歯科矯正界のスター・やついいちろうさんにお話を伺い、歯並び治療の魅力を知りました。
辛酸なめ子の調べたら奥深~い“歯科ラビリンス” #6子供の頃にした恐怖体験から歯医者さんがトラウマになり、実は歯科医院があまり得意ではないという辛酸なめ子さん。そんな辛酸さんも、口腔の健康と寿命が関係していることを知り、月に1回は予防を兼ねて歯科医院に通っているという。この連載は、そんな辛酸さんが最近の歯科事情や、歯科にまつわるエトセトラを取材し、歯科の恐怖と向き合い、克服していく壮大な物語である。歯科医師になる皆さんも、ぜひこの連載を読み、歯医者さんが怖い患者さんの気持ちと寄り添いながら、奥深い歯科ラビリンスを体感してください。
“歯科医師が治したくなる歯並び”だったやついさん
芸人、そしてDJとしても活躍しているエレキコミックのやついいちろうさん。実はかつてある業界から熱い眼差しで見守られていました。それは……歯科業界。それまで歯並びの悪さをネタにするほどでしたが、意を決して歯の矯正を始め、2013年に完了。
そのきっかけは、偶然の出会いからのスカウトでした。
「家の近所の中華料理屋で食事していたら、隣に座っていた上品な男女のグループの、女性がイヤリングを落とされたんです。探すのを手伝っていたら男性の方に名刺を渡されました。医科歯科の先生で、『やついさんの歯をずっと治したいと思っていたんです。ご興味あったら電話ください』って。その先生はテレビなどで僕のことをずっと見ていて、この人を治したら自分は歯医者として一人前だ、と思っていたらしいです」
いつの間にか歯科業界の通過儀礼になっていたやついさん。
「おもろいから電話したんです」と、連絡を取ったそうです。
その医科歯科の先生は、今はミライズ矯正歯科の院長をつとめている富田大介先生。優しい先生で治療も丁寧だったとのこと。
虫歯治療からはじめて約3年の長い道のりでしたが、その陰には奥様(当時は彼女)のサポート……ではなく反対がありました。
やついさんの奥様は、元グラビアアイドルでタレント、最近は怪談師としても人気の松嶋初音さん。もともとやついさんの歯並びの悪さが大好きで「妖怪みたいな歯が好きだったのに。治ったらいいところがなくなっちゃう」と、反対。ウィークポイントを愛せる夫婦愛に心打たれるエピソードですが、噛み合わせの悪さに悩んでいたやついさんは、このチャンスに矯正したいという思いでした。
「歯並びを治すのをかなり反対してましたけど、石膏で僕の歯並びの悪い状態を取った模型を先生が作ってくれました。奥さんに、こんなに悪いんだって見せたら一応納得してくれましたね。そのオブジェは今も飾ってます。奥さんは幻滅してるかもしれませんが、離婚はしてません」
松嶋さんと仕事でご一緒したこともありますが、やついさんとのエピソードも楽しそうに話していて、仲が良いのが伝わってきます。歯並びが悪い以外にも、他にもたくさん好きなところがあったのでしょう。やついさんの歯並びを治したことで、富田先生は歯科医として注目を集めそうですが……。
「それは否めないでしょ(笑)。芸人でもくっきーさんとか矢作さんとか、歯並びが悪い人はだいたいそこに行く流れになってます。僕は今は定期検診やクリーニングに通ってます」
美しい歯並びで淡々と話すやついさんですが、矯正前はどんな歯のトラブルを感じていたのでしょう。
「昔はめちゃめちゃ歯にものが挟まってました。あとやっば癖で歯を触っちゃう。昔、歯医者に触ってたら歯並びが治るとか言われたことがあって。今思えば嘘なんですけど。治るわけないですよね。昭和の人はいい加減です。でも、治してからは一切歯を触らなくなりましたね」
歯を触ると雑菌も入って感染症のリスクもありそうなので、コロナの時代、歯を触らずに過ごされたのは良かったです。
「でも、治すのは大変でしたね。親知らずを抜いたり、虫歯を治したり。歯並び悪い人は歯医者嫌いじゃないですか。だからそもそも行ってなくて、歯石取りも焼け石に水だと思ってずっとやってなかったんです。歯周病にもなってました。歯並び悪い人は歯茎が健康ってことはないと思う。だから矯正始めるまでの治療に時間がかかりました」
表側での矯正を選んだやついさん。まず、口の中にクイみたいなものを打ってそこを支点に引っ張る、という手法だったそうです。話を聞くとかなり痛そうですが……。
「麻酔かけてるから全然痛くないですよ。麻酔とれてもそんなに痛かった記憶はないですね。僕は痛みには弱いんですが」
とのことで、これから矯正を受ける人には心強い感想です。
「ただ辛いのは器具をつけた一日目。動き始めは、歯が何かに当たるだけで痛いから、ものも噛めなくてつぶしながら食ってましたね。二日目はだんだん慣れてきました。矯正中、とくに控えていた食べ物はないですね。つけてすぐカレーを食べて黄色くなってました」
