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<12月の対策講座>教科書にない臨床手順も見逃さずに! 歯内治療学・ラバーダム/隔壁法 国試&CBT

<12月の対策講座>教科書にない臨床手順も見逃さずに! 歯内治療学・ラバーダム/隔壁法

合格までナビゲート!【第117回歯科医師国家試験】年間対策レクチャー #8

歯科医師国家試験まで1ヶ月半程になってまいりました。読者の皆様は着々と準備は進んでいますでしょうか。

7月に保存系3科目の国家試験勉強法をお伝えしましたが、今回は3科目の中でも特に苦手な方が多い歯内治療の分野についてワンポイント解説を行います。はじめに、歯科医師国家試験における歯内治療学の特徴を少し解説したあと、ラバーダムとその前処置の隔壁形成について解説していきます。

国家試験における歯内治療学の問題の特徴

7月にもお伝えしたとおりですが、保存系臨床科目の中では歯内治療の分野が他の科目に比べ点が取りにくいと考えています。

歯内治療の分野で扱う疾患は歯髄炎と根尖性歯周炎のふたつにほぼ限定されます。これは、多種多様な疾患を扱う口腔外科や小児歯科と比較すると極めて限定的であると言えます。ゆえに、疾患の特徴、所見、診断、治療方針に加えて、臨床における治療の手順、使用する器具や治療のテクニックなど詳細な部分が詳しく出題されます。

修復治療は多くの学生が多かれ少なかれ臨床実習での経験があると思いますが、歯内治療を経験できる学生は多くありませんので苦手意識のある方が多いというのがこの科目の特徴になってきます。

なので、歯内治療学の勉強の方針としては、実際には治療を経験できていないとしても教科書や実習書をよく読んで治療手順を細かくイメージしておくことが正攻法と言えるでしょう。ただし国家試験に出題がありながら、教科書では詳しく説明がない臨床手技は勉強の盲点となります。今回は、その盲点のひとつである、ラバーダムの前処置である隔壁法について解説していきます。

ラバーダム処置と隔壁法の手順

まず、歯科医師国家試験では歯内治療のすべての症例でラバーダムが必須です(もちろん歯科医師国家試験に限らずですが…)。

見学や歯科助手アルバイト等で、ラバーダムを掛けずに覆髄、抜髄、感染根管治療といった処置を見たことがある受験生の方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでも「実際の臨床ではラバーダムをかけないこともあるのだな」程度に思ってください。

大事なことなので2度言いますが、歯科医師国家試験では覆髄、抜髄、感染根管治療などすべての歯内処置はラバーダムが必須です。ということは、ラバーダムが掛からないような歯質の高さが低くなった歯にはコンポジットレジンにより隔壁を作る必要があります。具体例の口腔内写真を見てみましょう。

画像出典:伊佐津克彦, & 長谷川篤司. (2007). 歯内療法前処置へのフロアブルコンポジットレジンの応用. 昭和歯学会雑誌, 27(4), 305-308.
画像出典:伊佐津克彦, & 長谷川篤司. (2007). 歯内療法前処置へのフロアブルコンポジットレジンの応用. 昭和歯学会雑誌, 27(4), 305-308.

う蝕を除去していくと、上の写真のようにラバーダムがかからないような状態になることがあります。そのような場合に下の写真のようにコンポジットレジンを使い隔壁を製作することで、ラバーダムを掛けることができます。

具体的なイメージを持ったところで、隔壁法の適応と臨床手順について一緒に確認していきましょう。まず、隔壁法の適応となる歯は、「歯内治療を行う歯で、う蝕を完全に除去した後の歯質が一部でも歯肉縁以下となる歯」です。

頬舌側に歯質がなくクランプがかけられない歯は隔壁が必要な歯としてイメージがしやすいと思いますが、それだけではありません。歯質がない部位がクランプと関係ない近遠心であっても歯肉縁よりも下に歯質がある場合は、ラバーダムがフィットせずその部位から唾液や歯肉溝滲出液が入り込んでしまうので、歯全周が歯肉縁上となるように隔壁を作る必要があります。代表的な隔壁法の手順を以下にまとめておきましたので確認してみてください。

