<9月の対策講座>何をどこまで覚える? 衛生学の効率的な勉強法
合格までナビゲート!【第117回歯科医師国家試験】年間対策レクチャー #5 会員限定9月は歯科医師国家試験の模試が始まるシーズンですね。
自分が全国的にはどれくらいの順位にいるのかが気になるところだと思いますが、模試は自分が苦手とする問題がどこなのかを把握するには最適です。既に模試を受けた方はよく復習し、受けそびれてしまった方は次回からしっかり受けておきましょう。
歯科医師国家試験の勉強法について一緒に考えていく本連載ですが、今月は衛生学の範囲を扱っていきます。
衛生学範囲の出題範囲
衛生学分野は、科目別にみると多くの出題がある範囲です。問題数が多いということは、それだけ合否に影響してくる可能性が高い範囲でもあります。なかなか勉強時間が取れていない方で衛生学に苦手意識を感じる方もいると思いますが、この機会に衛生学を仕上げていきましょう。
まずは歯科医師国家試験における衛生学の重要事項を歯科医師国家試験の出題基準や教科書の記載を反映させながら列挙してみました。(いわゆる社会歯科学、法歯学の範囲も含んでいます。)かなり範囲は広いですが、苦手だと感じるキーワードや知らない単語があれば、勉強して押さえておくようにしましょう。
衛生学の特徴と勉強のコツ
衛生学範囲の勉強法は、臨床系科目や他の基礎系科目と衛生学とは少し違います。衛生学は高校でいう歴史や地理のような「文系科目」のように、暗記を要する範囲が多いからです。
特に法律の範囲は似たような内容のものと混同しないように覚えていく必要があります。
また特に法律の内容や近年の実態など衛生学の範囲は変化していきますので、最新の教科書や参考書、大学の授業の資料を使って勉強をするようにしてください。暗記の多い衛生学範囲の勉強に関しては以下のようなコツがあると考えています。
●項目横断的にまとめを作る
●覚える量を圧縮する
●覚えられない項目は語呂合わせと作る
それぞれについて解説していきます。
項目横断的にまとめを作って確認しよう
ここでは歯科医師の義務を例に考えてみましょう。歯科医師の義務の項目の多くは歯科医師法にまとめられていますが、刑法など歯科医師法以外の範囲にも記載されています。そこで、歯科医師法、刑法、医薬品医療機器等法のように各法律を勉強したのちに、歯科医師の義務という項目に合う内容をまとめます。
こうした、教科書や大学の資料に直接的に列挙されていない項目をまとめることで、自分が意識を向けられずに覚えていなかった部分に気づくことができます。過去の国家試験で出題されたことある範囲についてまとめを作るのも良いでしょう。過去問以外の他の項目が頭に入っているか確かめることができます。こうしたまとめ資料を自分なりに作ることで他の受験生と差をつけることができるでしょう。
歯科医師の義務 まとめ
<歯科医師の義務(歯科医師法)>
・臨床研修 →1年以上、管理者になれる
・応招義務 →罰則規定なし
・診断書の交付義務 →拒んではいけない
・無診察治療等の禁止 →診断が必要
・処方箋の交付義務 →例外あり
・療養等の指導(保健指導)の義務 →治療後に行う
・現状届を出す義務 →2年に1回臨床やってなくても
・診療録の記載・保存義務 →当日中に書く、5年保存
・再教育研修 →処分を受けた後の再免許に必要
<歯科医師の義務(歯科医師法以外!)>
・守秘義務(刑法)
・副作用の報告義務(医薬品医療機器等法)
・患者への説明義務(民法)
・善良なる管理者の注意義務(善菅注意義務)(民法)
覚える範囲を圧縮して、必要十分な範囲を覚えよう
介護サービスをまとめた下のような表を見たことがある方は多いでしょう。細かい内容が多くこれを全て覚えられる人は多くないのではないでしょうか。このような場合は、1から10まで全てを覚えるのではなく、必要なところを抜き出して覚える範囲を最小にしてから記憶していきます。
※厚生労働省ウェブサイトより引用
まずは介護サービスには介護給付と予防給付があります。予防給付を行うサービスは名前のどこかに「予防」とついています。これさえ覚えていれば大丈夫です。予防給付の中の細かい事項はとりあえず覚えなくても大丈夫です。
続いて、介護給付を行うサービスの方はしっかり覚えましょう。介護給付を行うサービスには大きく分けて3つあります。施設サービス、居宅サービス、地域密着型サービスの3つです。この3つがあることは覚えてください。
施設サービスは介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護医療院、介護療養型医療施設の4つがあります。介護療養型医療施設は2023年度末で完全廃止になるので、介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護医療院の3つで覚えてもいいかもしれません。
地域密着型サービスは覚える裏技があります。地域密着型サービスには「型」がつくと覚えてください。上の表を見ても、夜間対応「型」訪問介護、小規模多機能「型」居宅介護というように「型」がすべてに付きます。そして、居宅サービスはそれ以外と覚えてください。
このように全てをただただ暗記するのではなく、列記された内容の特徴を覚えることや覚えるべき部分を覚えてあとはそれ以外とすることで問題にも十分に対応できるようになります。では確認問題を1問解いてみましょう。
介護保険における、居宅サービスはどれか。1つ選べ。
a 短期入所生活介護
b 介護老人保健施設
c 小規模多機能型居宅介護
d 介護予防居宅療養管理指導
e 介護予防小規模多機能型居宅介護
正答:a
bは施設サービスですね。d,eは「予防」がついているので予防給付を行うサービスです。cは「予防」がついていないけど、「型」がついているので、地域密着型サービスです。
残ったaが居宅サービスです。c~eは「居宅」という字が含まれていますが、居宅サービスではないのです。
覚えられない時は語呂合わせを有効活用しよう
語呂合わせを作って覚えることに苦手意識を感じる方もいらっしゃると思いますが、結論からいって語呂合わせは暗記科目に非常に有効な手段です。まとめることで覚えることができている範囲については語呂合わせを作る必要はありませんが、何度も忘れてしまう範囲や覚えられない範囲については語呂合わせを作って覚えると良いでしょう。
覚えやすい語呂合わせとは、
1.簡潔で覚える部分が分かりやすい
2.内容にインパクトがありイメージしやすい
という条件を満たしたものだと考えています。
ここでは、労働安全衛生法で定められた歯科医師による健康診断が必要な業務の語呂合わせを考えてみましょう。
<労働安全衛生法により歯科医師による健康診断が義務づけられている業務>
塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りん、その他、歯またはその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉塵を発散する場所における業務
語呂合わせ
→※小龍房、ありえん不倫漏洩
架空の中華料理店「小龍房」で信じがたい不倫があり、そのことが他の人に知られてしまったシーンをイメージしてみてください
小→硝酸
龍→硫酸
あり→亜硫酸
えん→塩酸
不→フッ化水素
倫→黄りん
漏洩→労働安全衛生法
内容にインパクトがありイメージしやすい語呂合わせの方が忘れにくいと言えます。ただし、インパクトを重視するあまりに文章が長くなってしまったり関係ない語句が多数入ったりすると逆に覚えにくくなる場合があります。
このように自分で資料を作成するだけで、他の受験生と差をつけることができるでしょう。ぜひ活用してみてください。
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