オーディション合格! でもアイドルは、なってからが大変でした…。
元SKE48 矢作有紀奈の“歯科医師への道はひとつじゃない” #22度目まして!
連載第2回目となりますが、皆さま記念すべき第1回はお読みいただけたでございましょうか!? 今回はSKE48のオーディション時から、合格後どのようにして大学生活とアイドル活動を両立させていたかまでをお話したいと思います。
最終審査も終わり、いよいよ合格発表の瞬間。ひとりひとり名前が呼ばれるなか思ったことは、「やっぱり合格する子はみーんな若い! 」ということです。最年少なんて、まだ小学生でした。当時私は21歳。そりゃ受かるわけないよなー、と思って発表を聞いていたのですが…。
「矢作有紀奈」。
その名前が呼ばれた瞬間、飛び上がりました。え、私本当にアイドルになっちゃったの!? 本当に? その後何日も信じられなくて、自分がステージの上で歌って踊っている姿を想像してずっと浮かれてたんですけど、しばらくして落ち着いてきた頃にふと心配が頭をよぎります。「やばい、学校どうしよう…」
選択肢は3つ。
①大学辞めてアイドル一本でいく
②合格を辞退する
③一年間だけ休学してみる
これに関しては周りの人、特に家族にいやと言うほど相談しました。自分でも、紙にそれぞれのメリット、デメリットを書き出したりして…。たぶん、人生で一番悩んだかな笑。事務所側からも学業との両立はダメだ。学校を辞めるかアイドルを辞退するかにしなさいと言われ、迫る期限に焦りました。
でも、せっかく入った歯学部を辞めるという選択も、合格したアイドルを辞退するという選択もできませんでした。そうなると両親をなんとか説得して休学させてもらうしかありません。ところが、休学費用はなんと300万円! さらに名古屋への引っ越し代も加わり、親に相当な負担をかけることになりました。が、幸い母がミーハー気質だったので、ありがたいことに意外とすんなり休学費用を貸してくれました笑。
でも、休学する上で一番不安だったのは同級生に遅れを取ること。ただでさえ二浪して他の子より歳上なのにまた遅れをとるのか、復学したら勉強してきたことを忘れてしまってついていけなくなってしまうんじゃないか‥。
他にも初めての一人暮らしや、芸能界という未知の世界へ足を踏み入れることへの恐怖心など、不安要素は数えきれないくらいありました。そんな私の背中を押してくれた言葉があります。「人生は千も万も道がある」。この言葉は第1回のエッセイでもこっそり取り入れましたが、私の人生のキーワードだと思っています。
そう、たとえこの道が間違っていたとしても、歯医者さんになれなかったとしても、人生の選択肢なんていっぱいある。その言葉を胸に、休学してアイドルに専念することにしました。大学の親しい友人にだけひと時のさよならを告げ、3年生にあがる前の春休みに名古屋へ一人旅立ちました。
その後1年間はアイドル活動に専念しますが、たまに大学の友達のインスタストーリーをみると、本来私も一緒に送るはずだった大学生活の様子が垣間見えて、ふと将来が不安になることもありました。
でも、今まで勉強ばかりだった私にとって、毎日レッスンや劇場公演で追われる日々がなんだか新鮮で。人生で1年くらいは全く違った日々を過ごすのもむしろ自分への投資になるのではないか、とプラスに考える事ができるようになったのです。とにかくいろいろな経験をして成長しました! 「かわいい子には旅をさせろ」ってこういうことですね♡ お母さん、お父さんありがとう。休学中の1年間は、それはもう激動の1年でした。
48グループは、まず研究生から始まり、昇格してチームに所属します。そしてレッスンを重ねようやく選抜に選ばれるという流れが一般的なのですが、私の場合、ありがたいことに多くの方が握手会に来てくださり、研究生になってすぐ、「意外にマンゴー」という曲の選抜に選ばれました。選抜に選ばれると多くのイベントに参加します。
正直私はSKE48の曲に詳しい訳でもなく、まだアイドルとしての日も浅かったので、1つのイベントにつき10曲くらいダンスと歌を1から覚えなければいけないこともあり、それがかなり苦痛でした。ひとり寝ないで練習することもありました。辛くて、もう21歳になる大人が中学生達の前で泣くこともありました。そして、学校生活では体験できないような事もたくさん経験しました。
そうこうしているとあっという間に1年が経ち、またもや選択を迫られます。復学するのかどうか問題。もう1年休学する金銭的余裕はありません。悩んだ末、結局復学することに決めました。そして、アイドルを辞める覚悟で事務所に相談したところ、意外にも両立してみるのはどうかという提案をしていただいたんです。もしも歯学の勉強との両立をやり遂げたなら、多くの学生アイドルに希望を与える事ができるのではないか、ダメならダメでまた考えようと言ってくれて…。
そこから、私の「東京・名古屋、行ったり来たり生活」が始まったのでした。スーツケースを片手にガラガラ音をたてながら教室に入り、授業が終わるとすぐに教室を飛び出して新幹線に飛び乗る。毎日ではないけれどそんな生活を続け、試験の時は新幹線の中でも勉強しました。
そんな生活をしても、劇場公演にまで出演する時間はなく、東京の仕事や握手会にだけ参加するのが精一杯でした。きっと、周りのメンバーはその特別待遇にいい気がしなかったと思います。なんとなく関係がギクシャクするときもありました。また、公演に出られない分、当然パフォーマンスのレベルも落ち…。次第に精神的にも体力的にも苦痛になっていきました。アイドルと歯学部の両立はやはり難しく、どちらかを疎かにせざるを得なかったのです…。
次回はアイドルをやめることを決断し、大学に復学してからのお話です。
ブランクを経ての授業やテスト…その時の苦悩についてお話したいと思います! ぜひ読んでね♡
それでは、虫歯なんてグッバイキーン!
写真提供/矢作有紀奈
矢作 有紀奈
1995年埼玉県生まれ。歯学部に入学して2年生の時、芸能界入りしSKE48に所属。アイドルをしながら歯科医師を目指す。現在は臨床研修医として研修中。
矢作 有紀奈Instagram/Twitter/YouTube/TikTok lit.link/teethchan95
元SKE48 矢作有紀奈の“歯科医師への道はひとつじゃない”の記事一覧
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