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“高い技術”は当たり前。それ以上の価値を提供したいんです――矯正歯科 菊池香織先生 キャリア

“高い技術”は当たり前。それ以上の価値を提供したいんです――矯正歯科 菊池香織先生

歯学部生がスペシャリストに聞く! 各専門分野のシゴト事典 #1

補綴科、矯正科、保存科、口腔外科、小児歯科、インプラント科…ひとくちに“歯科”といっても、その中にある専門分野はたくさん。
将来は何かに特化した歯科医師になりたいけれど、どの分野を選ぶべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで9~10月特集では、さまざまな専門分野で活躍する“スペシャリスト”に歯学部生エディターズがインタビュー!
これまでどんなキャリアを歩んできたのか、その分野を究めるためにはどうすればいいのか、たっぷりお話を聞きました。

第1回のスペシャリストは、矯正歯科専門クリニックを経営する菊池香織先生。
先生が、矯正の中でも特に難しい「舌側矯正」にあえてチャレンジした理由とは…?

お話を聞かせてくれたのは…

菊池 香織先生

麻布十番矯正歯科室 院長

菊池 香織先生

1999年、日本歯科大学卒業。臨床研修を経て、日本歯科大学歯学部付属病院矯正歯科に入局。その後、医療法人社団至誠会 E-LINE 矯正歯科に入職し、舌側矯正を学ぶ。2005年よりフリーランスへと転身し、2015年に麻布十番矯正歯科室を開業。WSLO 世界舌側矯正歯科学会 認定医。

1999年、日本歯科大学卒業。臨床研修を経て、日本歯科大学歯学部付属病院矯正歯科に入局。その後、医療法人社団至誠会 E-LINE 矯正歯科に入職し、舌側矯正を学ぶ。2005年よりフリーランスへと転身し、2015年に麻布十番矯正歯科室を開業。WSLO 世界舌側矯正歯科学会 認定医。

インタビューしたのは…

しおりさん

東京医科歯科大学6年生

しおりさん

BRUSH歯学部生エディターズ。矯正治療を受けたことで歯科に興味が湧き、歯学部へ入学した。座右の銘は「努力は必ず報われる」。

BRUSH歯学部生エディターズ。矯正治療を受けたことで歯科に興味が湧き、歯学部へ入学した。座右の銘は「努力は必ず報われる」。

迷ったときは、一番大変な方を選んで

しおり: 私は中学時代に矯正治療をして自分も歯科医師になろうと思ったので、今日はお話を伺えるのがとてもうれしいです! まず、先生が矯正歯科を志したきっかけからお聞かせいただけますか?

菊池: 私も矯正で人生が変わったと思ったのが、この道に進んだ大きなきっかけなんです。

しおり: わあ、同じですね!

菊池: すごい治療だと感激しますよね。それから今思うと、性格矯正に向いていたのかもしれません。

しおり: 性格ですか?

菊池: そう。矯正を始めるときはまず患者さんに先を見据えた治療計画を説明するけれど、それからは毎回の診療ごとに歯の状態を見てその日の治療内容を決めないといけない。だから、「何年も先まで綿密に計画を立てられる力」と、「瞬発的な判断力」の両方が必要なんです。私は学生のときから試験勉強の計画を立てたりするのが好きだったし、その場でいろんなアイデアを出すのも得意だから、矯正向きだったんだなと思いますよ。

しおり: なるほど…。性格の向き不向きは考えたことがなかったです。

菊池: 学生のときって、「実習でワイヤー曲げるのが得意だから矯正向き」みたいに思いがちじゃないですか? でも実は全然関係ない。

しおり: えっ、そうなんですか!? 私、実習ですごく時間がかかっちゃって…。

菊池: 大丈夫大丈夫。矯正に進んだら、いやでも練習させられるから(笑)。

しおり: (笑)。臨床研修後は大学病院に入局されたんですか?

菊池: そうです。卒業時点で矯正の技術はゼロの状態だったので、基礎からじっくり学びたくて。座学もあるし、論文の読み方から教えてもらえるし、勉強するには本当にいい環境でした。ただ当時の医局では、新人のうちはお給料がもらえなかったんですよね。だから3年間のカリキュラムを終えたときに経済的に自立したいと思って、矯正専門クリニックへ入職しました。

しおり: お金がもらえないのは厳しいですね…。

菊池: 医局時代は先輩にごはんを食べさせてもらったり、バイトを紹介してもらったり、周りの人たちに助けられていました。最近、当時お世話になった先輩が矯正治療を受けに通ってくれていて。舌側矯正を勉強したいと言って、毎回治療のときに動画を撮っていますよ(笑)。こうやって恩返しできるようになったんだと思うと感慨深いです。

しおり: すてきなお話です。クリニックに就職されてから開業されるまでの経緯を伺えますか?