より早く効果が出るという表側矯正ですが、器具が見えることに抵抗はなかったのでしょうか。
「透明だと思ったより目立たないですよ。でも先生は、12月は緑と赤の器具に替えたり、季節感が出るようにしてくれて、そのうち楽しくなってきました。矯正の期間はあっという間で、器具が取れたときはちょっと淋しかったです」
ネイルアートのように矯正アートをおしゃれに取り入れるのもありかもしれません。矯正の効果は、噛み合わせがよくなって食べ物が挟まらなくなったこと以外にもたくさんあると、やついさんはおっしゃいます。
「歯が気にならなくなって集中力が増した、というのも大きいです。あと普通に印象も良いんじゃないかな。歯並びが良くなってから俳優業の仕事も来るようになりました。仕事も多方面に広がりましたね」
他の治療に比べても矯正がベストだと熱く語るやついさん。
「矯正の費用はインプラント1本ぶんくらいじゃないでしょうか。インプラントはむちゃむちゃ高い。僕は矯正なので全部自分の歯のままです。差し歯で自分の歯をたくさん削ってくっつけてる人もいますが、削っちゃうと戻ってこないから、矯正の方がいいと思います」
と、矯正推しのやついさん。歯科矯正界のスターだと見込まれただけあって、今は矯正インフルエンサー的な存在に。きれいな歯並びの笑顔がまぶしかったです。やついさんの影響で矯正を受けた人々の人生も好転し、徳を積んだ恩恵が返ってきてますます活躍されることでしょう……。歯が改善されて健康寿命も伸びて、医療費もそんなにかからない生活も期待できて、矯正は最高の投資だと教えられました。
俳優・お笑い芸人・DJ
やついいちろう
1997年にエレキコミック結成。2000年に「NHK新人演芸大賞」演芸部門大賞を受賞。2010年にTBS「キングオブコント」決勝進出。敬愛する曽我部恵一氏の勧めでDJ活動をはじめ、現在までに8枚のMIXCDをリリース。また、お笑い・ミュージシャン・文化人といったジャンルレスの「YATSUI FESTIVAL!」のオーガナイザーを務め、10年目には視聴者数が215万人以上のフェスに成長させた。2014年にTBS「リアル脱出ゲームTV」から俳優としてのキャリアをスタートさせて、NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」などに出演。2020年にはMV監督も務め、優里「ピーターパン」では約4000万回の再生数を記録。著書に「それこそ青春というやつなのだろうな」「うちの犬がおじいちゃんになっちゃった」がある。
1997年にエレキコミック結成。2000年に「NHK新人演芸大賞」演芸部門大賞を受賞。2010年にTBS「キングオブコント」決勝進出。敬愛する曽我部恵一氏の勧めでDJ活動をはじめ、現在までに8枚のMIXCDをリリース。また、お笑い・ミュージシャン・文化人といったジャンルレスの「YATSUI FESTIVAL!」のオーガナイザーを務め、10年目には視聴者数が215万人以上のフェスに成長させた。2014年にTBS「リアル脱出ゲームTV」から俳優としてのキャリアをスタートさせて、NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」などに出演。2020年にはMV監督も務め、優里「ピーターパン」では約4000万回の再生数を記録。著書に「それこそ青春というやつなのだろうな」「うちの犬がおじいちゃんになっちゃった」がある。
辛酸なめ子
漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。女子学院中学校、高等学校在学中から、執筆・創作活動をスタート。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。セレブ、皇室、精神世界など関心の幅は広く、それぞれ独特の切り口で取材し執筆。著書に『女子校礼賛』『無心セラピー』『電車のおじさん』『新・人間関係のルール』『辛酸なめ子の独断!流行大全』『辛酸なめ子、スピ旅に出る』など多数。
漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。女子学院中学校、高等学校在学中から、執筆・創作活動をスタート。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。セレブ、皇室、精神世界など関心の幅は広く、それぞれ独特の切り口で取材し執筆。著書に『女子校礼賛』『無心セラピー』『電車のおじさん』『新・人間関係のルール』『辛酸なめ子の独断!流行大全』『辛酸なめ子、スピ旅に出る』など多数。
文・イラスト/辛酸なめ子