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歯科をグローバルに知らなければ、真の専門医にはなれない――根管治療 橋爪英城先生 キャリア

歯科をグローバルに知らなければ、真の専門医にはなれない――根管治療 橋爪英城先生

歯学部生がスペシャリストに聞く! 各専門分野のシゴト事典 #8

補綴科、矯正科、保存科、口腔外科、小児歯科、インプラント科…ひとくちに“歯科”といっても、その中にある専門分野はたくさん。
将来は何かに特化した歯科医師になりたいけれど、どの分野を選ぶべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで本特集では、さまざまな専門分野で活躍する“スペシャリスト”に歯学部生エディターズがインタビュー!
これまでどんなキャリアを歩んできたのか、その分野を究めるためにはどうすればいいのか、たっぷりお話を聞きました。

第8回のスペシャリストは、精密根管治療に特化した歯科医院を経営する先生。
専門の医院だからこそ実現できることとは何なのでしょうか?

お話を聞かせてくれたのは…

橋爪 英城先生

橋爪エンドドンティクスデンタルオフィス 院長

橋爪 英城先生

1989年、日本大学松戸歯学部卒業。日本大学大学院松戸歯学研究科を修了後、1996年に日本大学海外派遣研究員としてアメリカへ。帰国後は日本大学松戸歯学部講師を務め、2010年に退職。都内の歯科医院で分院長を務めた後、2012年、専門歯科医院による連携チーム「TEAM東京」の一員として、橋爪エンドドンティクスデンタルオフィスを開業した。日本歯科保存学会 歯科保存治療専門医。

1989年、日本大学松戸歯学部卒業。日本大学大学院松戸歯学研究科を修了後、1996年に日本大学海外派遣研究員としてアメリカへ。帰国後は日本大学松戸歯学部講師を務め、2010年に退職。都内の歯科医院で分院長を務めた後、2012年、専門歯科医院による連携チーム「TEAM東京」の一員として、橋爪エンドドンティクスデンタルオフィスを開業した。日本歯科保存学会 歯科保存治療専門医。

インタビューしたのは…

しゅんぞーさん

昭和大学4年生

しゅんぞーさん

歯学部生エディターズ。救急医療を研究する部活に所属している。趣味は料理、フィルムカメラ撮影、ギター演奏。

歯学部生エディターズ。救急医療を研究する部活に所属している。趣味は料理、フィルムカメラ撮影、ギター演奏。

治療回数が少ないほど予後がよくなる

しゅんぞー: 先日授業で根管治療について学び、面白いなと思っていたところだったのでお話を伺えるのを楽しみにしてきました! まず、先生が根管治療を行う際の流れについて教えていただけますか?

橋爪: 大まかな治療内容は授業で学んだことと同じだと思うけれど、この医院の一番の特徴は回数が少ないことです。基本的には2回で治療を済ませるようにしています。

しゅんぞー: 2回で! 通常5、6回はかかるものだと思っていました。

橋爪: 保険診療だとそうなるかもしれません。でも、治療回数は少なければ少ないほど患者さんの予後が良いんですよ。私の場合はすべて自費診療で、1回目で根管拡大と形成、清掃まで、2回目で根管充填を行います。治療前に精密検査とコンサルテーション、治療後に仮歯の装着を行うので、実際に来院していただくのは4回。その後は提携している審美修復専門の医院へつなぎます。

しゅんぞー: 早く治療が終わると患者さんもうれしいですよね。なかなか根管が開かないケースもありそうですが…。

橋爪: 最初にCTを撮って、いろんな角度で見れば根管の場所は絶対わかるんですよ。その後マイクロスコープを使って、どの角度からバーを入れるか決めればちゃんと開く。1回の治療にじっくり1時間半から2時間かけるから、正確な判断ができるんです。