加えて、もう一歩踏み込んでおきましょう。歯質が歯肉縁下にあり歯肉が被さっている場合は歯肉が邪魔をして隔壁を作ることができません。そのような場合は、浸潤麻酔後に電気メスやレーザー(場合によっては普通のメス)で歯肉を切除することになります。臨床的には組織の切除とともに止血もできる電気メスで行うことが多いです。この歯肉切除は問題では歯肉整形として表されることもあります。

最後に歯科医師国家試験問題で力試し

それでは、歯科医師国家試験の問題で力試しをしておきましょう。

111回 B-74

32歳の男性。上顎右側第二大臼歯の自発痛を主訴として来院した。歯の保存が可能と診断し、麻酔抜髄を行うこととした。初診時のエックス線画像(別冊No. 15 A)と修復物除去後の口腔内写真(別冊No. 15B)を別に示す。
無菌的処置を行うために必要なのはどれか。2つ選べ。

a 隔壁形成

b 歯間離開

c 歯肉圧排

d 歯肉整形

e ケミカルサージェリー

正答:a 隔壁形成、d 歯肉整形

写真Bから、上顎右側第二大臼歯の口蓋側の歯質の上に歯肉が被さっており、当然ながらう蝕を除去すると歯質が歯肉縁下となることがわかります。そして問題文から、この歯には麻酔抜髄を行うため、この歯にはラバーダムを掛ける必要があります。しかしながら、歯質が歯肉縁下にあって歯肉が邪魔をしているので、コンポジットレジンによる隔壁の作製がこのままではできません。

続いて、近年の国家試験から第2問目です。

114回 B-57

59 歳の女性。上顎左側第二小臼歯の冷水痛を主訴として来院した。昨夜食事時に破折したという。└5は歯髄電気診で生活反応を示した。診断をした結果、歯髄保存療法を行うこととした。初診時の口腔内写真(別冊No. 18A)、エックス線画像(別冊No. 18B)及びある処置時の口腔内写真(別冊No. 18C)を別に示す。
次に行うのはどれか。1つ選べ。

a 歯肉切除

b 感染歯質の除去

c MTAセメントの貼付

d ケミカルサージェリー

e セルフエッチングプライマー処理

正答:a 歯肉切除

Cの写真は破折片の除去後の写真と考えられます。舌側の歯質は歯肉縁下にあることが分かります。断面の中央には露髄を思わせるような小陥凹も見られます。問題文では歯髄保存療法を行うとありここでは覆髄を行うと考えられます。覆髄は歯内治療ですので、ラバーダムが必要ですね。でも歯質が縁下にあるということは…そうです!歯肉切除が必要ですね。

いかがだったでしょうか。これらの問題は近年の歯内治療の問題としてはやや難問の部類に入りますが、同じテーマで2度も出題されているため、また同じようなシチュエーションの問題が出ることも十分に考えられるでしょう。

そして、歯内治療における隔壁の作製を含んだ問題は毎年のように出題されています。

101 C-7 隔壁作製を考慮する場合の抜髄
104 B-43 歯内治療における隔壁の目的
109 C-67 隔壁作製の前に注意するべきこと、確認すること
111 B-74 歯肉切除を伴う隔壁作製(上記で解説)
113 B-66 感染根管治療の手順(隔壁の作製を含む)
114 B-57 歯肉切除を伴う隔壁作製(上記で解説)
114 D-74 感染根管治療の手順(隔壁の作製を含む)

特に近年は出題が多いのがわかりますね!

また、これを読んでいる皆様の多くはご理解できているとは思いますが、「保存修復学の隔壁」(トッフルマイヤー型リテーナーやポリエステルストリップスなど)と「歯内治療学の隔壁」は全く違うものなので注意してください!

次回はいよいよ国試直前の1月に公開! 最後の確認をして自信をつけていきましょう。

※ブループリントHP

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