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有望な市場の電動歯ブラシと、黎明期が続く口腔洗浄機【快適ケアグッズ 前編】 連載コラム

有望な市場の電動歯ブラシと、黎明期が続く口腔洗浄機【快適ケアグッズ 前編】

みんなでハマろう! オーラルケアグッズ沼 #9

歯学部生なら興味がある、歯ブラシや歯磨き粉、フロス、歯間ブラシなどのオーラルケアグッズ。

でも、種類やトレンドについてそんなに詳しく知らないのではないでしょうか。

本連載では、オーラルケアグッズ専門店「メガデント銀座店」の店長であり、オーラルケアグッズの魅力を知り尽くしている酒向淳さんに、オーラルケアグッズ沼へといざなっていただきます。

沼の深渕へ

オーラルケアグッズ沼も佳境に入ったが、さらに沼の深渕に向かおう。今回は電動歯ブラシ、口腔洗浄機、歯茎マッサージャー、舌ブラシ、義歯ブラシ・義歯洗浄剤・義歯安定剤と種類多めだが、しっかりついてきて欲しい。

電動歯ブラシは世界では有望な市場

まずは、電動歯ブラシ。日本ではソニッケアーとオーラルB、その他日本勢のパナソニックやオムロンなど数社で市場は寡占されているが、世界を見ると各国に中規模のブランドが乱立していて、欧米ではコルゲートやウォーターピックなどもシェア争いをしている。最近は中華圏ブランドも元気が良い。

電動歯ブラシは、洗面で口の中に入れるという特性上、防水・安全性に配慮し、充電池交換ができない構造にする必要があり、そして一日数回の使用に耐え、電動シェーバーのように力のある男性中心ではなく、女性や子供も使用することを想定して重量を軽くする必要もある。

これらの理由から耐久性が犠牲になっていて、各社製品寿命は長くても2~3年ほどしかなく、本体の買い替えが定期的に発生する。悩ましい部分であると同時に、ある意味メーカーとしては心地良い製品なのだ。さらにブラシ部分の買い替えに関しては共通化さえ進んでいないから、一度自社製品を購入してもらえば、ジレットモデルごとく顧客を囲い込める。そして電動化していく水回り品として、世界規模では今後も販売数が伸びていくと予想されている有望な市場だからだ。

ただ、日本国内に限っては、日本人は継続性が低く、一度電動に移行してもマニュアルブラシに戻る人が多い。どうしてそうなるのか、理由はわかっていない。

2強商品、ソニッケアーとオーラルBの歴史

さて、今回動作性能などは専門書に譲り、世界の2強商品であるソニッケアーとオーラルBの歴史に焦点を絞っていこう。

電動歯ブラシは1930年代に、アメリカやスイスで原型が考案され、世に出るもほとんど評価されなかった。その後1954年に身体が不自由な人向けに、スイスで販売されていた機種が、1959年米国で、BROXODENTとして販売され、一定の評価を受ける。この機種は、これまで日本には入ってきていないが、今でもスイスで後継機種が販売されている。当初はコンセントに本体がつながったまま使用する形式で、電動歯ブラシは濡れた状態で使用することを考えると、危ない設計だったわけだ。

そして現在主流の電池を使ったタイプは、アメリカGEのAutomaticが最初だが、こちらも評価されず消えていった。どうも重すぎたらしい。

今一番売れているオランダのPhilipsソニッケアーは、1991年に独自の電動ブラシを開発・販売するも、当初あまり人気はなかった。

転機となったのは、1992年にアメリカのベンチャー企業のOptivaが歯科医師と組んで売りだした音波ブラシ。アメリカの富裕層に高い評価を受けていたため、PhilipsがOptivaを2000年に丸ごと買収し、この機種を自社ブランドとして販売してから急激に勢力を伸ばした。その後ワールドブランドに成長した、初めての電動歯ブラシだ。

一方、オーラルBはやや複雑で、アメリカ人歯科医師のHustonが自分の名前を付けたハトソン歯ブラシが原点だ。1950年代にオーラルBに名前を変えながら紆余曲折を経て、1984年にオーラルBの権利を持った会社がGilletに買収された。そして同じ年にGilletはBraunを完全子会社化して、OralBとBraunが同じグループになった。ただ、この年に発売された初代の口腔洗浄機と電動歯ブラシが一体化した機種は、オスシレーション(左右反転)タイプではなかった。1991年に、現代に続く、丸型ヘッドで左右反転する電動歯ブラシを販売したのが最初だ。その後2005年に、今度はP&GがGilletを買収して、現在のP&G社製OralBbyBraunとなっている。