しゅんぞー: 角度はどうやって決めるんだろうと思っていました。実習をしたときも全然わからなくて。

橋爪: とにかくいろんな角度から見てみることが大事だね。必ずしも歯列が正しいとは限らないし、歯軸が傾いていることもあるから、常に斜めから確認するんです。たとえば野球で外野手がホームランボールを捕るとき、真正面から下がっていくと遠近感がわからなくてエラーになってしまうでしょう。だから斜めから走って行って、ボールがどこを通るか見定めていく。それと同じで、歯とバーをずっと正面から見ていると角度を見失ってしまうわけです。

しゅんぞー: なるほど! 正確な判断のためには経験も必要そうですね。

橋爪: これまでは経験と感覚で治療している面もありましたよ(笑)。でも、これからの根管治療は熟練度に左右されないものになっていくはず。私もいま、ドイツのメーカーと一緒にガイドシステムを作っているんです。

しゅんぞー: すごい! インプラントシステムのようなものですか?

橋爪: そうそう。「この位置に穴を開ければ根管にたどりつく」というのを教えてくれるシステムです。海外ではすでに実用化されているけれど、日本ではまだ使われていないんですよ。

しゅんぞー: それを先生が開発されているんですね。ぜひ使ってみたいです!

「自分の歯で噛みたい」という想いに応える

しゅんぞー: 根管治療をすることで、患者さんにはどんなメリットがありますか?

橋爪: まずは痛みが取れること。それから、自分の歯を残せることです。内側を削るので歯がもろくなってしまう面もあるのですが、放っておくと抜かなければいけない歯を残すことができます。

しゅんぞー: やはり自分の歯が一番なんですね。

橋爪: 噛んだときの感覚が全然違います。ものを噛むと、歯根膜にものが当たったという情報が脳に伝わって顎の筋肉が動きますよね。そこがひとつの回路でつながっているから、インプラントにすると感覚が変わってしまうんです。

しゅんぞー: 患者さんも「歯を残したい」という方が多いですか?

橋爪: はい。他の医院で「抜歯するしかない」と言われたり、何度治療しても良くならないという方がたくさんいらっしゃいますよ。皆さん、将来的には歯を失ったとしても、できる限り最後まで残しておきたいと言われます。

しゅんぞー: セカンドオピニオンの方も多いんですね。

橋爪: そうですね。最近は「他院でラバーダムをかけてくれなかったから」という方も多くなってきました。

しゅんぞー: えっ! 患者さんもよくご存知なんですね。

橋爪: 医院ホームページの検索ワードも「抜髄」や「感染根管治療」といった専門用語が増えています。皆さんすごく詳しいですよ。

しゅんぞー: もっと勉強しなきゃ…。実習ではラバーダムを必ずかけていますが、使わない先生もいらっしゃるんですか?

橋爪: 保険診療の場合は1回の治療時間が短く、ラバーダムをかけるだけで時間のほとんどが終わってしまうこともあって、歯科業界全体ではまだまだ使用率が低いんです。でも、私にとっては必須のアイテム。感染制御はもちろん、術野がしっかり見えるのが良いですよね。根管をミラーで見るとき、ラバーダムをしていないと唾液や息でミラーがくもってしまいますが、治療をする歯だけを露出させればその心配もありません。

しゅんぞー: 手間がかかったとしても、そのぶん大きなメリットがあるんですね。先生が治療で達成感を得るのはどんなときですか?

橋爪: 何といっても、治療が想定通りにいったときです。難症例になるほど治療計画が立てづらいから、想像力が必要になります。たとえばこの患者さんは根尖病巣ができていたけれど、1回の治療でここまでキレイになりました。

しゅんぞー: 本当だ。すごい!

橋爪: ちゃんとしたステップを踏めば治るものですが、その計画がなかなか難しい。治療をして、次に来院されたときにきちんと治っているとうれしいですね。

しゅんぞー: 未来を見据えた計画を立てることが大切なんですね。先ほど「これからは熟練度に左右されないようになる」とおっしゃっていましたが、今後の根管治療はどんなふうに進化していくと思われますか?

