歯科医師を志す人のキャリア磨きを応援! 歯科医師を志す人のキャリア磨きを応援!
SHARE!

LOGIN

BRUSH会員ログイン

BRUSHで登録したメールアドレスとパスワード以外にも、
  • 「クオキャリア歯科医師」にすでに会員登録されている方
  • 歯科医師合同就職説明会「MEETUP」に参加されたことのある方
  • クオキャリア「歯科医師国試対策アプリ」に登録されている方(左記アイコンのアプリです)
上記に該当する方は、ご登録の際のメールアドレスとパスワードでログイン可能です。
ログインに失敗しました。ID・パスワードが間違っているか、 会員登録がお済みでない可能性があります。
こんな歯科医師見つけました!その③ 企業運営の診療所勤務 鈴木秀典先生 キャリア

こんな歯科医師見つけました!その③ 企業運営の診療所勤務 鈴木秀典先生

開業医だけじゃない! さまざまな道で輝く歯科医師たち #4

歯学部卒業後の進路は、「開業医に就職」「大学に残る」だけだと思っていませんか?
実は、それ以外にもいろんな道があるんです!

特集第2回から4回は、実際にさまざまな道で活躍する歯科医師3人にインタビュー。なぜ今の道を選んだのか、仕事のやりがいは何か、たっぷり話してもらいました。

第4回に登場してくれたのは、サンスター財団附属千里歯科診療所の所長、鈴木秀典先生。一般の歯科医院とは異なる、“企業の診療所”だからこそできる取り組みとは?


鈴木 秀典 先生

サンスター財団附属千里歯科診療所 所長

鈴木 秀典 先生

岡山大学卒業。同大学院インプラント再生学分野で研究した後、1999年にサンスター財団入社。2015年より、千里歯科診療所の所長を務める。スタディーグループ「ブレイクスルー大阪」を主宰するほか、セミナー講師や執筆の実績も多数。

岡山大学卒業。同大学院インプラント再生学分野で研究した後、1999年にサンスター財団入社。2015年より、千里歯科診療所の所長を務める。スタディーグループ「ブレイクスルー大阪」を主宰するほか、セミナー講師や執筆の実績も多数。

歯科用品メーカーの“動く実験室”

現在、サンスター財団附属千里歯科診療所の所長を務めている鈴木先生。「サンスターグループ」の一員として、診療やマネジメントだけにとどまらず、オーラルケア商品の開発にも関わっている。

「商品開発の代表的なものでは、歯周病の治療薬『ペリオクリン』の開発に携わりました。最近では歯間ブラシの改良を行い、中間部分の毛を従来よりも長くした新商品を世に出したところです。こうした開発は、研究部門やマーケティング部門などのメンバーとミーティングを繰り返しながら、“次の商品はこの形で行こう”という方向性を決め、具体化していきます。私は歯科医師という立場から、専門知識や臨床での知見を生かしてアイデアを出したり、アドバイスをしたりしています

そして、新商品の開発段階や発売後に行う“臨床評価”も、当診療所の大きな役割だという。

「たとえば、新しいデンタルリンスが歯周病の改善に本当に効果があるのか、新しい歯ブラシや歯間ブラシが、前作に比べてプラーク除去率が上がっているのか、といった評価を行います。また、実際に患者さんにお使いいただいて、使用感を調査することもありますよ。歯ブラシや歯間ブラシであれば、毛の長さや太さで使用感がガラッと変わるので、患者さんの感想をヒアリングして、商品の改良に生かしています。“動く実験室”というと、イメージがしやすいでしょうか」

実は、サンスターグループの中で、歯科医師の資格を持つ従業員は千里歯科診療所にしかいない。そのため、専門性の高いコンサルティングや臨床評価を行える唯一の存在という位置付けで、グループ内で大きな役割を担っている。しかし、開発や臨床試験にはさまざまな制約もあり、苦労は尽きないそうだ。

