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茂木先生から歯科就活生におくる“選択”のための講義 就活のきほん

茂木先生から歯科就活生におくる“選択”のための講義

茂木健一郎さんに教わる就活での「最高の選択」 #2

選択はスキル。選択力の必要な要素を身につけ、プロセスを理解しておけば、就職だけでなく、その後の人生におけるさまざまな選択が容易になります。前編では、まずは基本的な「選択力」のチェック! 1時限目の講義では、「選択」から実行へのプロセスを理解し、精度を上げていくことの大切さを教わりました。後編は、脳科学の知見に基づいた講義の2時限目からスタート! 選択力を高める方法を紐解いていきます。

茂木 健一郎さん

Teacher

茂木 健一郎さん

もぎ・けんいちろう◎1962年東京生まれ。脳科学者。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学の研究員を経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。2021年4月、屋久島おおぞら高校校長に就任。著書に『脳科学者が教える最高の選択』(徳間書店)ほか多数。

もぎ・けんいちろう◎1962年東京生まれ。脳科学者。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学の研究員を経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。2021年4月、屋久島おおぞら高校校長に就任。著書に『脳科学者が教える最高の選択』(徳間書店)ほか多数。

「選択力」を高める
インテリジェンス活動

選択が苦手なのは、インテリジェンス活動ができていないからかもしれません。インテリジェンスは、一般に「情報」や「知性」と訳されますが、ここで言う情報とは「調べようと思えば誰でもアクセスできるのに、限られた人だけが知っていること」。知らない人からすれば、「その手があったか」と思うような情報です。また、インテリジェンスは、玉石混交の情報から宝を探し当てる知性のことでもあります。雑多な情報に惑わされないようにするためにも、インテリジェンスを磨きましょう。

そのために効果的なのは、まず普段の行動範囲を飛び出し、自分と違う考え方や価値観を持つ人と接する機会を増やすこと。未知の多様な情報にアクセスできるようになります。
名作と呼ばれる小説を読むのもいいですね。これらによって自分の価値観を揺さぶる経験ができ、多様な考え方を受け入れるマインドをつくることができます。最後は、美術品をはじめとする“本物”を見ること。一級品だけが持つ輝きに触れるうち、本物と偽物を区別する感覚が養われ、それがインテリジェンスを磨くことにつながります。

「選択できる脳」をつくる
6つのトレーニング

「選択できる脳」は、1日にして成らず。日常生活の中でも脳のトレーニングを重ねていくことが大切です。
自分に向いているものを取り入れ、選択力を上げていきましょう。

1 メニューを見て頼むものをすぐ決める

飲食店ではメニューをパッとオーダー。店のおすすめや同行者の注文を参考にするより、自分で決断したほうがドーパミンが出ます。それがおいしければ脳が喜び、さらにドーパミンが分泌。選択力の向上に役立ちます。想定外の料理が出てもサプライズで脳が活性化。

2 新しいことはどんどんやる

新しいことに挑戦し、不確実性の領域に踏み込んでこそ、人は成長します。複数の選択肢がある場合は、未知の体験ができそうなほうを選びましょう。それを繰り返すことで、「まずはやってみよう」という思考が身につき、時代の変化に応じた選択ができるようになります。

3 その場で回答する

リスクを承知で「やる」ことを選ぶのは不確実性が高い行為と言えますが、時間を置いたからといって成功率が高まるわけではありません。やる・やらないの選択はなるべくその場で行い、やる気のある状態で即行動に移すほうが、結果として成功率が高くなるはずです。

4 ぶっつけ本番でやる

ディスカッションなどを、打ち合わせやリハーサル抜きのぶっつけ本番でやるのは、選択力を試す絶好の機会。状況が変わるごとに選択を迫られるので脳にとっては負担ですが、だからこそ自分の秘めた能力が開花しやすく、想定外の成果を出せる可能性があります。

5 SNSに投稿する

何をどう投稿すればバズるのか、逆に炎上してしまうのか。身をもって体験できるのがSNS。ウケると思って投稿しても、いい反応が来るとは限らない、不確実性に満ちた場です。バズるか炎上するか。それを念頭において、投稿する・しないを選ぶことで、選択力が磨かれます。

6 幹事役を引き受ける

例えば、仲間内での食事会。幹事の仕事は選択の連続です。人数や予算、みんなの好みや目的に合わせてベターな店を選び、コースを決め、予約の電話を入れ、誰かの都合が悪くなれば、またプランを練り直し…。旅行の幹事ともなれば、さらに選択力が鍛えられるでしょう。

それでも「選択できないとき」は

ここまでの講義に則れば、誰もが選択・行動できるようになります。とはいえ、何でもすぐに選択すべきかというと、もちろんそうではないケースもあります。僕の経験からお話ししましょう。


僕のもとには、メディア、自治体、経済界、政界、研究機関などから、さまざまな依頼があり、中には「やる」「やらない」と即答できないものもあります。それはおおむね「よくわからない」ことや「さほど興味が持てない」ことだったりするのですが、そこで僕がどうするのかというと「とりあえず頭の隅においておく」。

言い方を変えれば「無意識の領域に預けておく」。すると、まったく別の作業をしているときや、ボーッとしているときにふと「あの件、もしかしたら面白いかも! 」と思えたり、返事を催促されたときに、自分で納得のいく返答ができたりするのです。

無意識の領域には、これまでの人生で蓄積してきた無数の知識・情報が眠っています。そこから出てきた答えは、おおよそ間違っていないし、やってみると案外うまくいくのです。

歯科就活生へのメッセージ

未来は不確実性の塊で、何が起きるかわかりません。だからこそ、より良い人生を歩むためには、選択の精度を上げることが大切です。

一方、「ご縁」で就職を決めるケースもあるでしょう。先輩が声をかけてくれた医院が結局よかった、研修先で尊敬できる先生に出会ったからそのまま働くことにした、などです。

でもこの決断も、選択力を身につけていれば迷わずできるはず。ご縁を科学的に言えば「セレンディピティ(偶然の産物。思わぬ幸運に出会うこと)」。

僕の場合、大学院の卒業間近まで就職が決まらず、どうしようかと思っていたら、たまたま指導教官の知り合いから理化学研究所で脳の研究チームをつくるから来ないかと誘われ、その後のライフワークとなる脳科学に出会ったのです。

セレンディピティに恵まれるには、自分はこういう人間だと決めつけず、好奇心を持ってどんどん新しいことにチャレンジすることが大事。就活は人生の大きなチャンスとなるはずです。

人生を左右する選択は就職先のときだけではありません。
日頃から積極的に行動し選択のトレーニングを重ねて、ここぞというときに選択力を発揮できるようにしておきましょう(編集部)

前編が読みたい方はこちら

撮影/泉山美代子 文/伊藤由起

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