橋爪: さらにAIが活用されていくと思います。たとえば患者さんのビッグデータを読み込むことで、CTの情報だけで診断ができるようになったりね。成功体験のデータを使っているから、いまのAIはどんどん精度が高まっているんですよ。

しゅんぞー: 診断まで機械がしてくれるようになるんですね!

橋爪: とはいえ、その先の治療をするのは私たち歯科医師。診断をAIが担ってくれるぶん、技術はきちんと磨かなければいけませんよね。

しゅんぞー: はい、頑張ります!

橋爪先生の愛用アイテム

根管治療には欠かせないニッケルチタンファイル。1本ずつ滅菌パックされたものを使用している。
根管治療には欠かせないニッケルチタンファイル。1本ずつ滅菌パックされたものを使用している。
シロナ社の「X-スマートProプラス」。ニッケルチタンファイルを自動的に操作し、安全な治療を可能にしてくれる。
シロナ社の「X-スマートProプラス」。ニッケルチタンファイルを自動的に操作し、安全な治療を可能にしてくれる。

「歌って踊れる歯医者」を目指してほしい

しゅんぞー: そもそも、先生が根管治療に興味を持ったきっかけは何でしたか?

橋爪: 学生時代の実習です。当時は患者さんを配当してもらって診断や治療計画の立案から行っていたんですが、主訴が補綴だったとしても、まずは再根管治療が必要になるケースがすごく多くて。根管治療をしても成功率は低いんだと知って、それなら自分でやってみようと思ったんです。

しゅんぞー: 補綴をするにも、土台となる歯をまず治さないといけないんですね。卒業後は大学院に進まれたんですか?

橋爪: はい。歯内療法教室に残って、臨床よりも研究に力を入れていました。アメリカに2年間留学して、免疫の研究もしていましたよ。

しゅんぞー: アメリカにいらっしゃったんですか。私もよく周りの先生から「留学か大学院進学のどちらかをした方がいいよ」と言われるので、考えていたところでした。

橋爪: 留学をするときは大学から奨学金や推薦をもらって送り出されることが多いから、いずれにせよ大学院には行った方がいいかもしれないね。専門分野を身につけていくなら博士の肩書きがあった方が患者さんへの印象もいいし、何より理論に基づいて考える力がつくことが大学院の大きなメリットだと思います。

しゅんぞー: 理論に基づいて考える…。

橋爪: そうです。臨床では問診をしながらロジックを組み立てて診断しますよね。その力が、大学院での論文執筆で培っていけるんです。「歯がないから入れ歯を作る」のではなく、「なぜ歯がなくなったのか」から考える。それによって、適切な治療計画を立てられるようになるんです。

しゅんぞー: 臨床に必要な力も大学院で得られるのは魅力的です。先生は、大学院の頃から将来は臨床をすると決めていたんですか?

橋爪: はい。留学後は大学病院で、22年間根管治療に取り組んでいました。ただ、当時は現在のように機材が普及していなかったこともあって、大学病院で行っていたのは基本的な根管治療が中心。それ以上の、さまざまな機材を使った精密根管治療はすべて開業してから身につけました。いまある技術が10だとしたら、大学病院で学んだのは3くらいかな。

しゅんぞー: そうなんですか! 開業を決めた理由は何ですか?

橋爪: 現在提携をしている審美修復の先生から誘われたのがきっかけです。日本では一つの歯科医院がほぼすべての治療を行うけれど、アメリカではもっと細分化されていて、歯周病専門や小児専門、レントゲン撮影専門の医院もあるんですよ。

しゅんぞー: レントゲン専門! 本当に細かい。

橋爪: アメリカのように、専門の医院が力を合わせて患者さんを診る…そういう医療をやってみないかと言われたんです。それで、私は根管治療専門の医院を開業。「チーム東京」という名前で、互いの専門分野を活かして連携し合っています。

しゅんぞー: はじめから連携ありきだったんですね。これまで一般診療はご経験されていますか?