日本人の口腔洗浄機の使用スタイルは黎明期から変わらない

次に口腔洗浄機を紐解こう。こちらも要は電化製品なのだが、電動歯ブラシより市場プレーヤーはさらに増える。

理由は、意外に思うかもしれないが、電動歯ブラシより歴史が古く、初期の特許はすでに切れていて、中小企業が参入しやすいからだ。また、効果云々は別として、ある意味、水を出すだけなので、構造も簡単で、やはり中小企業でも製造しやすいからだ。

そしてもう一つ大きな違いがあって、交換ブラシのように消耗して定期交換が必要な付属品がないことだ。つまり製造者にとっては一度売れてしまうと、壊れるまで次の収益がない。しかも壊れる部位はどの会社も同じで、水圧に加え引っ張り力が集中する、水タンクとノズルホースが結合している部分がちぎれてくる以外、あまり弱点もない。また、差別化につながる訴求点も機能としてつけづらい。つまりビジネスとしてジレットモデルができないのだ。だから大手が積極的でなく、寡占化が起きず、市場は玉石混交なのだ。

とはいえ、日本も含め世界で一番販売されているのは、やはりWaterpik社のWaterpikだ。この企業は1962年にAquaTec社としてアメリカで誕生している。大手の電動ブラシが1990年代なのを考えると30年以上早い。同社が口腔洗浄器として初めての特許を取得したのが1967年と、すでに半世紀以上の歴史があるわけだ。

さて、機能についてだが、まず製品自体は大分類で据え置き型か携帯型があるが、水を強く排出するには電池ではパワーが不十分な上に、タンクが小さいので水がすぐなくなって頻繁に補充が必要になる。また水タンク付きの本体を持ち上げ続けて使用するという行為は重く、腕に負担がかかるので、携帯型を購入して後悔する人が多いのが現状だ。

一方据え置き型は、家が広い海外では問題ないようだが、日本の都市部の狭い洗面台では置く場所に困り、そしてパワーのある機種は大きなモーター音が気になって夜間は使用しづらい問題も、長年変わっていない。

さて、肝心の機能面の水流については、おおまかに分けて、ジェット水流とパルス水流の2種類が存在し、各々細かい差異はあるものの、初期の特許が切れているので各社設定されていて、品種ごとにあまり違いはない。あえていえば、フィリップスのX型水流パナソニックの超音波水流が他社との違いを売りにしていて、現在水流は4種類存在していると分類できる。また、ノズルチップはシンプルなデザインだけでなく、最近はワンタフトブラシ形状や、舌ブラシ形状もラインナップさせて、付属品交換ビジネスモデルに転換しようとしているが、電動歯ブラシと違い、ビジネスとしてあまり上手くいっておらず、ほとんどの人が買い切りだ。そして、そのうち飽きて洗面台の飾りになる事例が、日本では多いのも黎明期から変わっていない。

酒向淳

酒向淳

オーラルケアグッズ専門店「メガデント銀座店」の店長。2001年にドイツに移住・転職した際、ドイツの「メガデント」本店の「自分に合った道具でより効果的にケアを行って健康的に生きる」というコンセプトに共感。「メガデント」本店での研修を経て、2009年に銀座店を開業した。店頭にはヨーロッパ製品を中心に1000種類を超えるアイテムが並び、そのすべてを試している。
「メガデント銀座店」
〒104-0061 東京都中央区銀座1-14-10 松楠ビル1F
http://www.megadent.co.jp/index.html

オーラルケアグッズ専門店「メガデント銀座店」の店長。2001年にドイツに移住・転職した際、ドイツの「メガデント」本店の「自分に合った道具でより効果的にケアを行って健康的に生きる」というコンセプトに共感。「メガデント」本店での研修を経て、2009年に銀座店を開業した。店頭にはヨーロッパ製品を中心に1000種類を超えるアイテムが並び、そのすべてを試している。
「メガデント銀座店」
〒104-0061 東京都中央区銀座1-14-10 松楠ビル1F
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