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進化を続ける歯間ブラシとドーム状が人気のワンタフトブラシ【フロス&歯間ブラシ後編】 連載コラム

進化を続ける歯間ブラシとドーム状が人気のワンタフトブラシ【フロス&歯間ブラシ後編】

みんなでハマろう! オーラルケアグッズ沼 #6

歯学部生なら興味がある、歯ブラシや歯磨き粉、フロス、歯間ブラシなどのオーラルケアグッズ。

でも、種類やトレンドについてそんなに詳しく知らないのではないでしょうか。

本連載では、オーラルケアグッズ専門店「メガデント銀座店」の店長であり、オーラルケアグッズの魅力を知り尽くしている酒向淳さんに、オーラルケアグッズ沼へといざなっていただきます。

酒向淳

酒向淳

オーラルケアグッズ専門店「メガデント銀座店」の店長。2001年にドイツに移住・転職した際、ドイツの「メガデント」本店の「自分に合った道具でより効果的にケアを行って健康的に生きる」というコンセプトに共感。「メガデント」本店での研修を経て、2009年に銀座店を開業した。店頭にはヨーロッパ製品を中心に1000種類を超えるアイテムが並び、そのすべてを試している。
「メガデント銀座店」
〒104-0061 東京都中央区銀座1-14-10 松楠ビル1F
http://www.megadent.co.jp/index.html

オーラルケアグッズ専門店「メガデント銀座店」の店長。2001年にドイツに移住・転職した際、ドイツの「メガデント」本店の「自分に合った道具でより効果的にケアを行って健康的に生きる」というコンセプトに共感。「メガデント」本店での研修を経て、2009年に銀座店を開業した。店頭にはヨーロッパ製品を中心に1000種類を超えるアイテムが並び、そのすべてを試している。
「メガデント銀座店」
〒104-0061 東京都中央区銀座1-14-10 松楠ビル1F
http://www.megadent.co.jp/index.html

歯間ブラシの市場規模

さて各論の2番手は歯間ブラシ。

1990年、日本での歯間ブラシの市場規模は5億円だったが、2017年には86億円、そして2023年には130億円まで増えている。ただ、オーラルケア全体の市場規模が約3000億円といわれ、そのうちハミガキが約1500億円、歯ブラシが約500億円だから、まだちょっと物足りない。まだまだ脇役の道具なのである。

歯間ブラシの種類

歯間ブラシにはブラシタイプとゴムタイプがあり、製造比率は、それぞれ52%および43%となっている。そして形状違いではI型とL型の2に分類される。

ちなみに、ブラシタイプとはワイヤーにフィラメントを巻いた製品で、ゴムタイプとは軸にエラストマーを二重成型した製品のことだ。つまり世の中では若干だが、毛のタイプが多く使用されているわけだ。

そして販売順位は、ブラシタイプは1位がデンタルプロ、2位がサンスター。ゴムタイプは1位が小林製薬、2位がサンスターとなっている。

また、歯間ブラシは太さサイズに日本独自の統一規格があり、現在は4SからLLまでの7段階となっている。もちろん昔はこんなに沢山の段階はなく、1995年頃まではSSとMだけだったのを、デンタルプロが徐々に広げていった歴史がある。たとえば4Sサイズは同社が他社に先駆けて広く世に出したのが2010年だ。

歯間ブラシの製造技術

歯間ブラシを使用するにおいて、多くの人が感じる悩みは、「サイズが合わない」と「折れる」だ。いろいろ原因はあるのだろうが、巷の人達は、いかに無自覚とはいえ「乱暴」に使用しているのがわかる。適切な使用方法の認知や、複数サイズの必要性の説得など、改善点がまだまだたくさんあるわけだ。

一方、ワイヤー折れをおこしにくい技術が、製造側からはでてきている。
歴史的には、デンタルプロが1994年に溶着成型を日本で最初に導入した。従来はブラシ部を金型に置いて、ハンドル部の樹脂を射出させて製造するインサート成型を採用していたが、この方法だと人手が多く必要だった。そこで事前にハンドル部とブラシ部を別々に成型した後、この二つを熱や超音波で溶着して製造する方法に進化させることによって製造コストを下げることに成功した。