橋爪: もちろん! 大学病院を退職した後、開業するまでは他の歯科医院の分院長を務めていて、ひと通りの治療を経験しましたよ。そこは保険診療が中心で、とにかく患者さんが次から次へと来院するところ。限られた時間のなかでいかに治療を終わらせるかを考える、良い機会になりました。

しゅんぞー: 現在の「1回に時間をかける」という方針とは正反対のような…。

橋爪: そう思いきや、きちんと時間配分しないと2時間あっても治療は終わらないんですよ。いま時間通りに治療ができるのは、保険診療をしっかり経験したからだと思います。

しゅんぞー: そうか、ひとつの分野を究めるにもいろんな経験が必要なんですね。

橋爪: その通りです。特に若いうちは幅広く学んだ方がいい。この医院にも若手の先生がたくさん勤めていますが、いつも「歌って踊れる歯医者になれ」と言っています。

しゅんぞー: (笑)。オールラウンドということですね。

橋爪: それに、他分野のことを知らないと連携もうまくできません。根管治療をした後は補綴をする必要がありますが、長い間根っこだけの状態が続くと歯が下がって、補綴をする隙間がなくなってしまいます。では矯正で引っ張り出すのか、上の歯を圧下させるのか、歯肉を切ってクラウンレングスニングをするのか判断しないといけない。歯科のことをグローバルに知っておかないと、真の専門医にはなれないんです

しゅんぞー: 「真の専門医」! かっこいい響きです。私も視野を広く持たなければと思いました。

どんな治療でも、ベースは教科書

しゅんぞー: では、根管治療の道を目指す学生にアドバイスをお願いします!

橋爪: 根管治療はこれからさらに患者さんのニーズが増えていくはず。昔は“稼げない治療”なんて言われていたけれど、いまは良い治療を求める患者さんがたくさんいるし、1回で改善すれば口コミでどんどん広がっていきます。だからこそ、「根管治療が好き」だけではなくて、「人に教えられる」レベルになれるまで頑張ってほしいですね。

しゅんぞー: 根管治療は夢のある分野なんですね。私はいま4年生なんですが、学生時代にしておくべきことはありますか?

橋爪: それはもう、まず卒業することです(笑)。しかも、優秀な成績で。実は、すごく知識があるように見える先生でも、話をしていると「あまり大学時代に勉強しなかったのかな?」とわかることがあるんです。

しゅんぞー: えっ!

橋爪: 卒業後に学んだことは理解できているのに、根本的な診断が間違っているな…とかね。そうすると、患者さんにも「なぜこの治療をするのか」を説明できないし、理由のない治療に患者さんはついてきません。すべての治療のベースは教科書だから、学生のうちにきちんと勉強しておくことが大事。

しゅんぞー: 教科書って思っていた以上に重要なんですね…。でも確かに、教科書で予習してから実習をするとうまくいって楽しいと思っていました。

橋爪: そういうことです! いま学んだことは必ず自分のためになるから、「テストのための勉強」ではもったいない。ぜひ、広く興味を持って学んでいってください。

しゅんぞー: お話を聞いてやる気が出てきました。今日はありがとうございました!

インタビューを終えて

お話を聞いてわかった! 根管治療の仕事は…

先を見据えた的確な治療計画が要

他分野の知識を学ぶことも大切

今後はさらにデジタルを取り入れていく

先生の治療に対する信念に触れ、もともと感じていた歯内療法学への興味がさらに増しました。高い技術でさまざまな機材を使いこなしている先生を見て、私もさらに勉強を頑張って先生のようなプロフェッショナルな歯科医師になりたいと感じました!

関東はもちろん、大阪や名古屋、海外からの患者さんもいるという橋爪先生。いかに患者さんの負担を減らし、予後の良い治療をするかを追求しているからこそ、多くの方に支持されているんですね。

次回は、歯科麻酔を専門とする先生が登場します。お楽しみに!

撮影/泉山美代子

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