「絶望感」が「強さ」に…国試浪人の1年間で得たもの
留年・国試浪人のすべて #2 会員限定あたたかくなり、本格的に春の訪れを感じてくる3月。
進級や国家試験の結果が出てくる季節になりました。
うれしい結果が出た方がいる一方で、残念ながら悲しい結果が出てしまった方もいると思います。
今回の特集では、2度の留年を経験した方、留年を経験してこの春国試浪人が決まった方、国試浪人を経験した方の3名に、留年と国試浪人にまつわるさまざまな質問に答えてもらいました。
第2回は、国家試験浪人を経験した卒業生。
浪人決定後の流れは? 浪人中は毎日どのように過ごした? マッチングはどうやって進めた? など、1年間の経験をたっぷり語ってもらいました。
答えてくれた方
ライト さん
関東の歯学部を卒業。116回歯科医師国家試験で不合格となり、1年間の浪人を経験した。コーヒーが好き。
国試浪人が決まるまで
Q1. 現役時、国試合格の自信はどれくらいありましたか?
先輩からは「なんだかんだ受かるよー」と聞いていたので、同じルートを歩んでいれば合格はできるかなと軽い感じで考えていました。自己採点の結果、ボーダーギリギリ予想だったので、それ以降は自信がありませんでした。
Q2. 合格発表までは何をしていましたか? また、いつから勉強を再開しましたか?
友達と旅行をしたりと、全力で遊んでいました。勉強を始めたのは引っ越しなどが落ち着いた4月頃です。
Q3. 浪人が決まった際の気持ちを教えてください。
国家試験対策のための膨大な勉強をまた1年間やらなければいけないという絶望感と、緊張感にあふれるあの国家試験をもう一度受けなければならなくなってしまったという虚無感です。浪人経験者でないとこの気持ちはわからないと思います。
Q4. 浪人が決まった後の流れを教えてください。
まずは家族や学校へ連絡しました。その後、借りていた部屋を解約し、地元へ引っ越し。地元で働ける歯科助手のアルバイトを探しつつ、国家試験対策の家庭教師の申し込みをしました。
浪人中の過ごし方
Q5. 浪人中の平均的な1日のスケジュールを教えてください。
午前中 | 仕事の日は一般的な社会人と変わらない感じで勤務先に向かい、歯科助手として勤務。仕事のない日は家庭教師の先生からもらった教材で勉強しました。 |
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正午~夕方 | 仕事のある日は引き続き勤務。そのほかの日は近くのカフェに出かけて勉強していました。 |
夕方~寝るまで | 仕事から帰宅したあとは家族と団らん。仕事のない日はジムに行って、水泳や趣味のサウナをしてから帰っていました。どちらの日も寝る前には必ず勉強をして、勉強を全くしない日をつくらないようにしていました。 |
Q6. 浪人中、生活面で心がけていたことを教えてください。
生活リズムを崩さないこと。基本的に時間があり余るので、アルバイトはしたほうがいいです。
私は大学受験での浪人経験もあるのですが、非常勤でガッツリ働ける分、国試浪人の方が全然マシです! 大学から離れると臨床も忘れ気味になるので、歯科助手の仕事をするのがいいと思います。
Q7. 浪人中の勉強方法を教えてください。
家庭教師の先生からいただいた教材のみを使っていました。 現役生と違って、周りに歯科のことを話せる友人などは基本的にもういません。国家試験の本筋からズレた勉強をしていても誰からも指摘してもらえないので、きちんと指導してもらえる先生を見つけることをおすすめします。
Q8. マッチングはいつ頃、どのように行いましたか?
夏頃から、出身大学を含めたいくつかの研修先を見学したり、試験を受けていました。 今年の結果を顧みると、浪人生は現役生と比べるとマッチングにどうしても弱いです。出身大学以外の病院や外部の口腔外科などを希望する人は、現役合格を目指した方がいいと思います。
Q9. 浪人中、いちばんつらかったことは何ですか?
落ちたことがわかった瞬間がいちばんつらかったです。
Q10. 浪人中、これがあって助かった!というものは?
まず、浪人が許される実家の環境。ひとり暮らしを継続しながら浪人している友人もいましたが、環境が許されるのであれば実家に帰ったほうがいいと思います。
生活費を稼ぐためにはフルタイムで働く必要がありますが、そうすると昼間にまとまった勉強時間は取れず、休日も疲れて机に向かうのが難しいかもしれません。常勤勤務しながら国家試験に受かるのは、かなり要領がいい人のみです。家族のサポートが受けられるのであれば、それに頼るのがおすすめです。
そして、家庭教師の先生の指導。国家試験のことをちゃんとわかっている先生の指導を仰ぐことで、勉強がスムーズに進められました。
Q11. ストレス解消法は?
毎日のウォーキングやジムなどの運動習慣はストレス解消にもなって効果的でした。ずっと勉強をしているとどうしても運動不足になりがちなので、運動はうまく生活に組み込んだほうがいいと思います。
二度目の国試を終えて…
Q12. 二度目の国試を受けた際の気持ちを教えてください。
現役時と比べてある程度の自信はあったのですが、それでも1日目のA問題を解き始める前は緊張がマックスでした。あの緊張感は国家試験を何回受けても、拭えないんだろうなと感じています。
Q13. 現役時よりも手応えがありましたか?
自己採点でも現役時より成績が伸びていたので、あります。
Q14. 1年間を振り返った感想を教えてください。
国試浪人が決まった当初はとてもつらかったですが、今になって振り返ってみると自分にとっては必要な1年間だったのかなと感じています。尊敬できる先生との出会いや、歯科助手のアルバイトでのさまざまな先生たちとのつながり、久々の家族との生活など、浪人しなければ得ることができなかったものも多くありました。結局のところ、浪人時代を長い人生のなかで意味のある1年間にできるかどうかは、自分自身の行動によって決まるものなのかなと思います。
Q15. 国試浪人が決まった学生の方にメッセージをお願いします!
浪人が決まってすぐの時期は何も手につかないと思います。まずはゆっくり休んで、自分の中で気持ちの整理がついたら少しずつ再スタートしていってください。私は大学受験での浪人も経験しましたが、浪人生活は長い人生においての「強さ」になるときが必ず来ると実感しています!
今年国試浪人が決まった方も、これからの1年は決して無駄にはならないはず。「ストレート合格した人たちには経験できない期間」だととらえて、そのぶん得られるものを考えてみてください。
BRUSHは、歯科医師を目指して頑張る皆さんを心から応援しています!
イラスト・堀口ティモコ
留年・国試浪人のすべての記事一覧
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- #2 「絶望感」が「強さ」に…国試浪人の1年間で得たもの
- #3 留年を経験、そして国試浪人が決定…来年に向けて考えていること