菊池: 3年ほど勤めた後、少し自由に働きたいなと思うようになって、フリーランスに転向しました。ただ、最初は午前だけ仕事を入れたりしてゆっくりできていたんですが、だんだんいろんなクリニックからお声がかかり、最終的には15軒を掛け持ちすることになって。

しおり: 15軒! それはかなり忙しそうですね。

菊池: 毎日違う時間に、違う場所で、違うスタッフと一緒に働く…これが結構大変なんですよ。50代になったときにこの働き方を続けるのは難しい。それなら自分のクリニックを持った方がもっと長く仕事ができるんじゃないかと思って、開業を決めたんです。

しおり: お話を伺うと、本当にいろんな働き方を経験されていたんですね。私はまだ将来どんなスタイルで働くか迷っているんですが、一番楽しかった働き方と大変だった働き方は何ですか?

菊池: それはもう、どちらも開業です。費用もいるし、一から医院をつくらなきゃいけないし、スタッフの育成も必要だけれど、すべて自分の理想を追求できる。そして何より、一番喜びがダイレクトに帰ってくるんです。だから何事も迷ったときは、より大変な方を選ぶといいですよ。苦労はするかもしれないけれど、挑戦した人にしかわからない喜びがありますから。

しおり: なんだか勇気が湧いてきました!

“疑いの目”をきっかけに、舌側矯正の道へ

菊池先生の1週間のスケジュール

診療日
(週5日)
ビジネスパーソンの患者さんが多いため、平日の午前中は休診。語学学習に充てるなど有意義に過ごす。
1日の来院は20名ほどで、1回の診療時間は経過によって5分から2時間まで幅広い。歯科衛生士も歯科医師と同じクオリティで診療できるよう、空き時間には直接指導を行っている。
休診日
(週2日)
クリニックは基本的に週2日が休診で、曜日は週によってさまざま。
休診日もフリーランス時代に働いていたクリニックで診療を行うことが多いため、丸1日休みを取るのは月に3、4日ほど。スタッフにはしっかり休んでもらうようにしているが、自身は休日がなくてもまったく苦にならない。

しおり: 矯正する人は年々増えているように感じますが、実際にニーズの変化は感じられていますか?

菊池: 私が歯科医師になった25年前から比べて、ものすごく増えています。私が子どもの頃は“一部の特別な人だけの治療”というイメージがあったけれど、だんだん一般的に手が届くようになってきたのがひとつ。それから、舌側矯正やマウスピースなど、いろんな治療方法を選べるようになったのも大きな理由だと思います。

しおり: たしかに、最近は見えない矯正も充実していますよね。

菊池: 私のクリニックだと、ワイヤーだけでも5種類用意していて、費用や見た目など患者さんのプライオリティに合わせて選べるようになっています。「上はワイヤー、下はマウスピース」のような組み合わせもできますよ。

しおり: それはいいですね! これからもさらに治療法は増えていくんでしょうか。

菊池: より快適な方法にカスタマイズできるようにはなっていくと思います。ただもちろん、症例によっては合わない治療法もある。だから、確かな知識と技術のある歯科医師が「あなたにはこの方法が合っていますよ」と判断することが重要なんです。

しおり: 選択肢が多いからこそ、歯科医師の知識が問われてくるんですね。先生は舌側矯正に注力されていますが、やはりニーズは高いですか?

菊池: 6割ほどの患者さんは舌側を選択されますよ。今は都心部だと特に、矯正を考える人のほとんどが「舌側」や「マウスピース」を検索していると思います。ただ、まだ導入している歯科医院は少ないんですよね。

しおり: それはどうしてですか?

菊池: とにかく手技が難しいんです。表側の矯正がひと通りできるようになった人でも、いきなり新入生に戻る感じ。裏側は見えにくいから患者さんに大きく口を開けてもらって、下からのぞき込んで処置をするんだけれど、ブラケットにワイヤーを入れることすらできないし、患者さんはだんだん疲れてくるし、腰は痛いし…。

しおり: うわあ、表側とは何もかもが違うんですね。

菊池: 今となっては、指1本分くらい口を開けてもらえれば直視しなくても処置できるようになりましたが、初めは大変でしたね。

しおり: 直視しなくてもできる…すごいです。 そもそも先生はなぜ舌側矯正を始められたのでしょうか?

菊池: 大学病院にいた頃、周りの先生たちがみんな「舌側矯正では治らないだろう」と言っていて。高い技術が必要だから、効果を出すのが難しいと思われていたんでしょうね。でも私は、やったことがないのに否定するのはいやだった。ちょうど経済的自立を考えたタイミングだったので、自分で確かめてみようと舌側矯正が得意なクリニックに就職したんです。

しおり: そこで、舌側矯正の魅力を知ったんですね。

菊池: そうです! こんなにクオリティの高い治療ができるんだと衝撃でした。舌側でも難しい症例に対応できるよう努力する先生方の姿にも感激しましたね。きっかけは「本当に治るのか?」という疑いの目でしたが、今では若いうちに勉強しておいてよかったと心から思っています。

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