「歯科で扱う商品には、医薬品、医薬部外品、化粧品などさまざまなカテゴリーがあります。それぞれに基準が定められていて、特に医薬品や医薬部外品の場合は、臨床試験をするだけでも、かなり厳しい規制や煩雑な手続きがあるんです。そのため、一つの商品の開発に、何億円というお金や、数年という時間がかかることも普通。“これを世の中に出すんだ”という強い覚悟と、企業としての体力が必要とされます」

普段ドラッグストアなどで何気なく手に取られている商品も、さまざまな過程や苦労を経て生み出されているのだ。

「さらに開発した後も、『その商品をどう売るか』という販売促進について、営業部門と話し合ったりもします。自分が苦労して良い商品を作っても、それを実際にお客さんの手元に届けるというのは、また別の難しさがあるんですよね。でも、こうした経験も、企業の中にいるからこそできるものなんです」

鈴木先生の1週間の仕事スケジュール

月曜日 研究開発のメンバーと新しく作る歯ブラシについてミーティング。
火曜日 歯周病治療を中心に、インプラントやセラミック治療も行う。
水曜日 営業メンバーと、新発売の歯間ブラシの販促について話し合う。
木曜日 休診日。本社の役員と打ち合わせを行うことも。
金曜日 新商品の使用感を患者さんに聞いたり、カタログ用の臨床使用例写真を撮影したり。
土曜日 治療後にミーティング。スタッフの自主性を尊重するため、医院づくりや診療に関する取り組みは基本的に任せている。
日曜日 休診日。学会や、自身が主宰するインプラントのスタディーグループに参加。

大きな組織だからできる、大きな仕事

入職から現在まで約25年間、サンスターグループ内の数少ない歯科医師として幅広く活躍している鈴木先生だが、もともとは独立開業を目指していたという。

「岡山大学を卒業してからは、大学に残ってインプラントの研究や教育をしていました。そこで5年間過ごした後、地元の関西方面で就職先の歯科医院を探すことにしたんです。勤務医としてしばらく働いたら、資金を貯めて開業するつもりでした。当時は、大学に残るか自分で開業するかの二つしか、将来の選択肢をイメージできなかったんですよね。

そんなとき、この診療所で働いていた大学時代の先輩から『サンスターで働いてみない?』と誘いを受けて。これからインプラントを臨床で導入しようというタイミングだったので、大学でインプラントをやっていた僕が適任だと思ってくれたそうなんです。そこでここに入職したんですが、正直なところ、『長くいて5年だろう』くらいに考えていました」

ところが、そこから5年ほどたって、いよいよ開業に向けたプランが固まったころ、鈴木先生に大きな転機がおとずれる。

「当時の僕の上司が退職することになり、診療所の管理者を任せたい、というオファーをもらったんです。このときは、かなり迷いました。本当はいつ開業することを伝えようかと考えているような状況でしたから(笑)。自分の父や妻の父など、人生の先輩たちにも相談してみたところ、『期待されているうちは、そこでやってみた方が良いんじゃないか』という意見を多くもらって。その声に背中を押され、もっとここで仕事の幅を広げてみたいと思うようになり、サンスターに残ることを決めました」

こうして、診療所の実質的なトップの立場となった鈴木先生。だが実は当時、千里歯科診療所が担っていた業務は、一般的な歯科医院と同様に“患者さんの診療”のみだった。

「せっかくここに残るのであれば、普通の歯科医院ではなく“企業の診療所”にいるメリットを生かして、ここでしかできない仕事をしたい。それが、当診療所で働き続ける上での、僕のモチベーションになりました。そこで、サンスター本社の開発部門と深く関わるようになったんです。」