他の会社においては、通常ワイヤーが正円なのに対し楕円を使用したり、高強度ワイヤーの使用や、ハンドル部分の素材をポリエチレンではなく、より硬いポリプロピレンを使用したり、ブラシ下部のワイヤーとハンドルの結合部分を長くして応力の分散を図り、折れにくい構造にするなど、進化してきている。また、インプラント使用者などのために、ワイヤーにナイロンコートを施したり、できるだけ根本まで植毛し裸ワイヤー部分をなくしたりして、金属と金属が直接擦れないように、細かい工夫も施されている。

左からゴムタイプのI型、ブラシタイプのI型、ブラシタイプのL型
左からゴムタイプのI型、ブラシタイプのI型、ブラシタイプのL型

ワンタフトブラシの歴史

各論の3番手のワンタフトブラシというと「スウェーデン式歯磨き」そこから「イエテボリ法」なども連想される人もいるかもしれない。ただ、イエテボリテクニックは1995年の論文に基づいているし、スウェーデン人歯科医師のPer AxelssonがPMTCを最初に提唱したのも本当だが、「スウェーデン式歯磨き」という言葉はEUには存在しない。主に日本で使われている用語だ。
ライオン、サンスター、花王などが着目しなかった分野を、オーラルケアが1990年代から歯科医療従事者向けに、ワンタフトブラシ文化を広めていった歴史な中で出てきた言葉だ。だからEUでは、あくまで歯間清掃道具の一つでしかなく、特別な道具という認識はもっていない。

ワンタフトブラシの種類

日本における外国製歯ブラシといえば、全体総数では中国製が一番になるし、コルゲートやオーラルBなどのアメリカ・スイス勢も幅を利かせているが、ブランド別に細かく整理していくと、実はスウェーデンのTePeが一番になる。やはりこの辺りは「スウェーデン式歯磨き」というのが信頼されているからだと感じる。

そのTePeのワンタフトブラシが日本勢と大きく違うのは、毛の部分が「ドーム状」な点だ。通常は毛の固さ、ミル=毛の太さ違い、そして束径や植毛数の違いはあるが、歯間乳頭部に入れやすい「円錐状」が一般的であるのに対し、先端が丸く切り揃えられている。

先に断っておくが他社スウェーデン製のワンタフトブラシも含め、EUでもやはり一番種類が多いのは「円錐状」で、「ドーム状」は異端の立ち位置だ。ではなぜこのタイプが日本では受け入れられたのか? 筆者はやはり日本人は叢生が多いからではと推測している。

日本人は、オーラルケア選びは適当で、使用しているブランド名も言えないことが多いが、口腔感覚は鋭敏で、品質にはとてもうるさい。「ドーム状」は歯科衛生士がPMTCで使う、押しつけることで広がるラバーカップのような広がり方をして、歯の豊隆部をくるむような形で磨くことができ、裏側のお椀状になった部分や、歯並びが凸凹している部分にフィットする感覚が、日本人消費者に受け入れられたからではないだろうか。

左がドーム状、右がが円錐状
左がドーム状、右がが円錐状

まとめ

歯間清掃道具は約30年以上かけて、ようやく国民半数に使用されるところまで辿り着いた。それだけ日本人に歯間清掃道具を使わせるのには、長い時間が必要だったということであるし、まだ道半ばでもあるわけだ。そして、他の国のようにデンタルフロスが広がらず、歯間清掃道具の中で、おそらくもっとも使用されているのが歯間ブラシなのは、やはり「つまようじ文化」が影響しているのではないだろうか。とはいえ、筆者としては、令和時代に歯間清掃道具の使用率が急激に伸びているのは、とても感慨深い。

最後に

ここまで思いつくままに、日本人に嫌われているかわいそうな道具達について、掘り下げて書いてきた。次回の厚生労働省の「歯科疾患実態調査」は2028年頃と思われるが、この時、使用率100%近くなっていれば、世界の人々に「日本人は口が臭い」と思われなくなる日が来るのかも知れない。

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