実現している。歯科医師国家試験の他、歯科衛生士/歯科技工士国家試験、歯学部編入試験、大学院入試など幅広いニーズに対応した個別指導を展開する。
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