そして実際に商品開発に携わり始めると、臨床だけでは味わえなかった、新たなやりがいが見えてきたという。

「あのとき開業をしていたら、もしかすると人気の歯科医院になっていたかもしれません。大成功を収めて、いくつもの分院を出していた可能性だってあります。ただ、それで健康にできる患者さんの数というのは、日本や世界全体で見れば、ほんの一握りです。でも、企業で人の健康に役立つ商品を開発できたとしたら、何十万人、何百万人もの人に貢献できるんですよね。僕は今、大きな組織の中でないと経験できないことをしている。だったらそれに乗っかって、大きな仕事をやり遂げたいというふうに、徐々に自分の考え方が変わっていきました」

“予防”は、歯科医師の未来も明るくする

一方で、日々の臨床の中でも、 “オーラルケア用品メーカーが運営する診療所”ならではのやりがいを感じているという。

「世間で持たれている“サンスター”の代表的なイメージは、G・U・Mシリーズをはじめとする“歯周病のケア用品”の会社です。ですので、ここに来られる患者さんは、『歯周病を治したい』『自分の歯で一生過ごしたい』というような、歯を守る意欲の高い方が多いです。大阪の診療所ですが、中には東京からメンテナンスに通っている患者さんもいるんですよ。その期待に応えたいと強く思いながら、毎日の診療に取り組んでいます」

メンテナンスを担う歯科衛生士も多数在籍し、学会の認定を取得するなど、意欲のあるメンバーが多いという。こうした環境で働く中で、鈴木先生は歯科医師の将来像について、ある展望を描くようになった。

「昨今、歯科医師が過剰だと言われていますよね。でもそれは、“口腔の疾患を持つ患者さん”という少ないパイを取り合っているからです。最近では、健康維持のために歯科医院に通うという人が増えています。さらに全身疾患と口腔の疾患との関係もどんどん明らかになってきているので、今後はますます、口腔の健康への関心が高まるはずです。そう考えると、歯科衛生士はもちろん歯科医師も、“健康な人の健康維持”にもっと積極的に関わるべき。そのためには、歯科医師の人数はまだまだ足りていないと僕は思っています」

従来は歯科界の風潮として、“治療”に比べて“予防”を“軽んじる傾向があった。特に歯科医師に関しては、「治療のスキルが低いから、予防をやっている」という目で見られがちだったという。しかし、最近は国民皆歯科健診制度が検討されるなど、歯科医療の構造が大きく変化しつつある。その変化の中では、“治療”よりも、むしろ“予防”の方が脚光を浴びるべきだと鈴木先生は話す。

「これからの時代に求められる歯科医師というのは、歯科疾患をきちんと制御し、医科と連携して患者さんの健康を維持できる、いわば“メンテナンスドクター”です。そのような歯科医師になるためには、口腔内の状態を正しく診断できる“診断眼”や、全身疾患についての豊富な知識、そして、患者さんからの信頼を得られるコミュニケーション力が必要とされます。こうしたスキルを備えている歯科医師であれば、決して“余る”ことはなく、しっかりと生き残っていけるはずです

歯科医院は、さまざまな医療機関の中でも数少ない、“健康な人が定期的に通う場所”です。歯科医療、そして歯科医師の果たす役割は、今後ますます大きくなっていくのではないでしょうか」

企業母体の診療所で働く歯科医師の仕事データ(サンスター財団附属千里歯科診療所の場合)

初任給 30万円台
賞与 年1回
勤務時間 9:20~18:00
休日 完全週休2日制(木、日)、祝日。そのほか夏季・冬季連休など。年間休日数はサンスターグループに準ずる。
福利厚生 サンスターグループに準ずる。財形貯蓄制度、確定拠出年金制度、団体生命保険導入、各種お祝い金など。

これまで3回にわたり、さまざまな道で輝く歯科医師にインタビューしてきました。

3人の先生に共通するのは、「悪いところを治す」よりも、「病気を予防し、患者さんの健康を維持する」仕事に力を入れていること。

この記事を通じて、ぜひこれからの時代に求められる歯科医師像を考えてみてください!

文/柳原梢子

この先は会員限定コンテンツです。

記事全文をお読みいただくには、1分で出来る!会員登録(無料)が必要です。